長崎大学病院第一内科 Department of Immunology and Rheumatology, Department of Clinical Neuroscience and Neurology, Department of Endocrinology and Metabolism, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences
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内分泌・代謝グループ
 
 
内分泌系
内分泌分野では、臨床研究,基礎的研究(動物モデル含),放射線影響研究所との共同研究の3項目について概説する。
臨床研究
基礎的研究
放射線と甲状腺疾患

代謝系
代謝分野では、これまで、1型糖尿病・妊娠糖尿病の研究を長期にわたり継続し、最近では動脈硬化リスク因子に関連した臨床研究をすすめている。これらの研究内容について概説する。
1型糖尿病の臨床研究
1型糖尿病の基礎研究
妊娠糖尿病の臨床研究
動脈硬化のリスク因子に関する研究
青年期メタボリックシンドロームに関する研究



内分泌系

臨床研究
 最近話題となっているIgG4関連疾患であるが、当科に 2000年から2008年までに下垂体疾患で受診した95名の症例を後ろ向きに検討し、MRI上、びまん性下垂体腫大あるいは下垂体丙腫大を認めた症例の初診時保存血清よりIgG4を測定したところ、6名中4名において血清IgG4の上昇を認め、画像所見とともに報告した(Haraguchi A, et al. Endocr J 2010:57;719-25). なお、この研究で原口は第24回内科学会奨励賞を受賞した。

 バセドウ病の治療薬である抗甲状腺剤プロピオチオウラシル(PTU)投与中の患者で抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)が高率に陽性になることを報告した。長期予後調査まで含めてMPO-ANCA陽性症例のほとんどに血管炎の症状・所見がみられず,少数例の検討ではあるが血管炎発症を認めなかった(Sera N, et al. Thyroid 2000:10;595-9)。またこれらの症例にて、PTU中止にてMPO-ANCA抗体価の低下が認められた(Ishii R, et al.Endocrine J 2010:57;73-9)。

 甲状腺眼症の疾患活動性とMRI 所見の関連について検討し,T2強調での信号強度が疾患活動性と関連していることを明らかにした(Yokoyama N, et al. Thyroid 2002:12;223-7)。

 甲状腺ホルモンとレプチンに関する研究で,β遮断剤投与下では甲状腺ホルモンはレプチン濃度を上昇させ,甲状腺ホルモン・ 自律神経系がレプチン調節の一端を担っている可能性が示唆された(Sera N, et al. Thyroid 2000:10;641-6)。

 進行甲状腺癌へのヨード131内用療法後に未分化転化がみられることがあるが,それらの症例では甲状腺全摘時の甲状腺癌組織において癌抑制遺伝子のP53の変異が認められ,放射性ヨードの取り込みが悪い症例ではその後未分化転化する可能性を含めて慎重に経過を見る必要があることを報告した(Sera N, et al. Thyroid 2000:10;975-9)。進行甲状腺癌に対するヨード131内用療法における代表的な有害事象である嘔気、嘔吐に関して後ろ向きに検討した。女性、低BMI、低クレアチニン値、体重あたりのヨード131投与量が、単変量解析にて有意に関連性を認めた。多変量解析では、体重あたりのヨード131投与量のみ関連性を認めた。この研究では、5HT3受容体拮抗薬はヨード131内用療法に関連した嘔気の頻度を減少できないことを示した (Ikeoka T, et al. Endocrine 2014: 46; 131-137)。また,甲状腺髄様癌の腫瘍マーカーはカルシトニンとCEAが有名であるが,肺小細胞癌のマーカーであるPro-GRPも有用であることを提唱した(Ide A,et al. Thyroid 2001:11;1055-61)。

 副甲状腺関連では,原発性副甲状腺機能亢進症の術後3ヶ月以内に骨塩量が増加することを明らかにし、その機序として、骨形成が骨吸収を上回ることを示した(Abe Y, et al. Clin Endocrinol 2000:52;203-9)。また,手術不能な副甲状腺癌転移症例に対し,本邦初のPTHペプチドを用いた免疫療法を行い,高カルシウム血症の改善認め,その有用性を示した(Horie I, et al. Endocrine J: 2010; 57: 287-92)。

