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長崎県におけるHTLV-1母子感染防止の取り組み
-HTLV-1研究の重要性-
 ヒトT細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)は、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)の原因ウイルスで、いずれも有効な治療法のない難治性疾患です。HTLV-1は流行に地域性があり、長崎県はHTLV-1が最も多い県のひとつです。そのため、長崎県では産婦人科や小児科、血液内科、細菌学教室などが連携し、HTLV-1に関する研究を26年間にわたって続けています。そして世界に先駆けてHTLV-1とその感染経路、母子感染防止などについて明らかにしてきました。

 感染経路としては、母乳を介した母子感染が主なものであり、HTLV-1の感染から次世代の子供を救う最も有効な対策は、HTLV-1母子感染を防止することです。長崎県では1987年から現在に至るまで26年間継続して妊婦のHTLV-1スクリーニング検査と、キャリア妊婦に対する栄養法の介入を行い、HTLV-1 キャリア妊婦の率を7.2%から1.0%に低下させることに成功しました。長崎県における地域性を活かした研究と臨床から得られたデータがもととなり、平成23年からは全国的に妊婦のスクリーニング検査と母子感染対策が行われることになりました。2011年、これらの業績に対して、長崎県ATL母子感染防止事業の会長である増崎英明産婦人科教授に「保健文化賞」が与えられました。また、2011年10月26日には、皇居において天皇・皇后両陛下から増崎会長に直接、ねぎらいの言葉がありました。

 このように長崎県におけるHTLV-1研究と臨床への反映は、多くの人の協力、行政の援助によって継続して行われています。現在、私どもは長崎県内全域の産婦人科施設と協力して検体の集積を行い、「妊婦の高精度なHTLV-1スクリーニング検査法の確立」、「母乳以外の感染経路の同定」などのテーマに取り組んでいます。研究の成果により、適切なキャリア妊婦の管理、母子感染をきたすリスク因子の解明がなされ、今まで以上に母子感染の防止が行えるようになれば、近い将来にHTLV-1は撲滅できるものと期待されています。

 研究で得られた知見を深め、研究を進める過程では様々な疑問が生じます。その疑問を追求していくことで、予想していたものと異なる重要な発見が生まれることもあります。研究をひとりで行っていくことでは成果を出すことが難しい事もありますが、他分野の専門家と協力して研究を行うことで大きな進歩を得られることもあります。そして研究成果が臨床に反映され、社会に貢献できることは大きな喜びです。医学部の学生、研修医の皆さん、一緒に世界レベルの研究をしようではありませんか!
(文責:築山尚史)