PXE:弾性線維性仮性黄色腫

PXE 全国調査総括報告2016年4月
 弾性線維性仮性黄色腫(Pseudoxanthoma elasticum:PXE)はABCC6がコードしているMRP6という膜輸送タンパクの異常で発生し、弾性線維に変性・石灰化が生じ、皮膚、網膜、血管などが障害される。そのため皮膚変色・変形、視力障害、虚血症状などを引き起こす。本教室ではPXE患者の全国的調査による実態把握を行った。
 2012年に診断基準を作成し、2014年に診断基準の改訂を行い、重症度をスコア化し、重症度判定基準を作成した(別表参照)。平成28年3月の時点で、合計278例の患者登録が終了した。
 遺伝子診断は120例で行った。9割以上の患者で変異を同定できている。
研究分担者
池田 聡司 長崎大学 循環器内科
岩永 聰 長崎大学 皮膚科
遠藤 雄一郎 京都大学 皮膚科
大久保 佑美 九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センター(長崎大学 皮膚科)
荻 朋男 名古屋大学 環境医学研究所発生・遺伝分野
金田 眞理 大阪大学 皮膚科
北岡 隆 長崎大学 眼科
谷崎 英昭 大阪医科大学 皮膚科
田村 寛 京都大学 医療情報企画部
築城 英子 長崎大学 眼科
前村 浩二 長崎大学 循環器内科
三嶋 博之 長崎大学 原爆後障害医療研究施設人類遺伝学研究分野
三長 孝輔 近畿大学 消化器内科
山本 洋介 京都大学 臨床研究総合センター
吉浦 孝一郎 長崎大学 原爆後障害医療研究施設人類遺伝学研究分野

多施設患者登録システムによる、弾性線維性仮性黄色腫患者の臨床像、自然経過、予後、病因、治療の反応性の解析(平成22年8月2日~平成32年3月31日、承認番号100802191-3)
研究結果
診断基準の改定をおこない、より平易な既述とすることで一般診療医の使用しやすいものとなっている。

重症度はスコア化をおこない、疾患重症度判定が容易となり、全国の現状がより詳細に把握できるようになっている(別表ならびに図1−5参照)。なお、これらの情報は厚生省の指定難病に関するホームページでも閲覧可能である。

重症者は、皮膚 14人、眼 10人、心血管 7人であった。本邦患者の重症者は、調査項目の記入が確実な111症例のうち21人(19%)であった。

ガイドライン作成を行っている。
展望
集積した本邦PXE患者のデータを基に重症患者の調査集計を行い、本邦の患者の実態をさらに明らかとしていく。また、今後その知見を参考にして診療ガイドラインを作成していく予定である。
別表 診断基準、重症度分類


2014年改訂版基準
[診断基準]
 A. 診断項目
   ① 皮膚病変がある
   ② 皮膚病理検査で弾性線維石灰化をともなう変性がある
   ③ 網膜血管線条(色素線条)がある
   ④ ABCC6遺伝子変異がある
 B. 診断
   I. 確実:(①または②)かつ ③
   II. 疑い:(①または②)のみ、または③のみ
 
注意; 1) II 「疑い」に④遺伝子変異を証明出来た場合は確実とする。
       2) 以下の疾患を完全に除外できること。
類似皮膚症状を呈するもの: PXE-like papillary dermal elastolysis、D-penicillamine内服
網膜色素線条を呈するもの: 骨Paget病、鎌状赤血球症、Ehelers-Danlos症候群、鉛中毒、外傷
脈絡膜新生血管を生じるもの: 加齢黄斑変性、変性近視
消化管粘膜病変を呈するもの: 胃・十二指腸潰瘍

 

指定難病で医療費支援を受けることが出来るための要件
<重症度分類>
重症度分類を用いて、皮膚、眼、心・血管、消化管のうち、いずれかの病変で重症を有する症例を対象とする。

重症度分類
軽 症 S0-1, E0-1, CV(Co0, Pe0-1, He0, Br0-1), GI0
中等症 S2, E2, CV(Co1, Pe2, He1, Br2), GI1
重 症 S3,  E3,  CV(Co2-3, Pe3, He2-3, Br3), GI2

皮膚病変 S
 S0 なし
 S1 黄白色丘疹
 S2 黄白色丘疹の癒合した局面
 S3 弛緩し垂れ下がった皮膚

眼病変 E
 E0 矯正視力 0.7 以上,かつ異常視野欠損なし
 E1 矯正視力 0.7 以上,かつ異常視野欠損あり
 E2 矯正視力 0.7 未満,0.3 以上 、かつ異常視野欠損あり
 E3 矯正視力 0.3 未満、 かつ異常視野欠損あり
 注:矯正視力,視野ともに,良好な方の眼の測定値を用いる。

心・血管病変 CV
 Co) 冠動脈疾患
   Co0 狭心痛の出現なし
   Co1 激しい労作にて、狭心痛あり(負荷心電図にて異常あり。)
   Co2 軽労作にて、狭心痛あり
   Co3 心筋梗塞の発症/既往
 Pe) 末梢動脈
   Pe0 症状なし
   Pe1 冷感やしびれ感あり 脈の触知が弱い
   Pe2 間欠性跛行あり
   Pe3 安静時疼痛や皮膚潰瘍/壊死あり
 He) 心不全
   He0 症状なし
   He1 激しい労作にて、呼吸困難や動悸が出現する
   He2 軽労作にて、呼吸困難や動悸が出現する
   He3 安静時にも、呼吸困難や動悸が出現する
 Br) 脳卒中
   Br0 明らかな障害が無い(介護区分:自立)
   Br1 日常の身体活動は介助なしに行える(介護区分:要支援1-2)
   Br2 日常の身体活動に部分的な介助を要する(介護区分:要介護1-2)
   Br3 日常の身体活動の全てに介助が必要である (介護区分:要介護3以上)

消化管病変 GI
   GI0 異常なし
   GI1 内視鏡検査を施行し粘膜下の血管異常
   または造影CTでの異常動脈網や動脈瘤などの形成あり
   GI2 上部消化管からの動脈性出血またはその既往あり


図1 重症度別皮膚病変(人)
図1重症度別皮膚病変(人)  

図2 重症度別眼病変

図2重症度別眼病変   

図3 重症度別心血管病変 冠動脈
図3重症度別心血管病変 冠動脈   

図4 重症度別心血管病変 末梢動脈
図4重症度別心血管病変 末梢動脈   

図5 重症度別心血管病変 脳卒中
図5重症度別心血管病変 脳卒中