 糖尿病関連の研究も行っており、GLP-1アナログ製剤の有効性に関しても、長崎大学病院内分泌代謝内科と佐世保中央病院と共同にて研究を行い、リラグルチド開始前の糖尿病治療薬剤数が多いほど、GLP-1製剤は無効となりやすく、特にSU剤の使用はGLP-1製剤の無効例との関連を認めた(多変量解析)(Haraguchi A, et al. Minerva Endocrinol 2014: 39; 289-97)

 上記以外にも、ヨード131内用療法での甲状腺機能低下症時に出現する高カリウム血症の危険因子の解析(堀江)、栄養指導が有効な妊娠糖尿病症例の検討(堀江)、中枢性尿崩症の治療薬変更における患者ADLの変化(野崎)など現在進行中である。

 大学病院ならではの希少症例・興味ある症例は、学会で報告するだけではなく、積極的に学術誌にて報告を行うように指導を行っている。論文を作成することで、症例への理解がさらに深まり、科学的な考え方が身につくものと思われる。以下に最近の症例報告を臓器別に示す。

下垂体
Morokuma H, et al. Case Reports in Endocrinology 2012 Article ID 645914.
甲状腺
Ikeoka T, et al. Endocrine 2014:47;652-653.
Nozaki A, et al. Austin Journal of Endocrinology and Diabetes 2014:1;1.
Yasui J, Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2013:98;2639-40.
Ando T, et al. Case reports in Endocrinology 2013 Article ID 585781.
Ueki I, et al. Internal Medicine 2011:50;1313-6.
Ando T, et al. Thyroid 2011:21;1021-1025.
副腎
Oyama K, et al. Endocrine Practice 2014:20; e171-5.
Nakamura K, Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2011: 96;3601-2.
糖尿病
Murata F, et al. Endocrine Journal 2012:59;669-76.
Ando T, et al. Internal Medicine 2014:53; 1791-1795.
その他
Ando T, et al. Transplantation Proceedings 2013:45; 2825-2830.
Haraguchi A, et al. Acta Medica Nagasakiensia 2012: 57; 29-32.
Masuda T, et al. Internal Medicine 2011:50;1029-32.

 なお、上記のうち、中村がJCEMに報告した症例は、アメリカ内分泌学会が発行するDiagnostic Dilemma, second editionにも採用された。
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基礎的研究
 基礎的研究においては,甲状腺濾胞細胞のアポトーシスの研究でラット甲状腺腫モデルにおいて甲状腺濾胞細胞のアポトーシスにFas,FasL が関与していることが示唆され(Tamura M, et al. Endoclinology 1998:139;3646-53),TSAb が甲状腺濾胞細胞のFas 依存性アポトーシスを抑制していることが示唆された(Kawakami A, et al. Clin Exp Immunol 1997:110;434-9)。また,バセドウ病の甲状腺組織において細胞増殖の一方でアポトーシスが起こっており,IL-1βはT 細胞によって誘導されるFas,FasLを介した甲状腺濾胞細胞のアポトーシスの感受性を増強していることを示し,バセドウ病甲状腺細胞において immunoprevileged site 形成の破綻をきたしていることが示唆された(Sera N, et al. Clin Exp Immunol 2001:124;197-207)。

