長崎大学病院第一内科 Department of Immunology and Rheumatology, Department of Clinical Neuroscience and Neurology, Department of Endocrinology and Metabolism, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences
  お問い合わせ サイトマップ HOME
教室の歴史 研修システム 関連病院・施設 スタッフ グループ紹介 学生教育 患者さまへ
   
専門グループ紹介
 
HOME>専門グループ紹介>リウマチ・膠原病グループ

リウマチ・膠原病グループ
 
 
HTLV-I 感染と自己免疫疾患
自己免疫疾患の病態に関連するシグナル伝達
リウマチ性疾患とNK細胞
TRAPS 発見と新しい自己炎症症候群「中條—西村症候群」の解明
関節リウマチの早期診断と早期治療
リウマチ性疾患と臨床研究


HTLV-I 感染と自己免疫疾患

 長崎市はヒトT 細胞白血病ウイルスI 型(HTLV-I)感染の高浸淫地域であり既に成人T 細胞白血病/リンパ腫(ATLL)とHTLV-I 関連脊髄症(HAM)の発症率が高いことは明らかであった。リウマチ・膠原病内科では有病率が高いリウマチ性疾患の関節リウマチとシェーグレン症候群に注目し長崎在住のこれら疾患患者では健常人と比較して血清抗HTLV-I 抗体陽性率が高いこと(Terada K, et al. Lancet 1994:344;1116-9,Eguchi K, et al. Arthritis Rheum 1996: 39;463-7),抗HTLV-I 抗体陽性シェーグレン症候群では唾液中にIgA 型抗HTLV-I 抗体が高頻度に検出されること(Terada K, et al. Lancet 1994:344;1116-9),HAM では高頻度にシェーグレン症候群を合併すること(Nakamura H, et al. Ann RheumDis 1997:56;167-72),コピー数と陽性率は低いもHTLV-I tax DNA がpolymerase chain reaction(PCR)法では抗HTLV-I 抗体陰性シェーグレン症候群患者唾液腺組織に検出されること(Mizokami A, et al.Scand J Rheumatol 1998:27;435-40)を既に明らかとしていた。これらの結果はHTLV-I 感染が引き金となりシェーグレン症候群や関節リウマチが発症する可能性を示唆し,江口内科時代には主にシェーグレン症候群を対象にHTLV-I 感染による自己免疫疾患の発症機序の解析研究が展開された。細胞生物学的にはHTLV-I tax を介するアポトーシス抵抗性が転写因子NF-κB や抗アポトーシス分子の発現増強で誘導されることを明らかとした(Kawakami A, et al. Blood 1999:94;3847-54,Nakashima K, et al. J Lab Clin Med2003:142;341-7)。これはHTLV-I が感染する環境では宿主細胞がアポトーシスから逃れ,細胞増殖や炎症性サイトカイン高産生などを介して,自己免疫疾患の発症・進展に関与する仮説として関連学会で注目を集めた。シェーグレン症候群唾液腺組織を用いた研究では抗HTLV-I 抗体陽性群と抗HTLV-I 抗体陰性群の比較対象研究が行われた。アポトーシス関連分子では2群間には有意差は検出されなかったが(Nakamura H, et al. Clin Exp Immunol 1998:114;106-12,Nakamura H, et al. Lab Invest 1999:79;261-9,NakamuraH, et al. Lab Invest 2000:80;1421-7),抗HTLV-I 抗体陽性シェーグレン症候群では抗セントロメア抗体陽性率が低いこと(Hida A, et al. Ann Rheum Dis 1999:58;320-2),単核球浸潤が強いこと(Nakamura H, et al. J Lab Clin Med 2000:135;139-44),唾液腺構造破壊が少ないこと(Nakamura H, et al. Clin Exp Rheumatol 2008:26;653-5)などの特徴も明らかとなり発症および進展機序の相違が示唆された。今年度の研究で抗HTLV-I 抗体陽性シェーグレン症候群(特にHAMに合併するシェーグレン症候群)では唾液腺組織2次リンパ濾胞の形成がなく,抗HTLV-I 抗体陰性シェーグレン症候群と比較してケモカインリガンドCXCL13発現が非常に低いことが明らかとなった(Nakamura H, et al. Rheumatology 2009:48;854-5)。唾液腺組織2次リンパ濾胞はシェーグレン症候群に特異的な自己免疫反応のニッチである。この差異が抗HTLV-I 抗体陽性シェーグレン症候群と抗HTLV-I 抗体陰性シェーグレン症候群の臨床像の違いに関連すると思われ,今後の分子機序解明が期待される。

