長崎大学病院第一内科 Department of Immunology and Rheumatology, Department of Clinical Neuroscience and Neurology, Department of Endocrinology and Metabolism, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences
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私のターニングポイント(転機)

 平成9年11月長崎大学医学部内科学講座第一の第5代教授に内定したという連絡を受けた。助教授室で椅子に座り、しばらく瞑目していると、次々と私の転機となった出来事が走馬灯のように浮かんだ。
 長崎大学医学部を卒業後、内分泌・代謝、神経、消化器、循環器を診療分野とする内科学講座第一に入局した。専門は漠然と肝臓病学を考えていた。その理由は医学部3年生の時に父が肝臓病で亡くなり、5人兄弟の長男でもあり、一日も早く独立して母親を助けなければと考えていたからである。研修2年目、外科に入局した親友から全身に皮下膿瘍を繰り返す若い女性を紹介され、原因の究明を頼まれた。当時、免疫学が注目されだした頃であり、細胞性免疫、体液性免疫、好中球機能などの免疫能について、誰の指導を受けることなく自分で試薬や試験管を揃え、自ら測定した。原因を究明するため、来る日も来る日も患者さんと共に戦う日々が続いたが、結局、原因はわからず亡くなられた。治すことが出来なかったことに失望・落胆し、また責任を感じた。この患者さんを受け持ったことが、私がリウマチ・免疫学を志した契機となった。
 教室には存在していなかったリウマチ・免疫学診療分野を創設し、一人で診療し、学生教育を行い、夕方から研究を行うという生活を送っていた。しかし、論文にするまでの研究成果を挙げることができず、卒後9年目にやっと医学博士の称号を受けた。
 昭和55年長瀧重信教授(専門;内分泌・甲状腺学)が第4代教授として就任された。教授の計らいで、安倍達先生(埼玉医科大学名誉教授)に教室の非常勤講師に就任していただき、以後、先生のご指導・ご鞭撻を受けるようになった。私のもとに同志がやっと集まり、さあこれからと思っていた矢先に、長瀧教授の恩師であるHarvard Medical SchoolのSydny H Ingbar教授が甲状腺の免疫学を研究するヒトを求めているというお話があり、留学した。当時、抗TSH受容体が発見され、甲状腺においても免疫学が注目されだした頃であった。甲状腺という異なった分野の研究であったが、種々分野の研究者と交友を深めることができた。
 留学から帰国後、リウマチ・免疫学を志す若い先生達が集まってくれており、留学中に温めていたアイディアで研究指導をし、論文にすることができた。
 診療面では、シェーグレン症候群と多発性筋炎にぶどう膜炎を合併した男性の患者さんがHTLV-Ⅰキャリアであることが判明した。リウマチ・膠原病疾患でそれまでどうしても原因・病態がわからなかった患者さんの多くが、HTLV-Ⅰ感染と関連していることが明らかになり、これまで閉ざされていた壁が、あたかもモーゼのエジプト脱出で、海が割れて道ができた感を受けた。
 免疫学やウイルス学を通して、リウマチ・膠原病分野だけでなく、神経学(HTLV-Ⅰ関連脊髄症、重症筋無力症など)、内分泌・代謝学(自己免疫性甲状腺疾患、1型糖尿病など)、消化器病学(B型・C型肝炎、肝硬変など)の研究分野を教室の先生達と一緒に広げていくことができた。このことは疾患を種々の角度から見て取ることができたと思う。
 臨床において、第3代高岡善人名誉教授は恩師である冲中重雄先生のお言葉「書かれた医学は過去の医学であり、目前に悩む患者さんの中に未来の医学の教科書の中身がある」を私共に叩き込まれた。この結果が、その後のHTLV-Ⅰ関連症候群、自己炎症疾患のTRAPSの発見、中條・西村症候群の遺伝子の変異部位の同定に繋がっていった。これらの発見・同定が多くの疾患の病態解明や治療法の開発に進展してくれるものと胸をときめかせている。
 私はこれまで、神の導くままに生きて来たと思う。能学を大成した世阿弥は「風姿花伝」に、因果の花を知る事、極めなるべし、一切皆因果なりと記している。現在の自分は過去の積み重ねの中にあり、将来の自分は現在の積み重ねにあり、一日一日を大事に生きていきたい。


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