 原研分子の永山教授の指導のもと,TSH 受容体を発現させた樹状細胞を用いてバセドウ病モデルマウスの開発を行い(Kita-Furuyama M, et al. Clin Exp Immunol 2003:313;234-40),その改良を行った(MizutoriY, et al. J Autoimmun 2006:26;32-6)。TSH受容体を発現するアデノウイルスを用いて発症させるバセドウ病モデルにおいて、CD20抗体を用いてB細胞を除去することでバセドウ病を制御できるか検討した結果、B細胞の除去はバセドウ病の発症予防には有効であるが、一旦発症したバセドウ病の治療には有効でないことを示した(Ueki I, et al. Clin Exp Immunol 2011: 163; 309-17)。また,NODH-2h4マウスでの自己免疫性甲状腺炎発症過程にTh17が重要であることを示し(Horie I, et al. Endocrinology 2009:150;5235-42)、IL-17がNOD-H2(h4)マウスにAd-TSHR289を用いてバセドウ病を誘発させるのに重要であることを示した(Horie I, et al. Autoimmunity 2011: 44; 159-65). さらに、最近ではマウスにおけるTSH受容体への免疫学的トレランスのうち末梢性トレランスの役割は小さいことを示した(Yasui et al, Acta Medica Nagasakiensia 2014: 59; 13-17)。
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放射線と甲状腺疾患
 放射線影響研究所は広島と長崎にある日米政府共同出資の研究機関であり,確立されたコホートを持ち,放射線の人体に対する影響に関する数多くの疫学デー タを発表している。同研究所との共同研究で,被曝と甲状腺関連の研究を行っている。潜在性甲状腺機能低下症は虚血性心疾患のリスクファクターであることを示し(Imaizumi M, et al. J Clin Endocrinol Metab 2004:89;3365-70),潜在性甲状腺機能低下症に加えて高血圧,糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症などの疾患を多く合併するほどCVD のリスクが高まることを示した(Ashizawa K, et al. Clin Endocrinol 2010: 72; 689-95)。被爆者の甲状腺結節の長期フォローアップにおいて,結節を有する例は有しないものより甲状腺癌の発生リスクが高いこと(Imaizumi M, et al. J Clin Endocrinol Metab 2005:90;5009-14),被爆後50年以上経過での甲状腺癌を含めた甲状腺結節は被曝線量に依存して発生が高くなるが,自己免疫性甲状腺疾患は 被曝線量とは無関係であることを示した(ImaizumiM, et al. JAMA 2006:295;1011-22)。また、潜在性甲状腺機能低下症症例が顕在性甲状腺機能低下症に移行する危険因子はTSH高値であることを示した。一方で、潜在性低下症の約半数が無治療で甲状腺機能が正常化すること、とくに、TSHがそれほど高くなく、橋本病に典型的なエコー所見に乏しい、といった特徴があることを見出した。ここでも被曝線量は潜在性甲状腺機能低下症の発症、その経過に関連がないことを示した(Imaizumi M, et al. Thyroid 2011: 21;1177-82)。

 

(文責:宇佐俊郎、安藤隆雄)

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代謝系

1型糖尿病の臨床研究
 1型糖尿病では遺伝的背景に基づいて発症する自己免疫疾患であり、発症前から血清中に複数の膵島関連自己抗体が存在する。疾患感受性遺伝子では、最も発症に強く関与する遺伝子はHLA であり,なかでもクラスII 遺伝子のDR,DQ であることが1980年代に明らかにされた。また,1990年代に入るとインスリン遺伝子,CTLA4遺伝子をはじめ数多くの疾患感受性遺伝子が発見され、我々の教室でも、1型糖尿病とこれらの遺伝子の関連について研究を行った。インスリン遺伝子とCTLA4遺伝子についてDiabetes Res Clin Pract(Abe T, et al. Diabetes ResClin Pract 1999:46;169-75)とDiab Med(Abe T, et al. Diab Med 2001:18;726-31)にその成果を報告した。また,MODY3の原因遺伝子HNF-1α遺伝子異常を膵島関連自己抗体陰性1型糖尿病の7%に見出し,異常遺伝子の機能解析と合わせてJ Clin Endocrinol Metab(Kawasaki E, et al. J Clin Endocrinol Metab 2000:85;331-5)へ報告した。その後,ケモカインやサイトカイン遺伝子多型に取り組み,IL-10遺伝子多型の成果をHum Immunol(Ide A, et al. Hum Immunol 2002:63;690-5)とAnn NY Acd Sci(Ide A, et al. Ann NY Acd Sci 2003:1005;344-7)に,IL-18遺伝子多型の成果をJ Autoimmun(Ide A, et al. JAutoimmun 2004:22;73-8)とAnn NY Acd Sci(Ide A, et al. Ann NY Acd Sci 2003:1005;436-9)に,SDF-1遺伝子多型の成果をHum Immunol(Ide A, et al. Hum Immunol 2003:64;973-8)に報告した。さらにSUMO4遺伝子多型が複数の自己免疫疾患の共通した疾患感受性遺伝子であることを突き止め,その成果をJ Clin Endocrinol Metab(Tsurumaru M, et al. J Clin Endocrinol Metab 2006:91;3138-43)へ報告した。劇症1型糖尿病とCTLA4遺伝子多型の関連は,Diabetes Care(Kawasaki E, et al. Diabetes Care 2008:31;1608-10)に報告している。全国の7施設による多施設共同研究を開始し,約2,000サンプルを用いてこれまでにインスリン遺伝子(担当:埼玉医大),CTLA4遺伝子(担当:近畿大),PTPN22遺伝子(担当:長崎大),Vitamin D遺伝子(担当:慶応大),KIAA0350遺伝子(担当:埼玉医大),IL-2RA 遺伝子(担当:長崎大)の研究成果を,Am J Med Genet(Kawasaki E, et al. Am J Med Genet 2006:140;586-93),J Clin Endocrinol Metab(Ikegami H, et al. J Clin Endocrinol Metab 2006:91;1087-92,Awata T, et al. J^Clin Endocrinol Metab 2007:92;1791-5,Awata T, et al. J Clin Endocrinol Metab 2009:94;231-5,Kawasaki E, et al. J Clin Endocrinol Metab 2009:94;947-52),J Autoimmun( Shimada A, et al. J Autoimmun 2008:30;207-11)などに報告している。