(文責:川上 純)

このページの先頭へ戻る


自己免疫疾患の病態に関連するシグナル伝達

 細胞と組織の恒常性は増殖,分化,細胞死のバランスで成り立っている。細胞死はアポトーシスとネクローシスに大別されるがリウマチ・膠原病内科ではアポトーシスの制御異常と自己免疫疾患に注目した。関節リウマチは滑膜組織滑膜細胞の増殖が特徴である。関節リウマチ滑膜組織の滑膜細胞にはNF-κB 核内発現とPCNA 陽性細胞が多いがアポトーシス陽性細胞は少ないこと(Yamasaki S, et al. Ann Rheum Dis 2001:60; 678-84),培養滑膜細胞はアポトーシスに感受性はあるが炎症性サイトカイン,増殖因子,一酸化窒素(NO)はNF-κB 活性化や抗アポトーシス分子発現増強を介してアポトーシス抵抗性を誘導することを明らかとした(Kawakami A, et al. Arthritis Rheum 1996:39;1267-76,Kawakami A, et al. Arthritis Rheum1999:42;2440-8,Migita K, et al. Immunology 2001:103;362-7,Miyashita T, et al. Biochem Biophys Res Commun 2003:312;397-404,Kawakami A, et al. Ann Rheum Dis 2004:63;95-7,Tamai M, et al. J Lab Clin Med 2006:147;182-90)。それに加えて炎症性サイトカインは滑膜細胞由来の基質分解酵素マトリックスメタロプロテアーゼ産生誘導(Honda S, et al. Clin Exp Immunol 2001:126;131-6),CCL20産生誘導(Kawashiri S, et al. J Rheumatol 2009:36;2397-402),単球の血清アミロイド蛋白(SAA)分解抑制(Migita K, et al. Clin Exp Imunol 2001:123;408-11)などを介して滑膜炎を増強することを明らかとし,これら研究成果は関連学会で注目された。リウマチ・膠原病内科では滑膜細胞の組織特異的幹細胞としての可能性も追求した。滑膜細胞は脂肪細胞,軟骨細胞,骨芽細胞に分化可能であること(Yamasaki S, et al. Clin Exp Immunol 2002:129;379-84),この分化能が炎症性サイトカインで抑制されること(Yamasaki S, et al.Rheumatology 2004:43;448-52)を明らかとしたが,これは今後のリウマチ再生医療や後述の骨髄浮腫—関節リウマチ滑膜炎の近傍骨組織で認められる脂肪組織から炎症組織への置換—を考察する基礎データとなった。現在はサイトカインの転写後制御機構からこのテーマにはアプローチしている。これらに加え,シェーグレン症候群から単離培養した唾液腺細胞や唾液腺細胞株を用いたアポトーシス制御研究ではこれら細胞のアポトーシス感受性がデスリガンド(アポトーシスを誘導する液性因子),成長因子で制御されること( Kamachi M, et al. J Lab Clin Med 2002:139;13-9,Nakamura H, et al. Clin Exp Rheumatol 2007:25;831-7,Nakamura H, et al. Apoptosis 2008:13;1332-30),アポトーシスにはアポトーシス関連遺伝子の転写後制御機序が重要であること(Iwanaga N, et al. J Lab Clin Med 2005:145;105-10,Aratake K, etal. J Lab Clin Med 2005:146;184-91,Kamachi M, et al. Biochem Biophys Res Commun 2007:360;280-5)を明らかとし,リウマチ性疾患の病態解明に貢献した。

(文責:川上 純)

