研究活動
期日:2010年12月18日-19日  報告者:医員 酒井亜輝子

 去る2010年12月にアメリカ・ニューヨークで開催されたNYSORA 9th Annual Regional Anesthesia and Acute Pain Management Symposium & Workshopsに参加しましたので、ご報告します。NYSORAとはNew York School of Regional Anesthesiaの略で、局所麻酔を中心とした周術期疼痛管理に関する学会やワークショップを世界各地で開催している団体です。
 まず、この学会参加にはひとつのきっかけがありました。それは麻酔科入局1年目にアメリカ・ハワイでのIARS annual meetingという国際学会に同行させてもらったことです。(長崎大学麻酔科では、入局者を海外学会へ1度同行させるという恵まれたシステムがあります。)麻酔科へ入局してからというもの日々の手術麻酔や当直など、目の前のことだけで精一杯の日々を送っていました。しかし、この学会に参加し普段慣れ親しんだ上司が英語で発表している姿や、世界の様々な国の麻酔科医が日々の臨床の中で研究していることを目の当たりにし(さらにハワイも満喫し)今まで知らなかった新しい世界に鮮烈な印象を受けたことを今でも覚えています。
 ハワイから帰国後に臨床研究のお手伝いのチャンスをいただいたものの、それから約9カ月後にニューヨークまで行けるとは私自身全く予想もしていませんでした。今回の学会は、局所麻酔に関する15の教育講演と12のワークショップ、2つのパネルディスカッションとポスター発表という比較的小規模な学会でした。しかし会場はタイムズスクエアの真ん中!(写真1)ということで世界各国から500名近くの方が参加していました。また、朝7時半開始というなかなかパワフルな教育講演ではありましたが超音波を使った硬膜外麻酔や、アセトアミノフェン注射剤の使用に関する発表、ハイチ地震での医療支援の講演など一口に「局所麻酔」といってもその内容は多岐にわたるもので、興味深く聴くことが出来ました(写真2)。

 

写真1:学会場の目の前の写真。タイムズスクエアのど真ん中です。

 

写真2:教育講演のひとコマ。

 心配だった英語でのポスター発表もなんとか乗り切り(写真3)、出来はどうあれひと安心しているところに、学会広報の方から私たちの研究が興味深いということでe-letterとしてNYSORAのホームページに掲載したいというお話をいただき、取材を受けるという機会にも恵まれました(写真4)。長崎大学病院手術室という日常の現場の中で、隙をみつけては集めたデータが形となり、学会会場にいた方々だけでなくe-letterという形で全世界へと繋がったということはとても新鮮な喜びであり、機会をくださった広報の方にはこの場を借りて感謝したいと思います。

 

写真3:イギリスから来ていた女医さんがやさしく質問してくれました。

 

写真4:編集部のAndreaさん(中央)とMichaelさん(左)。

 もちろん、学会の合間を縫ってニューヨーク観光も満喫しました!旅行が大好きな私にとっては観光も大きな楽しみでした。自由の女神(写真5)やロックフェラーセンター(写真6)、セントラルパークといった定番コースはもちろんのこと、クリスマスを目前に控えたニューヨークは街全体が息を飲む程美しく、ただ歩いて散歩するだけでも飽きることのない、刺激的で魅力的な街でした。またアメリカ自然史博物館や、ブロードウェイミュージカルの劇場には小さな子供たちもたくさんいて、幼い頃からこのような機会を普遍的に持つことが出来る環境をとても羨ましく感じました。このように日常生活を離れ国内や世界の様々な土地を訪れる楽しみも、日々の業務を続けるモチベーションのひとつになると思います。

 

写真5:自由の女神

 

写真6:ロックフェラーセンターのクリスマスツリー。下はスケートリンク。

 今回の体験記を通して医学生・研修医、修練医の皆さんに伝えたいことは、日常臨床の中からもほんの一歩踏み出せば、大きな世界が広がるということです。私は学生の頃から何か特別な準備をしてきたわけでは決してありません(ましてや講義の出席率なんて惨憺たるものでした)。しかし長崎大学麻酔科に縁あって入局し、臨床だけでなく教育・研究にも熱心な環境の中で自然な流れで学会や研究への興味をもつことが出来ました。医師4年目で国際学会発表出来るとは、学生時代はおろか研修医時代の自分からみても到底信じられません。個人の能力とはまた別に、「環境」の大事さを改めて感じ、澄川教授を筆頭として作りあげられたこの環境をありがたく思います。(長崎大学麻酔科では学会発表の旅費補助も充実していることも学会へ参加しやすいポイントだと思います)。
 私のモットーでもある「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、ぜひ皆さんにも気軽な気持ちでまず一歩踏み出してみてほしいという気持ちをお伝えして、この報告を終わりたいと思います。