 一方、1型糖尿病と膵島関連自己抗体に関する研究も継続しており、1980年代には、高橋明,上田康雄らが中心となり抗膵島細胞抗体(ICA)の測定を開始し,その後,山口義彦,川崎英二,瀧野博文,阿比留教生,矢野まゆみらがICA の測定および新しく発見されたグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体の研究を引き続きおこなった。自己免疫性甲状腺疾患(AITD)合併1型糖尿病の臨床的特徴や、インスリン非依存糖尿病の中に潜在的に存在する抗GAD抗体陽性の1型糖尿病(Type 1 in NIDDM)について報告した(Abiru N, et al. J Autoimmun 1996: 9; 683-68813)。また、発症時における日本人1型糖尿病のICA,GAD 抗体,ICA512/IA-2抗体,インスリン自己抗体を網羅的に解析しJ Autoimmun に報告した(Sera Y, et al. JAutoimmun 1999:13;257-65)。さらに膵島関連自己抗体エピトープの詳細な検討により,ICA512/IA-2抗体のエピトープが1型糖尿病の発症年齢により異なることを明らかにし,ICA512/IA-2に対する免疫反応が膵島β細胞破壊を反映している可能性を示唆した(Kawasaki E, et al. J Autoimmun 2001:17;323-31,Kawasaki E, et al. Ann N Y Acad Sci 2002:958;235-40)。また,瀧野博文,川崎英二らが中心となり西日本地区における多施設共同研究として前向き調査を進め,食事・経口血糖降下薬治療中の2型糖尿病患者の中に潜在するType 1 diabetes in NIDDMの進行予知にGAD 抗体が有用であることを明らかにした(Takino H, et al. Diabetes Metab Rev 1998:14;334-35,Takino H, et al. Diabet Med 2002:19;730-4)。さらに本調査はGAD 抗体エピトープ解析(Kawasaki E, et al. Ann N Y Acad Sci 2003:1005;440-8)やZnT8抗体などのデータが追加され,Type 1 in NIDDMの進展予知のためのストラテジーを提唱したきた(Kawasaki E, et al. J Clin Endocrinol Metab 2010:95;707-13)。その後、新しい自己抗体(ZnT8抗体)の遺伝因子との関連(Kawasaki E, et al. Diabetologia 2008:51;2299-302)を報告し、新しい抗体測定系の開発を進めてきた(Kawasaki E, et al. Acta Diabetol. 2014:51:429-34).。
 最近では、1型糖尿病と自己免疫性甲状腺疾患が合併した多腺性自己免疫症候群3型患者の臨床像を自己免疫性甲状腺疾患被合併との比較で詳細に検討した解析研究(Horie I et al. J Clin Endocrinol Metab. 2012: 97; 1043-50)や、インターフェロン治療中に発症した1型糖尿病に関する研究成果(Nakamura K, et al Endocr J. 2010;57:947- 51)(Nakamura K et al. Diabetes Care 2011 34:2084-9)についても、研究をすすめている。また、国立国際医療研究センターが主催する、日本人1型糖尿病の包括的データベースの構築と臨床研究への展開の共同研究機関として参加し、本邦の1型糖尿病の臨床研究を継続していく予定である。

