PXE:弾性線維性仮性黄色腫

PXE 診断基準2012
厚生労働省難治性疾患克服研究事業
弾性線維性仮性黄色腫の病態把握ならびに診断基準作成」班
研究代表者
宇谷 厚志 長崎大学医歯薬学総合研究科皮膚病態学 教授
研究分担者
北岡  隆 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科眼科・視覚科学 教授
前村 浩二 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環病態制御内科学 教授
荻  朋男 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科附属原爆後障害医療研究施設
分子診断学研究分野分子生物学・分子遺伝学 准教授
谷岡 未樹 京都大学大学院医学研究科皮膚生命科学講座 講師
田村  寛 京都大学医学部附属病院眼科 助教
山本 洋介 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療疫学分野 特定講師
築城 英子 長崎大学病院眼科 助教
服部 友保 群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学 助教
はじめに
 弾性線維性仮性黄色腫(Pseudoxanthoma elasticum: PXE)の原因遺伝子とし て 2000 年に ABCC6 が同定され、常染色体劣性遺伝形式をとることが明らかとな ったため、従来のかつて欧米で作られた PXE 分類・診断基準が実情と合わなくなってきた。また PXE の症状ならびにその重症度は多彩なことが特徴であるが、 本邦の PXE 患者の詳細な解析はいまだなされていないのが現状である。

 我々の行った2010年~2011年の全国規模調査により、本邦PXE患者の実態が初めて明らかにされた。詳細な調査が可能であった患者は141名で、そのうち皮膚・粘膜病変、眼症状がそれぞれ90%以上に認められ、循環器症状は、およそ半数で認められた。皮疹もしくは網膜色素線条が片方だけ認められる患者が15 例存在した。さらに皮疹が存在しない5例に行ったブラインドバイオプシーに よる病理検査では、3例に弾性線維変性・石灰化が認められた。ここで得られた情報を元に、感度・特異性を解析し、臨床医に使用しやすい診断基準作製を目指した。本案は、皮膚科、眼科、循環器科、遺伝子解析、統計学解析のそれぞれの専門家知識を集約して作成した。

 本邦PXE患者の臨床調査に基づき作製された診断基準を利用し、早期診断確定を行い、複数科と連携し患者QOLを維持することは重要であると考える。
疾患概念
 PXEは、責任遺伝子(ABCC6)の変異により弾性線維の石灰化・変性が発生し、弾性線維の豊富な組織(皮膚、網脈絡膜、血管など)に進行性に障害が生じる 疾患である。
診断基準
A. 診断項目
   1. 皮膚病変がある
 2. 皮膚病理検査で弾性線維石灰化をともなう変性がある
 3. 網膜色素線条がある
 4. ABCC6 遺伝子変異がある
B. 診断
   Ⅰ. 確診: (1または2) かつ 3
 Ⅱ. 疑診: (1または2) のみ、3のみ

 注意: 疑診例に4遺伝子変異を証明できた場合は、確実とする。
解 説
1 皮膚病変
10-20 代で頚部、腋窩、鼠径部、肘窩、膝窩、臍周囲に好発する集簇性または線 条に分布する黄白色丘疹で、癒合して局面となる場合もある。口唇粘膜に黄白 色斑が認められる。典型的皮疹は見慣れた皮膚科医師には診断は容易であるが、 皮疹を見慣れていない場合、また非典型皮疹のみの場合は、必ず組織検査を併 用しなければならない。
2 病理像 皮疹のある部位から組織検査を行う。HE 染色で、真皮中層~下層に好塩基性に染色される石灰沈着を伴う変性弾性線維を認める。Von Kossa 染色等で石灰沈着 を証明することは早期病変の診断ならびに鑑別診断に有用である。皮疹が無い場合は、ブラインドで頚部、腋窩など好発部位より組織検査を行い、石灰沈着をVon Kossa染色等で証明する。
3 網脈絡膜病変 Bruch 膜の断裂に伴い網膜色素線条を呈し、それに続発して網膜下出血や脈絡膜 新生血管を生じることがある。その結果、重篤な視力障害をはじめとした種々の視機能障害をきたし得る。眼底にはオレンジ皮様変化を認める症例もある。
4 遺伝子診断 常染色体劣性遺伝形式をとる。長崎大学では代表的原因遺伝子である ABCC6 変異部位同定を行っている。長崎大学皮膚科のホームページにリンクを設けて医師からの依頼を随時受け付けている。
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/dermtlgy/
5 循環器病変 中血管の中膜弾性線維の変性・石灰沈着を生じ、虚血性障害を引き起こす。間欠性跛行、冠動脈疾患、脳梗塞、高血圧などが起こる。特異的症状はないものの PXEではその頻度は高く、特に若年時から発症することがあるので注意を要する。
6 除外すべき疾患 類似皮膚症状を呈するもの
 PXE-like papillary dermal elastolysis、D-penicillamine 内服
網膜色素線条を呈するもの
 骨 Paget 病、鎌状赤血球症、Ehelers-Danlos 症候群、鉛中毒、外傷
脈絡膜新生血管を生じるもの
 加齢黄斑変性、変性近視