研究活動
期日:2011年10月15日~19日  報告者:助教 東島 潮

 アメリカ麻酔学会2011が10月15~19日にアメリカのシカゴで開催されました。今年は長崎大学病院麻酔科から私、石井先生、大路先生、辻先生の4名、関連施設からは長崎労災病院の岡田先生、長崎医療センターから井上先生の総勢6名での参加となりました。(写真1)例年に比べると当教室関連からの参加人数、登録演題数が少なく少数精鋭での学会参加となりましたが、日本での日々の喧騒から抜け出し大都市シカゴを堪能してきました。

写真1:到着したシカゴオヘア空港にて    
写真1:到着したシカゴオヘア空港にて  

 

 シカゴの街は建築物がとても特徴的で、中心街には高層ビルがひしめきあうように建設されています。(写真2)またその外観は多種多様で各々のビルでとてもユニークなデザインになっており、まるでお互いが主張し合っているかのような雰囲気が醸し出されていました。中心街のビル群はシカゴの観光名所となっていて夜景もとてもきれいで、興味深いものでした。(写真3)その中でもウイルスタワーは全米で一番高い(442m!!)ビルであり、最上階が展望台になっていて私たちも立ち寄ってきました。展望台についた当初は気付かなかったんですが、僅かではありますが建物が常時揺れていて船酔いになりそうな気分でした。巨大なミシガン湖方向から吹き付けてくる強風がそうさせるのか、ウィンディーシティーシカゴと呼ばれている所以を感じさせられた瞬間でした。日本の高層ビルも揺れているんでしょうか?普段、長崎で経験することのない感覚だったので驚きました。また床がガラス張りになって外に張り出しているスペースがあって、眼下に広がる地上が透けてみることができ、観光客の人気のスポットになっていました。(写真4)決して割れないと頭で分かっていてもいざそこに立ってみると、ぞぞっと鳥肌が立つような感じで生きた心地はしませんでした(隣のラテン系の観光客はテンションが上がりまくっていました。・・・)

写真2:シカゴの高層ビル群   写真3:幻想的なシカゴの夜景
写真2:シカゴの高層ビル群   写真3:幻想的なシカゴの夜景
写真4:床はガラス張り。地上は300m以上は下と思われます。ぞぞ・・    
写真4:床はガラス張り。地上は300m以上は下と思われます。ぞぞ・・

 当日はあいにくの雨でしたが、シカゴの街、ミシガン湖を一望することができて楽しめました。学会会場となったマコ―ミックプレイスもウイルスタワー展望台から目視することができました。北米最大のコンベンションセンターであり、学会会場内を移動するだけでも大変な広さを誇っていました。なぜだか判りませんが、学会二日目の石井先生の発表の時には発表会場内に少し風が吹いていたみたいです。そのせいで発表会場を区分けするために使用していたパイプの骨組みが座長(女性)に向かって倒れこんでくるというトラブルもあったようです。これもシカゴがウィンディーシティーといわれる所以かぁ・・・(笑)。石井先生が咄嗟に座長を守るような形で倒れてきた鉄パイプを受け止め、誰も怪我することなく事なきを得たのが幸いでした(ちなみに石井先生にはサンキューの一言は無く、座長はunbelievable!!みたいな目をして、ぷりぷりと怒っていたそうです)。ただその後の発表が滞りなく円満に終わったのは言うまでもありません。岡田先生、井上先生は初めての国際学会発表でした。二人とも緊張した面持ちながらも、堂々とプレゼンテーションをして質疑応答に対応していました。(写真5)井上先生は初の国際学会ながらも2題の発表をこなし大変だったとは思いますが(私も最初は労災病院時代に2題発表させてもらったことをしみじみ思いだしてました・・・・あの時の心臓の音がいまでもはっきりと思い出せそうな・・思い出したくないような・・・)、日本人の先生方からの助け舟(通訳)もあったようで無事終わることができたようです。私は心虚血再灌流障害(強心薬によるポストコンディショニング)について発表してきました。(写真6)臨床の発表とは違い、主には基礎実験データの発表である虚血再灌流障害の発表エリアには毎年同じような顔ぶれのメンバーが揃います。またここに戻ってきたかぁと一人で感慨にふけっていました。今回の座長の先生は去年の先生とは違う方でしたが、丁寧に質問をして下さり質疑応答は無事終了しました。私はここ5年間毎年アメリカ麻酔学会に参加する機会を得ていますが、いまだに国際学会の発表が終わった時の充実感と解放感はなんとも言えずいいものです。そしてこれも毎年思うことですが英語を来年までに上達させねば・・・と反省します(油断しまくって上達せずにすぐ翌年の学会を迎えてしまっているなぁ・・)。またこの充実感を味わえるように実験をがんばっていこうと思っています。