(文責:川崎英二、阿比留教生)

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1型糖尿病の基礎研究
 1型糖尿病に関する基礎研究は、優れた1型糖尿病の自然発症モデルであるNOD(nonobese diabetic)マウスを用いた研究が中心である。阿比留教生、古林正和が、コロラド大学George Eisenbarth教室に留学し、1型糖尿病の成因における主要自己抗原;インスリンの重要性についての研究を行った流れを引き継いでいる。阿比留は,留学中にインスリンB 鎖に1型糖尿病の自己免疫現象を開始させる重要な抗原が存在するという仮説をたて,証明する研究を行い複数の論文に報告した(Yu L, et al. P Natl Acad Sci USA 2000:97;1701-6,Abiru N, et al. J Autoimmun 2001:14;231-7,Abiru N, et al.Diabetes 2001;50;1274-81,Moriyama h, et al. P Natl Acad Sci USA 2002:99;5539-44)。その後,遺伝子改変NOD マウスによりインスリン1遺伝子の重要性をP Natl Acad Sci USA(Moriyama H, et al. P Natl Acad Sci USA 2003:100;10376-81)に報告し,2005年には,インスリンB 鎖の重要なT細胞エピトープがなければ,NOD マウスが1型糖尿病を発症しないことをNature(Nakayama M, et al. Nature 2005:435;220-3)に報告した。また,古林正和はインスリン反応性のT細胞受容体α鎖の重要性を,インスリン反応性T細胞クローンの受容体トランスジェニックマウスを用いて証明しP Natl Acad Sci USA(Kobayashi M, et al. P Natl Acad Sci USA 2008:105;10090-4)に報告した。これら,インスリンB鎖の重要性の研究を基礎に,当教室において,NOD マウスへのインスリンB 鎖のアナログペプチドの経鼻投与が,糖尿病発症阻止効果と高血糖状態からの寛解誘導があることを報告し(Kobayashi M, et al. J Immunol 2007:179;2082-8)、NOD マウスへのインスリンB 鎖ペプチド投与が,自己免疫を抑制する制御性T 細胞を膵島内に誘導することを見出した(Fukushima K, et al.Biochem Biophys Res Commun 2008:367;719-24)。しかし、これらの自己抗原を用いた抗原特異的治療法、あるいは予防法では、その裏に、非常に病原性の高いエフェクター細胞が誘導されていること、また、NODマウスでは、組織特異的に、エフェクター細胞が制御性T細胞の抑制が低下する週齢が存在することを、原研分子教室との共同研究で証明した(Nakahara M, et al. Autoimmunity 2011:44;504-10)。

 これらの結果を受け、制御性T細胞誘導に注目した研究から、エフェクター細胞、あるいは、エフェクター分子を標的にした治療法の可能性について探索する研究へ舵を切り、初めに、エフェクター細胞としてβ細胞障害の主役と考えられていた細胞障害性T細胞(CTL)、あるいはサイトカイン誘導性のβ細胞アポトーシスする可能性が示唆された小胞体ストレスに注目した。小胞体ストレスによるアポトーシスの候補遺伝子であるCHOPを欠損したNODマウスや、CTLの活性化分子であるGranzyme B欠損NOD マウスを作製し、野生型と比較したが糖尿病発症率に有意な差を認めなかった(Satoh T, et al Apoptosis 2011: 16; 438-48)(Kobayashi M, Kaneko-Koike C, et al. Clin Exp Immunol. 2013: 173; 411-8)。さらに、ヘルパーT細胞のサブタイプであるTh1細胞やTh17細胞に注目、そのエフェクターサイトカインであるIL-17欠損やIFN-g受容体欠損NOD マウスを検討するも有意な累積糖尿病発症率の低下を認めなかったため、両者を欠損したダブル欠損NODマウスを作製、明らかな発症抑制を確認した(Kuriya G et al. Diabetologia. 2013: 56; 1773-80)。これらのマウスでは、脾細胞やリンパ節の免疫細胞の量的減少が確認されており、今後その発症抑制機序の解析を進める予定である。また、CTLやヘルパーT細胞、B細胞、自然免疫細胞などの分化や活性化にBATF分子と協調して転写調整を行うPioneer factorとして近年注目されている IRF-4分子に注目、IRF4欠損NOD マウスを作製し、強力な発症抑制効果を確認しており、今後、1型糖尿病の治療開発の基礎となる研究結果が輩出されてくることが期待される。