このページの先頭へ戻る


リウマチ性疾患とNK細胞

 古くから自己免疫疾患患者末梢血中のNK(natural killer)細胞機能を検討した研究が行われ,いずれの疾患においてもNK 活性の低下が報告されているため,NK 細胞に注目して研究を開始した。まず,NK 細胞の基礎的検討を行った。健常者末梢血NK 細胞をサイトカイン刺激(IL-15,IL-12+IL-15,IL-12+IL-18,IL-15+IL-18)するとNK 細胞自身にアポトーシスが誘導された(Shibatomi K, et al. Arthritis Rheum2001:44;884-92)。また,細胞表面抗原刺激(CD2,CD16,CD94)によるNK細胞のアポトーシスでは,刺激によってグランザイムB が細胞内顆粒から漏出,PI-9分子で中和できなかった過剰なグランザイムBが,Bid を介したミトコンドリアの系を活性化する結果生じる現象であることが証明できた(Ida H, et al. Eur JImmunol 2003:33;3284-92, Ida H, et al. Mod Rheumatol 2005:15;315-22)。次に臨床的にNK細胞を検討した。関節リウマチと健常者および原発性シェーグレン症候群のNK 活性,NK 細胞数の検討で,関節リウマチ,原発性シェーグレン症候群ともに,健常者と比べてNK活性は低下していたが,原発性シェーグレン症候群ではNK 細胞数減少に,関節リウマチでは,NK 細胞1個あたりのNK 活性が低下していることに起因していることを証明した(Izumi Y, et al. J Lab Clin Med 2006:147;242-9,Aramaki T, et al. ModRheumatol 2009:19;245-52)。近年TNF 阻害剤が多くの関節リウマチ患者に使用されその有用性が多く報告されている。一方で同治療薬による腫瘍発生リスクが増大したとの報告もあるが,現時点では腫瘍発生のリスクは,報告により異なり一定していないこともあり,研究者間の一大紛争となっている。そこで,生物学的製剤を使用した関節リウマチ患者のNK 細胞活性を1年間モニターした。NK 活性に変化はみられなかったことからTNF 阻害剤による腫瘍発生リスクに関して,NK 細胞の観点からは否定的であった(in submission)。NK 細胞の基礎的・臨床的検討において,リウマチ性疾患におけるNK細胞の役割を明らかにできた。

(文責:井田弘明)

このページの先頭へ戻る


TRAPS 発見と新しい自己炎症症候群「中條—西村症候群」の解明

 江口勝美教授は臨床を大切にし,定期的にクリニカルカンファレンスを行った。2003年原因不明の発熱が続く症例があり,医局員全員で知恵を絞った。その難解症例は検討の甲斐があり,2004年に自己炎症症候群のひとつであるTNF receptor-associated periodic syndrome (TRAPS)のSLE 合併症例として本邦で初めて報告できた(Ida H, et al. Rheumatology 2004:43;1292-9)。またその患者にタクロリムス治療を世界で初めて行い成功した(Ida H, et al. Rheumatology 2006:45;1171-3)。TRAPS を報告して以来,全国各施設から,不明熱・周期熱患者の問い合わせが増加した。その中に,中條—西村症候群が含まれていた。神戸大学との共同研究の結果からこの疾患は,本邦からの報告しかない新しい自己炎症症候群であることがわかった(Kasagi S, et al. Mod Rheumatol 2008:18;203-7)。1例目は,昭和14年東北帝國大學医学部皮膚科・泌尿器科学教室の中條敦先生が発表された症候群であり,約67年経過していた。本症候群は,常染色体劣性遺伝形式をとっていたため,原研遺伝の新川詔夫教授(当時),吉浦孝一郎教授(現在)に相談して遺伝子解析を開始した。和歌山県立医大皮膚科の金澤伸雄先生に症例を集めていただき,解析が進んだ。約3年弱の歳月がかかったが,最初の報告から70年目の平成21年に原因遺伝子を同定できた。さらにその遺伝子がコードする蛋白の機能異常を東京大学薬学部との共同研究で証明できた。同定された細胞内オルガネラの異常で疾病が生じることは,世界でも報告がなく初めてのことであった。本研究は,平成22年度から3年間東京大学医科学研究所と共同研究を行う予定であり,さらなる発展が期待される。

(文責:井田弘明)