写真5:発表風景   写真6:発表風景
写真5、6:発表風景

 今回の学会では国内外の他施設の先生方と話をする機会がありました。徳島大学の先生からはアメリカ・ヴィスコンシンンでの留学中のお話を伺うことができ、同分野での基礎実験における意見交換をすることができました。また岡田先生の知人であり、アメリカで臨床麻酔、研究をされている先生が本学会に参加されており、エドワーズ主催のJapan Night(写真7)でお話をする機会に恵まれました。アメリカ人は体格が大きく日本ではあまり体験することのない麻酔導入時(マスク換気・挿管・中心静脈穿刺 等々)の様々な苦労話を伺いました。またそんな苦労の絶えない中心静脈穿刺の際に役立つ圧センサーの開発にも従事されているとのことで学会会場内に説明・販売用のブースを設けられておりました。アメリカでも販売し始めたばかりでもちろん日本には輸入されていない機器になりますが、いつか日本でも販売される日がくるかもしれません。アメリカでも日本同様臨床に従事しながら、時間をやりくりし臨床研究や基礎研究をやっている先生がいることを知り、またアイデアひとつで上記のような医療機器の開発につながっている現状・そこに日本人が関わっていることを知り、感銘を受けることができました。何かを改善しよう、解明しようという気持ちが新たな医療機器の開発、臨床研究の立ち上げに繋がっているということなのでしょう。これからの自分の臨床・研究に役立てていきたいと感じています。

写真7:Japan Nightにてみんなで乾杯。建物内に森林のような空間が作り出されていました。    
写真7:Japan Nightにてみんなで乾杯。建物内に森林のような空間が作り出されていました。

 シカゴの最終日の夜は全員で少し高級なレストランで出向き、絶対に食べきれないステーキとポテトと格闘し(写真8)、おいしいビールとワインを味わって翌日の帰国の途につきました。アメリカに行くと少し財布の紐が緩んでしまいますが、この店の値段はびっくりするくらい高くつきました。まあ、いい思い出です。シカゴのおもしろいオブジェの写真を添えてこの体験記を終えたいと思います。(写真9、10、11)

写真8:シカゴ最終日の晩   写真9 シカゴ美術館の横にあるミレニアムパークのCloud Gate
写真8:シカゴ最終日の晩餐   写真9 シカゴ美術館の横にあるミレニアムパークのCloud Gate
写真10:街中にある巨大マリリンモンロー   写真11:人の顔や風景が映る壁面
写真10:街中にある巨大マリリンモンロー  
    写真11:人の顔や風景が映る壁面

 私たちの教室では入局1年目に国際学会に同行してもらい今後の臨床・研究に向けて鋭気を養ってもらうような環境を整えてます。私も9年前にオーランドに連れていってもらったことを覚えています。その時は自分がこのような学会で発表できるなんてまったく想像できませんでしたが、上司に恵まれた私は今ではもう5回(延べ6演題)の学会参加を経験することができています。来年のアメリカ麻酔学会は首都ワシントンで開かれるようですが、毎年大きな都市で開かれますのでそれなりに楽しめると思います。アメリカだけではなくヨーロッパやアジアの学会にもタイミングが合えば、参加する機会が持てるかもしれません。長崎大学麻酔学教室では、まずは手術部における麻酔管理からキャリアを開始し、そこで学んだ周術期における全身管理をベースに、集中治療、ペインクリニック、緩和医療、救急医療へと幅広く活躍の場を広げることができます。また上記のように積極的に臨床研究・基礎実験・学会発表にも精力的に取り組んでおり魅力的な教室だと自負しております。興味のあられる先生方、学生の皆さま、是非一度麻酔科の扉をたたいてみてください。お待ちしております。(写真12)

写真12:コンベンションセンター内のビストロに    
写真12:コンベンションセンター内のビストロにて