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内分泌分野では主に長瀧内科より引き続いて甲状腺関連の研究と骨代謝関連の研究を行っており,臨床研究,基礎的研究(動物モデル含),放射線影響研究所との共同研究の3項目について概説する。
臨床研究ではバセドウ病関連において,抗甲状腺剤のプロピオチオウラシル(PTU)投与中の患者で抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)が高率に陽性になることを報告し(Sera N, et al. Thyroid 2000:10;595-9),ほとんどが血管炎の症状・所見がみられず,その長期予後調査では,MPO-ANCA 持続陽性でも症例数が少ないものの血管炎発症はみられなかった。またPTU 中止にて抗体価の低下が認められた(Ishii R, et al.Endocrine J 2010:57;73-9)。長瀧内科から引き続いてバセドウ病眼症の診断・治療において疾患活動性とMRI 所見の関連について検討し,T2強調での信号強度が疾患活動性と関連していることを明らかにした(Yokoyama N, et al. Thyroid 2002:12;223-7)。甲状腺ホルモンとレプチンに関する研究で,β遮断剤投与下では甲状腺ホルモンはレプチン濃度を上昇させ,甲状腺ホルモン・自律神経系がレプチン調節の一端を担っている可能性が示唆された(Sera N, et al. Thyroid 2000:10;641-6)。甲状腺癌関連ではヨード131内用療法後に未分化転化がみられることがあるが,それらの症例では発症時の甲状腺癌組織において癌抑制遺伝子のP53の変異が認められ,放射性ヨードの取り込みが悪い症例では治療の施行に十分注意する必要があることを示した(Sera N, et al. Thyroid 2000:10;975-9)。また,甲状腺髄様癌の腫瘍マーカーはカルシトニンとCEA であるが,肺小細胞癌の腫瘍マーカーであるPro-GRP もマーカーになりうることを提唱した(Ide A,et al. Thyroid 2001:11;1055-61)。副甲状腺関連では,原発性副甲状腺機能亢進症の術後3ヶ月以内に骨塩量の増加が認められ,それは骨形成が骨吸収を上回るためであった(Abe Y, et al. Clin Endocrinol 2000:52;203-9)。また,手術不能な副甲状腺癌転移症例に対し,本邦初のPTHペプチドを用いた免疫療法を行い,Ca 低下の効果を認め,その有用性を示した(Horie I, et al. Endocrine J: 2010; Epub)。基礎的研究においては,甲状腺濾胞細胞のアポトーシスの研究でラット甲状腺腫モデルにおいて甲状腺濾胞細胞のアポトーシスにFas,FasL が関与していることが示唆され(Tamura M, et al. Endoclinology 1998:139;3646-53),TSAb が甲状腺濾胞細胞のFas 依存性アポトーシスを抑制していることが示唆された(Kawakami A, et al. Clin Exp Immunol 1997:110;434-9)。また,バセドウ病の甲状腺組織において細胞増殖の一方でアポトーシスが起こっており,IL-1βはT 細胞によって誘導されるFas,FasLを介した甲状腺濾胞細胞のアポトーシスの感受性を増強していることを示し,バセドウ病甲状腺細胞においてimmunoprevileged site 形成の破綻をきたしていることが示唆された(Sera N, et al. Clin Exp Immunol 2001:124;197-207)。
原研の永山教授の御指導のもと,TSH 受容体を発現させた樹状細胞を用いてバセドウ病モデルマウスの開発を行い(Kita-Furuyama M, et al. Clin Exp Immunol 2003:313;234-40),その改良を行った(MizutoriY, et al. J Autoimmun 2006:26;32-6)。また,NODH-2h4マウスでの自己免疫性甲状腺炎発症過程にTh17が重要であることを示した(Horie I, et al. Endocrinology 2009:150;5235-42)。
放射線影響研究所は広島と長崎にある日米政府共同出資の研究機関であり,確立されたコホートを持ち,放射線の人体に対する影響に関する数多くの疫学データを発表している。同研究所との共同研究で,被曝と甲状腺関連の研究を行っている。潜在性甲状腺機能低下症は虚血性心疾患のリスクファクターであることを示し(Imaizumi M, et al. J Clin Endocrinol Metab 2004:89;3365-70),潜在性甲状腺機能低下症に加えて高血圧,糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症などの疾患を多く合併するほどCVD のリスクが高まることを示した(Ashizawa K, et al. Clin Endocrinol 2009; Epub)。被爆者の甲状腺結節の長期フォローアップにおいて,結節を有する例は有しないものより甲状腺癌の発生リスクが高いこと(Imaizumi M, et al. J Clin Endocrinol Metab 2005:90;5009-14),被爆後50年以上経過での甲状腺癌を含めた甲状腺結節は被曝線量に依存して発生が高くなるが,自己免疫性甲状腺疾患は被曝線量とは無関係であることを示した(ImaizumiM, et al. JAMA 2006:295;1011-22)。