(文責:阿比留教生)

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妊娠糖尿病の臨床研究
 次に、妊娠糖尿病(GDM)について概説する。研究のテーマは、妊娠糖尿病の病態解明、産後の2型糖尿病発症の研究である。
 これまで当教室では、GDM患者の産後の耐糖能異常発症に関して追跡調査を行っており、その危険因子としてGDM診断時の空腹時血糖、HbA1c、BMI、HOMA-R に関して産後の2 型糖尿病発症に相関がみられ、特に空腹時血糖が最も強い相関(p<0.0001)を示したことを報告(秋吉,川崎ら,糖尿病と妊娠2005; 5, 119-122)している。また、産後の2型糖尿病発症群は、インスリン初期分泌能(Insulinogenic index)が低い症例が多く、インスリン抵抗性には有意な差が認められなかった(高島,川﨑ら,糖尿病と妊娠2002; 2, 55-58、高島,川崎ら,糖尿病と妊娠2007; 7,116-120)ことから、日本人のGDM患者における産後の耐糖能障害発症には主にインスリン分泌能が関与していることが考えられる。今後は更に有用なスクリーニング方法を確立すべく研究を続けている。
 また、2008年のHAPOstudyにて、これまで治療介入不要とされていた軽症の耐糖能異常妊婦も周産期アウトカムの悪化が報告されて以来、妊娠中の血糖管理の重要性がより強調されるようになった。本邦では2010年の診断基準改定により、GDMの頻度は全妊娠の約12%に至ると推定されており、GDM の適切かつ効率的な治療介入が重要となっている。最近我々は、妊娠初期にGDMと診断された妊婦の中で、栄養指導が著効する一群が存在することを報告した(堀江ら, 糖尿病と妊娠2014, 14(1), 100-104)。このような妊婦は妊娠中期の耐糖能検査において正常を示し、更には分娩までインスリン治療を必要としなかった。このような症例の妊娠中期の75gOGTTを後方視的に解析したところ、妊娠中期に耐糖能が改善しないGDM群に比し、ISSI-2が有意に高いことが判明した。またそれらは初産であることが唯一の関連因子であり、OGTTにおける血糖値やインスリン値、インスリン分泌能や感受性のindexに関連は認められなかった(現在投稿中)。今後は、どのような妊婦がインスリンを必要とせず、より食事療法が有効な群なのかをGDM診断時に予測できる診断方法の確立を目指していく。

(文責:堀江一郎)