このページの先頭へ戻る


関節リウマチの早期診断と早期治療

 江口勝美教授は早期関節炎に関する厚生労働科学研究の主任研究者を2001年度から拝命し2009年度までの9年間,この研究に従事した。これを契機にリウマチ・膠原病内科では早期関節炎の前向き臨床研究を開始した。研究開始時は早期関節病変検出に対するMRIの有効性が認識され始めた時期で放射線科上谷雅孝教授との共同研究で解析を開始した。また,統計学的評価も重要な研究領域であり公衆衛生学青柳潔教授にも研究への参画を依頼した。研究成果は2003年度の日本リウマチ学会総会と九州リウマチ学会から発表された。この研究課題に関しては日本リウマチ学会総会シンポジウムでは2006年度から,また,米国リウマチ学会もしくは欧州リウマチ学会には2005年度から連続して演題を発表している。この研究から関節リウマチの早期診断基準として1.手指関節MRI 対称性滑膜炎陽性2.手指関節MRI 骨髄浮腫もしくは骨侵食が陽性3.血清抗CCP 抗体もしくはIgM-RF が陽性の3項目で2項目が陽性(Tamai M, et al. Ann RheumDis 65:133-5;2006),早期治療介入基準として1.手指関節MRI 骨髄浮腫陽性2.血清抗CCP 抗体もしくはIgM-RF が陽性(Tamai M, et al. Arthritis Rheum 2009:61;752-8)がNagasaki scoreとして発表され国際的にも注目されている(2009年度米国リウマチ学会発表内容がweb サイト:Rheumatology-congress website でも紹介)。またこれらの成果をもとに超早期関節炎の前向き治療介入試験をNagasaki Early Arthritis Intervention Trial(Nagasaki-Early Trial)としてUMINに登録し全国に発信中である。この研究に付随して関節リウマチに進展する回帰性リウマチのリスクファクターとしては抗CCP 抗体の寄与が最も大きいこと(Tamai M, et al. Intern Med 2006:45;795-7,Tamai M, et al. Sand J Rheumatol 2010;accepted),早期関節リウマチの重症度とマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)遺伝子多型(in submission),抗CCP 抗体陽性シェーグレン症候群の特徴(Iwamoto N, et al. J Rheumatol 2009:36;113-5),早期RA で検出される軟骨破壊(Fujikawa K, et al. J Rheumatol 2009:36;1126-9)も明らかとした。2009年度の米国リウマチ学会では22年ぶりに関節リウマチの(予備)診断基準が発表されたがこれはメトトレキサートの治療開始基準でもある。先述のNagasaki-Early Trial はメトトレキサートで治療を開始する治療プロトコールで,すなわち,Nagasaki score,Nagasaki-Early Trialは世界のリウマチ臨床研究のトレンドに合致し,今後の益々の発展が非常に期待される。

(文責:川上 純)

このページの先頭へ戻る


リウマチ性疾患と臨床研究

 リウマチ・膠原病の分野では関節リウマチに対する2003年のインフリキシマブの適応承認から新規製剤の導入が相次ぎ,かつ,新たな疾患標識マーカーの開発が続いている。それを反映し診断ならびに治療内容のパラダイムシフトが急速に進み,診療ガイドライン改訂のサイクルも速い。すなわち臨床研究が非常に重要な分野である。リウマチ・膠原病内科では大学病院と関連病院で西九州自己免疫疾患研究会を年に2回開催し,その中で臨床研究テーマとプロトコールおよび進捗状況をグループ全体でディスカッションしている。全国規模の臨床研究にも積極的に参加しているがこれに関しても西九州自己免疫疾患研究会でプロトコールを紹介し症例のエントリーを図っている(生物学的製剤使用関節リウマチ患者に関する疫学研究:REAL 研究,SECURE 研究,インフリキシマブのRRR 試験,エタネルセプトのJESMR 試験,トシリズマブのSURPRISE 試験など)。その過程でエタネルセプトとタクロリムスで臨床的寛解が導入されやすい症例の特徴(Iwamoto N, et al. Mod Rheumatol 2009:19;488-92,Aramaki T, et al. Mod Rheumatol 2009:19;652-6,Kawashiri S, et al. Joint Bone Spine 2010; accepted)やトシリズマブ治療経過での血清脂質の上昇(Kawashiri S, et al. Rheumatol Int 2009; Epub)の研究成果が得られた。自己抗体を用いた皮膚筋炎の病型分類では古典的皮膚筋炎は抗アミノアシルtRNA 合成酵素抗体(抗ARS 抗体),Clinically amyopathic dermatomyositis(CADM)は抗CADM 140 kD 抗体,腫瘍関連皮膚筋炎は抗155/140 kD抗体が病型特異的に検出される知見が得られ学会発表でも注目を集めた(Fujikawa K, et al. Sand J Rheumatol2009:38;263-7,Mukae H, et al. Chest 2009:136;1341-7)。先述の関節リウマチの早期診断と早期治療に関する研究成果を含めこれら臨床研究成果は明日の臨床に直結するものであり,かつ,in vitro 研究の課題も明らかとなる。今後もトランスレーショナルリサーチにつながるテーマをディスカッションし世界にエビデンスを発信したい。

(文責:川上 純)

このページの先頭へ戻る




















 


医学生・研修医の皆さまへ
症例・抄読会
教授からのメッセージ
教官の素顔
研修医・医員・研究生の横顔
専門グループ紹介
 
国立大学法人長崎大学 Copyright(C)