長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野・長崎大学病院皮膚科・アレルギー科

患者さんへ

診療内容と実績

アトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎はかゆみを伴う湿疹病変が繰り返し生じる皮膚疾患です。アトピー性皮膚炎の治療の基本は外用薬となります。アトピー性皮膚炎の患者さんでは皮膚のバリア機能や保湿因子が低下していますので、保湿が非常に重要となります。これに加えて、症状に応じたステロイドを中心とした外用薬の種類や外用方法の調整が必要です。詳しくは、下記の「アトピー性皮膚炎について(アトピー性皮膚炎とは・治療の方針)」参照ください。
 外用薬のみでは難治な場合は、免疫抑制剤(シクロスポリン)の内服や、注射薬(デュプルマブ(デュピクセント®))の併用を行います。注射薬については、2018年から使用を開始した比較的新しい治療ではありますが、当科で導入した患者さんの多くで効果がみられています。その他、現在の新規治療薬の開発もすすんでおり、今後治療の選択肢が広がる可能性があります。当科では火曜日の午後に専門外来を行っています。

皮膚腫瘍、皮膚がん

 皮膚がんは消化器がんや肺がんなどとくらべると頻度が低いといわれていますが、高齢化に伴い増加傾向にあります。主なものとして、基底細胞がん、有棘細胞がん、悪性黒色腫(メラノーマ)などがあげられます。がんの種類によって治療法は異なるため、必要に応じて組織検査や画像検査などを行います。当施設は長崎県における皮膚腫瘍・皮膚がん治療の拠点施設として、皮膚がんに対する手術療法の他、抗がん剤やオプジーボなどの薬剤を用いた治療も積極的に行っています。また、他科や他職種からのサポートを受けながら集学的な皮膚がんのケアを行い、常に患者さんそれぞれにベストな選択肢を提供できるように努めています。また、皮膚の良性腫瘍についても、皮膚がん治療で培った手法を活かし、「Simple is best」の方針で診断ならびに治療にあたるよう心がけています。

蕁麻疹

 蕁麻疹は、膨疹といって蚊に刺された時のような皮膚の盛り上がりや発赤が、全身に多発する病気です。皮膚症状は、掻くと広がります。よく食物が原因のように言われていますが、原因がわかるのは1割程度です。多くの場合は原因不明ですが、そのような方が、治療に反応しやすいと言われています。原因も食物のみならず、寄生虫、運動、日光など多岐にわたっており、食物も、卵や牛乳だけでなく、果物、野菜、肉類のこともあります。また、食物+運動と言ったこともあり、簡単に決めつけず、専門医の診察が重要となります。
 治療としては、一般的には、抗ヒスタミン剤の内服を行いますが、難治の場合も少なくありません。最近は、抗IgE抗体の注射薬(オマリズマブ:ゾレア®)があり、安価ではありませんが、難治性蕁麻疹に効果を上げています。

真菌感染症

 趾間や足底に生じることが多く、一般的に「みずむし」といわれていますが、正式には足白癬と言います。他に爪白癬(つめみずむし)や股部白癬(いんきんたむし)が有名ですが、他に、頭、顔、体など全身どこにでも生じ得ます。原因は、皮膚糸状菌と言われる「かび」です。最近は、柔道やレスリング、相撲などの格闘系のスポーツをしている高校生の間にはやっている真菌感染症や、ペット(ネコ、ハリネズミなど)から感染する真菌感染症もあります。湿疹と思って治療しても直らない場合、真菌感染症のことがあります。

乾癬

 乾癬は全身に鱗屑(ふけ)を伴う赤い発疹が繰り返し生じる皮膚疾患で、日本人の約0.4%が罹患しています。基本は塗り薬や紫外線照射で治療しますが、難治例も多く、内服薬、注射薬の治療が必要なこともあります。特に注射薬(生物学的製剤:インフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)、ウステキヌマブ(ステラーラ®)、セクキヌマブ(コセンティクス®)、イキセキズマブ(トルツ®)、グセルクマブ(トレムフィア®)、リサンキズマブ(スキリージ®)など)は乾癬の発疹を9-10割抑制することが可能で、非常に有効かつ患者さんの満足度の高い治療手段です。長崎県内で生物学的製剤治療が可能な施設は限られており、当科では月曜日の午前中に乾癬の専門外来を設けて、これまで100例以上の患者さんに使用した実績があります。

膠原病

 膠原病は免疫異常に伴って全身の臓器に異常が生じる疾患です。全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群などがありますが、それぞれ最初「皮膚」に症状が出現して気づかれることが多くあります。当科では膠原病の専門外来を設けており、皮膚科クリニックなどで紹介された患者さんの膠原病の早期診断、全身精査、治療を行っています。患者さんの症状によっては、当院のリウマチ膠原病内科、腎臓内科、循環器内科、消化器内科などと協力しながらトータルケアを行います。

汗の病気

無汗症について(無汗症とは・検査・治療・特発性後天性全身性無汗症の病態の解明)、多汗症について(多汗症とは・検査・治療)

魚介アレルギー

 魚介を摂取後に口腔内の違和感や、蕁麻疹、アナフィラキシーなどの症状が出現します。魚介アレルギーは一度発症すると、他の食物アレルギーと比べて症状の改善が得られにくいと言われいます。また、魚アレルギーの主要なアレルゲンはほぼすべての魚に含有され、複数の魚で症状が出現することが多いです。また、甲殻・軟体動物についても主要アレルゲンが共通しており、魚同様に注意が必要です。
 当科では、長崎大学水産学部の協力のもと、魚介アレルギーのアレルゲン検査を行っております。アレルゲンによっては、調理法や部位によって摂取可能となる場合もあります。
 原因を明らかにすることにより、過剰な食事制限の回避し、長期的には低アレルゲン化した食品の開発などを目指していきたいと考えております。魚介アレルギーでお悩みの方は、近くの皮膚科クリニックでアレルギー外来(火曜日午後)への紹介についてご相談ください。
 詳しい検査の流れなどは下記をご参照ください。
皮膚アレルギー検査

アピアランスケア

 2019年4月から皮膚科アレルギー科では、がん治療を受けている患者さんを対象とした「アピアランスケア講座」を開設しました。アピアランスとは外観、容姿、外見、見かけなどのことをいいます。がんの治療は、傷あと・脱毛・皮膚の変化・爪の変化などさまざまな外見の変化をもたらします。患者さんが治療に専念し、治療後でも安心して生活できるよう支援しようと、初めて企画しました。当講座ではこれらの皮膚変化に対して、スキンケア・メイク教室・ウィッグ体験を行います。3名限定でスキンケア・メイク指導を受けながら、患者さんも体験するハンズオン形式で、皮膚科医とメイク指導員で1ヶ月に1回開催しています。事前申し込みが必要ですが、無料で行っています。
 詳しくは下記のリンクを参照ください。

皮膚科疾患別入院患者割合:2018年

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