ごあいさつ

ご 挨 拶 教授:中尾一彦
長崎大学理事・病院長
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科消化器内科学分野 教授
(長崎大学医学部消化器内科学 教授)
長崎大学病院消化器内科 診療科長
中 尾 一 彦
 2020年、令和2年、消化器内科開講12年目、私の病院長2年目は、日本、世界がスペイン風邪以来の地球規模パンデミック感染症、新型コロナウイルスCOVID-19に翻弄される年となりました。
 本学は、熱帯医学研究所、医学部第二内科学教室(呼吸器内科感染症グループ)を中心とした感染症研究の長い歴史を持ち、多くの感染症専門家を輩出してきました。中国、武漢におけるCOVID-19感染症拡大により、日本政府チャーター機で帰国した方々の経過観察措置時、並びにクルーズ船ダイアモンドプリンセスでの巨大クラスター発生時には、厚生労働省より専門家派遣の要請があり、本院から、感染制御教育センターの泉川公一教授をはじめ多くの医療スタッフ、DMAT隊員が、経過観察施設、ダイアモンドプリンセスへ支援に向かいました。日本全土でCOVID-19感染クラスターが発生し、大都市を中心に市中感染が広まる中、本学出身の感染症専門家も連日、メディアに出演し、感染防御対策について解説されていました。
 一方、長崎県のCOVID-19感染患者発生は、4月19日までは、いずれも県外や海外から移動した方やその濃厚接触者であり、県内感染者は総数17名に留まっていました。しかし、4月20日、長崎港に修理のため停泊していたクルーズ船コスタ・アトランチカでCOVID-19感染陽性者発生が確認され、長崎市の状況は一変しました。本院へもクルーズ船からCOVID-19陽性患者が搬送され、一気に緊張感が高まりました。厚生労働省から乗組員全員の感染の有無を検査するようにという指示を受け、乗員623名に対して本院の感染制御教育センター医師によるスワブ検体採取と熱帯医学研究所、安田二朗教授が開発したLAMP法によるCOVID-19核酸検出を4日間で実施し149名の陽性が判明しました。この素早い対応は本学の感染症診療の実力を示すものと思います。県の要請を受け、感染制御、DMAT隊員は、クルーズ船COVID-19陽性者の対応に毎日駆り出されました。
 本院では、新型コロナウイルス感染を災害ととらえ、COVID-19感染災害対策本部を立ち上げ、事業(診療)継続計画BCPの作成に取り掛かっていましたが、クルーズ船クラスター発生を受け、COVID-19感染入院患者急増に対する院内体制の整備を急ぎました。一般病棟(44床)を一病棟閉鎖し、看護師のマンパワーを感染症病棟へそそぐことになりました。重症例対応のため、ICU医師、看護師も感染症病棟で献身的に頑張ってくれました。しばらく、緊張状態が続きましたが、幸いなことにクルーズ船からの重症患者受け入れが急増することはなく、COVID-19陰性化により退院する患者も徐々に増え、6月9日COVID-19陽性患者はついに0となりました。この間、消化器内科からは、山口先生、塩田先生、東郷先生がフルPPE装備でCOVID-19陽性患者の上部内視鏡処置を行いました。松島先生は鼻腔スワブ検査隊の一人としてルーチンのスワブ検査を、救命救急センター第2当直当番にあたった消化器内科医院、教員も救急搬送患者のスワブ検査を担当してくれました。皆さんご苦労様でした。一方、消化器内視鏡検査、処置は感染リスクの高い処置ということで、4月以来、件数を大幅に絞り、待機できるEMR、EUS、肝生検などは先延ばしにしていましたが、6月中旬以降は通常運用に戻すことが出来ました。非常事態宣言解除、国内の移動制限解除後、国内のCOVID-19新規感染者数はくすぶっている感じですが、秋~冬にかけ、第2波アウトブレイクが起きないことを願うばかりです。
 COVID-19対応で忙しくなり始めた3月末、消化器内科発足以来、准教授として、そして消化管グループのチーフとして、当科の臨床、研究、教育を牽引してきた竹島史直先生が、長崎県五島中央病院長就任のため、本学を退任されました。医局員、同門の皆さんから「消化器内科の良心」と慕われていた竹島先生は、この11年間、様々な難しい判断を下す局面で、的確かつ筋の通った考えを示して、教室をあるべき方向に導いてくれました。新設消化器内科がここまでやってこれたのは、竹島先生のおかげと心より感謝しています。3月初めに何とか教室の壮行会(送別会)を開くことが出来ましたが、竹島先生と二人三脚でやってきた思い出が噴出し感極まりました。竹島先生、11年間本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。病院長就任早々、COVID-19対応に追われ大変だったと思います。非常事態宣言により離島からの移動が制限されたため、6月中旬になって2か月ぶりに長崎に来られ、お話ししましたが、COVID-19対策、病院経営、医師派遣など、病院長という立場で意見交換ができて嬉しく思いました。竹島先生には、今後も消化器内科客員研究員として、炎症性腸疾患に関する臨床研究、治療困難例や治験の相談、指導をいただく予定です。
 令和2年4月1日より、竹島先生に加え、山川正規先生も長部雅之前院長の後任として国立病院機構長崎病院長に就任されました。竹島先生、山川先生の病院長就任祝賀会を5月の連休明けに予定していましたが、COVID-19ため延期となりました。COVID-19の状況を見つつ、三密に配慮して盛大な祝賀会を開きたいと考えておりますので、同門の先生方、ご出席よろしくお願いいたします。