(文責:宇佐俊郎)
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1型糖尿病と遺伝子 |
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1型糖尿病は遺伝的背景に基づいて発症する自己免疫疾患である。最も発症に強く関与する遺伝子はHLA であり,なかでもクラスII 遺伝子のDR,DQ であることが1980年代に明らかにされた。また,1990年代に入るとインスリン遺伝子,CTLA4遺伝子をはじめ数多くの疾患感受性遺伝子が発見された。長瀧内科時代にHLA 遺伝子に関する研究を開始し,江口内科になり世界の流れに乗って候補遺伝子の研究を開始した。インスリン遺伝子とCTLA4遺伝子についてはDiabetes Res Clin Pract(Abe T, et al. Diabetes ResClin Pract 1999:46;169-75)とDiab Med(Abe T, et al. Diab Med 2001:18;726-31)にその成果を報告した。また,MODY3の原因遺伝子HNF-1α遺伝子異常を膵島関連自己抗体陰性1型糖尿病の7%に見出し,異常遺伝子の機能解析と合わせてJ Clin Endocrinol Metab(Kawasaki E, et al. J Clin Endocrinol Metab 2000:85;331-5)へ報告した。その後,ケモカインやサイトカイン遺伝子多型に取り組み,IL-10遺伝子多型の成果をHum Immunol(Ide A, et al. Hum Immunol 2002:63;690-5)とAnn NY Acd Sci(Ide A, et al. Ann NY Acd Sci 2003:1005;344-7)に,IL-18遺伝子多型の成果をJ Autoimmun(Ide A, et al. J
Autoimmun 2004:22;73-8)とAnn NY Acd Sci(Ide A, et al. Ann NY Acd Sci 2003:1005;436-9)に,SDF-1遺伝子多型の成果をHum Immunol(Ide A, et al. Hum Immunol 2003:64;973-8)に報告した。さらにSUMO4遺伝子多型が複数の自己免疫疾患の共通した疾患感受性遺伝子であることを突き止め,その成果をJ Clin Endocrinol Metab(Tsurumaru M, et al. J Clin Endocrinol Metab 2006:91;3138-43)へ報告した。劇症1型糖尿病とCTLA4遺伝子多型の関連は,Diabetes Care( Kawasaki E, et al. Diabetes Care 2008:31;1608-10)に報告している。一方,2003年からは川_英二が中心となり全国の7施設による多施設共同研究を開始し,約2,000サンプルを用いてこれまでにインスリン遺伝子(担当:埼玉医大),CTLA4遺伝子(担当:近畿大),PTPN22遺伝子(担当:長崎大),Vitamin D遺伝子(担当:慶応大),KIAA0350遺伝子(担当:埼玉医大),IL-2RA 遺伝子(担当:長崎大)の研究成果を,Am J Med Genet(Kawasaki E, et al. Am J Med Genet 2006:140;586-93),J Clin Endocrinol Metab(Ikegami H, et al. J Clin Endocrinol Metab 2006:91;1087-92,Awata T, et al. J^Clin Endocrinol Metab 2007:92;1791-5,Awata T, et al. J Clin Endocrinol Metab 2009:94;231-5,Kawasaki E, et al. J Clin Endocrinol Metab 2009:94;947-52),J Autoimmun( Shimada A, et al. J Autoimmun 2008:30;207-11)などに報告している。DNA チップを利用した解析技術の進歩と共に,2007年には数十万SNP が一度に解析できるようになり,世界の遺伝子研究はゲノムワイド関連解析(GWAS)が主流となっている。現在,川_英二が日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会の一員として,日本人1型糖尿病におけるGWAS 研究に携わっている。
(文責:川崎英二)
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