新着情報【医局ニュース】
新着情報【医局ニュース】
長崎大学医学部麻酔学教室
〒852-8501
長崎市坂本1丁目7番1号
TEL: 095-819-7370
FAX: 095-819-7373
期日:2012年7月27日(金)~8月1日(水)  報告者:講師 趙 成三

 長崎大学医学部によるカザフスタンへの医療連携や医療支援は以前から続いています。今回、医療連携の強化と発展のため、長崎大学移植・消化器外科スタッフ(江口教授、高槻講師、曽山助教、木下医師)が現地で生体肝移植手術を行うに当たり、麻酔科としてスタッフに加わりました。


 出張先であるアルマトイ(図1)は、カザフスタン共和国南東部にある中央アジア最高水準の世界都市であり、1998年まで同国の首都でした(現在の首都はアスタナです)。人口は150万人前後で、キルギス共和国および中国との国境に近く、天山山脈の麓に位置する風光明媚な街です。カザフ国立大学をはじめ多くの高等教育機関、政府機関などがあり、2011年にはアジア冬季競技大会が開催されました。

図1

 7月27日(金)福岡より仁川空港経由でアルマトイ空港へ。現地時間の21:55(日本時間では翌日の0:55)に到着しました。空港にはシズガノフ国立外科科学センターの肝膵胆管センター(HPBセンター)の外科スタッフと共に麻酔科のミエルベコフ教授とスタッフのヴィクトル、アレクサンダー先生が出迎えに来てくれていました(図2)。私は彼らの車に同乗して、麻酔管理についてのおおまかな打ち合わせをホテルまでの30分程度で行いました。じつは、出張前にミエルベコフ教授と連絡を十分に取れておらず、アルマトイにある麻酔薬などに関する情報がわかったのは、往路の仁川空港でした。カザフスタンで行われた欧州の外科チームによる1例目の生体肝移植に関するプロトコールが送ってこられて、取りあえずセボフルランとフェンタニルがあることが分かり、心底ほっとしました。

図2

 翌28日(土)の朝8:00にホテルを出発し、病院へ(図3)。病院長やHPBセンター長への挨拶の後、あわただしく1例目の症例がスタートしました。9:30頃、手術室に入ると麻酔科スタッフと麻酔科助手の方があわただしく準備を始めていました。カザフスタンでの公用語はロシア語で、現地スタッフで英会話が堪能な人は一部で、多くは私と同程度(いわゆるカタコト)でした。なんとか彼らとカタコトの英会話で打ち合わせしているうちに、10:00にはドナーが入室してきました。ルートを確保して、モニター(心電図、パルスオキシメトリ、自動血圧計)を付け、観血的動脈圧ラインを確保した後(局所麻酔なしで痛そうでした)、プロポフォール、フェンタニルで麻酔導入、筋弛緩薬ピペクロニウム(心刺激作用のないパンクロニウムと理解しています)を投与して気管挿管、セボフルランとフェンタニルで麻酔維持を行いました。その後、右内頚静脈に中心静脈カテーテルを留置して、手術開始となりました。10:30には、レシピエントが入室して、同じ麻酔方法で手術開始しました(図4)。

図3

図4

 私は今回、カザフスタンでは2例目の生体肝移植症例ということで現地スタッフへのアドバイザー的な立場と長崎大学外科スタッフとカザフスタン麻酔科スタッフとのコミュニケーションをとることが役割とされており、こんなバタバタで大丈夫かなとかなり心配していました。しかし、シズガノフ国立外科科学センターは日本で国立がんセンターや循環器病センターに相当する病院で、手術症例数も年間4000例前後(心臓手術も300例前後)行われているということで、麻酔科スタッフのレベルが非常に高く、医療機器も最新のものが多く設置されていました。手術中盤の頃になると、大分安心してきてスタッフとのコミュニケーションや手術室周囲の設備をチェックできる余裕もできました。リンゲル液について尋ねると、カザフスタンでは使用しておらず、生理食塩水、糖液、重炭酸液、コロイド、アルブミンを用いているそうでした。


 無事、ドナーとレシピエント(21:00頃)の手術が終了して、集中治療室へ。麻酔科スタッフはそのまま集中治療室で患者管理を続けます。こちらの施設ではあまり筋弛緩薬の拮抗を行わないようで、ドナーも集中治療室で抜管を行いました。レシピエントは翌朝まで様子をみて抜管。ともに、経過は非常に良好でした。


 29日(日)は、術後管理について集中治療室で日本、カザフスタンの麻酔科、外科スタッフでカンファランスを行いました(図5)。その後、車で1時間超ほどにあるレイクマウンテンへ観光にいきました。とにかくこんなきれいな景色はみたことがないほどきれいな景色でした(図6)。食事は非常においしく、肉料理(馬、羊、牛、豚)や魚料理(鮭、マス)も豊富で、長崎大学のスタッフは皆「ふとる~」と心配しました。
 30日(月)、2例目が開始しました。前回同様非常に安定した管理で、無事終了しました(図7)。

図5

図6

図6

 31日(火)、病院に行くと「記者会見」の話があり、エーッ聞いてないようと思いつつも、しゃべらなくていいからということで取りあえず座っていました(図8)。その後、集中治療室で1例目と2例目の患者さんの術後を診察しに行くと、経過も良好で笑顔も見られました。麻酔科のスタッフとも挨拶をすませ、病院を後にしました(図9)。午後市内を観光して(図10)、23:10の飛行機で帰路に着きました(図11)。

図8

図9

図10

図11

 兎にも角にも、今回の出張が無事終わったのは、カザフスタン医療スタッフのホスピタリティーの素晴らしさと、双方のスタッフが成功させるために(患者のために)コミュニケーションを取ろうと努力した結果だと思います。今回のカザフスタン出張は、自分自身にとって非常に貴重な経験となりました。今後もカザフスタンとの医療を通じた交流を継続していけたらと考えています。


 最後に、貴重な機会を与えて下さった澄川教授と吉富医局長ならびに麻酔科医局員の先生方に深く感謝いたします。