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HTLV-I 感染と自己免疫疾患 |
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長崎市はヒトT 細胞白血病ウイルスI 型(HTLV-I)感染の高浸淫地域であり既に成人T 細胞白血病/リンパ腫(ATLL)とHTLV-I 関連脊髄症(HAM)の発症率が高いことは明らかであった。リウマチ・膠原病内科では有病率が高いリウマチ性疾患の関節リウマチとシェーグレン症候群に注目し長崎在住のこれら疾患患者では健常人と比較して血清抗HTLV-I 抗体陽性率が高いこと(Terada K, et al. Lancet 1994:344;1116-9,Eguchi K, et al. Arthritis Rheum 1996: 39;463-7),抗HTLV-I 抗体陽性シェーグレン症候群では唾液中にIgA 型抗HTLV-I 抗体が高頻度に検出されること(Terada K, et al. Lancet 1994:344;1116-9),HAM では高頻度にシェーグレン症候群を合併すること(Nakamura H, et al. Ann RheumDis 1997:56;167-72),コピー数と陽性率は低いもHTLV-I tax DNA がpolymerase chain reaction(PCR)法では抗HTLV-I 抗体陰性シェーグレン症候群患者唾液腺組織に検出されること(Mizokami A, et al.Scand J Rheumatol 1998:27;435-40)を既に明らかとしていた。これらの結果はHTLV-I 感染が引き金となりシェーグレン症候群や関節リウマチが発症する可能性を示唆し,江口内科時代には主にシェーグレン症候群を対象にHTLV-I 感染による自己免疫疾患の発症機序の解析研究が展開された。細胞生物学的にはHTLV-I tax を介するアポトーシス抵抗性が転写因子NF-κB や抗アポトーシス分子の発現増強で誘導されることを明らかとした(Kawakami A, et al. Blood 1999:94;3847-54,Nakashima K, et al. J Lab Clin Med2003:142;341-7)。これはHTLV-I が感染する環境では宿主細胞がアポトーシスから逃れ,細胞増殖や炎症性サイトカイン高産生などを介して,自己免疫疾患の発症・進展に関与する仮説として関連学会で注目を集めた。シェーグレン症候群唾液腺組織を用いた研究では抗HTLV-I 抗体陽性群と抗HTLV-I 抗体陰性群の比較対象研究が行われた。アポトーシス関連分子では2群間には有意差は検出されなかったが(Nakamura H, et al. Clin Exp Immunol 1998:114;106-12,Nakamura H, et al. Lab Invest 1999:79;261-9,NakamuraH, et al. Lab Invest 2000:80;1421-7),抗HTLV-I 抗体陽性シェーグレン症候群では抗セントロメア抗体陽性率が低いこと(Hida A, et al. Ann Rheum Dis 1999:58;320-2),単核球浸潤が強いこと(Nakamura H, et al. J Lab Clin Med 2000:135;139-44),唾液腺構造破壊が少ないこと(Nakamura H, et al. Clin Exp Rheumatol 2008:26;653-5)などの特徴も明らかとなり発症および進展機序の相違が示唆された。今年度の研究で抗HTLV-I 抗体陽性シェーグレン症候群(特にHAMに合併するシェーグレン症候群)では唾液腺組織2次リンパ濾胞の形成がなく,抗HTLV-I 抗体陰性シェーグレン症候群と比較してケモカインリガンドCXCL13発現が非常に低いことが明らかとなった(Nakamura H, et al. Rheumatology 2009:48;854-5)。唾液腺組織2次リンパ濾胞はシェーグレン症候群に特異的な自己免疫反応のニッチである。この差異が抗HTLV-I 抗体陽性シェーグレン症候群と抗HTLV-I 抗体陰性シェーグレン症候群の臨床像の違いに関連すると思われ,今後の分子機序解明が期待される。
(文責:川上 純)
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自己免疫疾患の病態に関連するシグナル伝達 |
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細胞と組織の恒常性は増殖,分化,細胞死のバランスで成り立っている。細胞死はアポトーシスとネクローシスに大別されるがリウマチ・膠原病内科ではアポトーシスの制御異常と自己免疫疾患に注目した。関節リウマチは滑膜組織滑膜細胞の増殖が特徴である。関節リウマチ滑膜組織の滑膜細胞にはNF-κB 核内発現とPCNA 陽性細胞が多いがアポトーシス陽性細胞は少ないこと(Yamasaki S, et al. Ann Rheum Dis 2001:60; 678-84),培養滑膜細胞はアポトーシスに感受性はあるが炎症性サイトカイン,増殖因子,一酸化窒素(NO)はNF-κB 活性化や抗アポトーシス分子発現増強を介してアポトーシス抵抗性を誘導することを明らかとした(Kawakami A, et al. Arthritis Rheum 1996:39;1267-76,Kawakami A, et al. Arthritis Rheum1999:42;2440-8,Migita K, et al. Immunology 2001:103;362-7,Miyashita T, et al. Biochem Biophys Res Commun 2003:312;397-404,Kawakami A, et al. Ann Rheum Dis 2004:63;95-7,Tamai M, et al. J Lab Clin Med 2006:147;182-90)。それに加えて炎症性サイトカインは滑膜細胞由来の基質分解酵素マトリックスメタロプロテアーゼ産生誘導(Honda S, et al. Clin Exp Immunol 2001:126;131-6),CCL20産生誘導(Kawashiri S, et al. J Rheumatol 2009:36;2397-402),単球の血清アミロイド蛋白(SAA)分解抑制(Migita K, et al. Clin Exp Imunol 2001:123;408-11)などを介して滑膜炎を増強することを明らかとし,これら研究成果は関連学会で注目された。リウマチ・膠原病内科では滑膜細胞の組織特異的幹細胞としての可能性も追求した。滑膜細胞は脂肪細胞,軟骨細胞,骨芽細胞に分化可能であること(Yamasaki S, et al. Clin Exp Immunol 2002:129;379-84),この分化能が炎症性サイトカインで抑制されること(Yamasaki S, et al.Rheumatology 2004:43;448-52)を明らかとしたが,これは今後のリウマチ再生医療や後述の骨髄浮腫—関節リウマチ滑膜炎の近傍骨組織で認められる脂肪組織から炎症組織への置換—を考察する基礎データとなった。現在はサイトカインの転写後制御機構からこのテーマにはアプローチしている。これらに加え,シェーグレン症候群から単離培養した唾液腺細胞や唾液腺細胞株を用いたアポトーシス制御研究ではこれら細胞のアポトーシス感受性がデスリガンド(アポトーシスを誘導する液性因子),成長因子で制御されること( Kamachi M, et al. J Lab Clin Med 2002:139;13-9,Nakamura H, et al. Clin Exp Rheumatol 2007:25;831-7,Nakamura H, et al. Apoptosis 2008:13;1332-30),アポトーシスにはアポトーシス関連遺伝子の転写後制御機序が重要であること(Iwanaga N, et al. J Lab Clin Med 2005:145;105-10,Aratake K, etal. J Lab Clin Med 2005:146;184-91,Kamachi M, et al. Biochem Biophys Res Commun 2007:360;280-5)を明らかとし,リウマチ性疾患の病態解明に貢献した。
(文責:川上 純)
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