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動脈硬化のリスク因子に関する研究
 動脈硬化のリスクは,総括的に管理治療する事が重要である.2005年から本学大学院社会医療科学講座地域医療学の前田隆浩教授との共同研究として,五島列島住民の動脈硬化検診を例年実施している.従来の健康診断に加えて,詳細な食習慣運動習慣の調査,頸部血管エコーによる内膜中膜肥厚,CAVIによる血管弾性の評価,遺伝子多型(アディポネクチン遺伝子)を行い,データベースを構築してきた.これまでの業績として,同じ離島でも都市化が進んだ離島と全くそうでない離島の間には,アディポネクチン遺伝子多型の頻度に違いがあること(Ishibashi, et al. Clin Chem Lab Med 2007)や,レプチン/アディポネクチン比と内膜中膜肥厚の関連性を明らかにした(Takamura, et al. Biomarkers 2010).さらに,血中葉酸やホモシステインレベルとBMIの関連性についても検討できた(Nakazato, et al. Eur J Nutr 2011).また,動脈硬化のスクリーニングとしてのCAVIの有用性(Kadota, et al. Circ J 2008)や,動脈硬化のマーカーとしての白血球数の意義(Sekitani, et al. Biomarkers 2010)を明らかにした.さらに甲状腺ホルモンが基準値内であっても,甲状腺機能低下と内膜中膜肥厚とは関連することを見出した(Takamura, et al. Atherosclerosis 2009).さらに,アルカルフォスファターゼと高血圧の関連性(Shimizu, et al. J Physiol Anthropol 2013),身長と高尿酸血症との関連性(Shimizu, et al. Acta Med Nagasakiensia 2013),血管弾性とTG/HDL-C比の関連性(Shimizu, et al. Atherosclerosis 2013),身長と内膜中膜肥厚との関連性(Shimizu, et al. J Physiol Anthropol 2013),ヘモグロビン値と血管弾性との関連性(Shimizu, et al. Geriatr Gerontol Int 2013),ヘモグロビン値とTG/HDL-C比との関連性(Shimizu, et al. Intern Med 2014),グルコキナーゼ調節蛋白の遺伝子多型と動脈硬化リスクとの関連性(Murata-Mori, et al. Clin Chem Lab Med 2014),ヘモグロビン値と高血圧との関連性(Shimizu Y, et al. Intern Med 2014),内膜中膜肥厚と高尿酸血症の関連性(Shimizu, et al. Atherosclerosis 2014)、Tribbles homolog 1 (TRIB1)遺伝子多型と脂質異常症との関連(Ikeoka T, et al. Tohoku J Exp Med. 2014)など.動脈硬化リスクに与えうる因子を,様々な観点から解析した.また、最近では。主に癌検診のために行ったPETの結果を、動脈硬化巣の病態把握に応用する研究結果を報告し(Haraguchi A, et al. PLoS One. 2014:9; e111990)、今後も生活習慣病を基盤とした動脈硬化リスク関連について研究をすすめていく予定である。

(文責:山崎浩則、阿比留教生)

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青年期メタボリックシンドロームに関する研究
 心血管病発症のハイリスク状態であるMets発症を予防するには,急増している20-30歳代男性に対して予防介入することは言うまでもない.しかし,内臓脂肪が増加しやすいMetsハイリスク青年期成人を抽出できれば,介入対象者が明確になり,介入の効率がアップすることが期待できる.
 そこで,長崎大学保健・医療推進センターは,最初に,学生定期健康診断の結果を活用して,青年期成人の動脈硬化リスクの保有率,インスリン感受性と腹囲の関連性を明らかにした(山崎浩則,他.Campus Health 2010).この研究から,内臓脂肪過剰蓄積が臨床的に判断できない時期から(男性で腹囲85 cm未満の時期),HOMA-IRで評価したインスリン感受性において,すでにわずかな変化が生じていることが分かった.
 次に,食行動質問表の活用に注目した.これは食行動の癖やズレを評価する質問群であるが,中年壮年のデータをもとに開発された.そこで,青年期成人においても有効であるかどうか,また,質問数を約半数にしても有効性が保てるかどうかを検討した(山崎浩則,他.Campus Health 2013).この研究から,食行動質問表の30の質問から14の質問を抽出した質問群においても青年期成人の食行動を良く反映するものであることがわかった.さらには,抽出を繰り返して残った4つの質問群は,肥満でないものが一年後に肥満になることを予知できる要素になりうることを明らかにした.
 現在,内臓脂肪を指標に研究をすすめている.青年期成人の内臓脂肪面積は殆ど解析されていないことから,学生定期健康診断で約700人を対象に,腹囲と内臓脂肪との関連性,生活習慣との関連性,肥満関連遺伝子多型との関連性を解析中である.内臓脂肪面積測定には,非侵襲的内臓脂肪面積測定装置であるデュアルスキャンを用いた(山崎浩則,他.Campus Health 投稿準備中).

(文責:山崎浩則)

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