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  長崎大学病院第二内科【女性医師の会】
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教 官 松瀬厚人、福島千鶴、河野哲也、土田朋子


専門疾患

1.気管支喘息
 気管支喘息の症状の特徴は、発作性の喘鳴と呼吸困難である。これらの症状は他の種々の心臓・肺疾患でもおこるが、気管支喘息では夜間や早朝に多発すること、中間に無症状期があること、安静時でも呼吸困難が出現することが特徴である。
 従来、気管支喘息の罹患率は、欧米でもわが国でも人種に関係なく人口の1%内外とされてきたが、近年は増加してきて人口の3〜8%位である。この増加傾向は、成人および小児のいずれにも認められており、過去20〜30年の間に、約3倍位増加してきている。
 この増加の原因は明らかではないが、室内あるいは室外の環境の変化によることも考えられ、空中アレルゲン(特に室内塵ダニ)や職業性アレルゲンが関与している可能性もある。また、生活の都市化(例えば大気汚染)が喘息有病率を高めたとも言われ、さらには食事性因子、精神的環境の変化、高齢化の影響も考えられている。
 気管支喘息の死因の大部分は窒息死である。わが国における喘息死亡率は人口10万対4.8人と、ここ10年間横ばい状態であったが、10〜34歳では増加し、65歳以上では約30%となっている。喘息死の頻度は、急速型(突然)27%、不安定急変型(小〜中発作から大発作に移行)34%、不連続急変型(断続性の発作頻発後の大発作)6%、その他33%である。急速型の患者は突然大発作をおこし、来院時心肺停止のことが多いが(death on arrival-DOA)、不安定急変型および不連続急変型では発作時に直ちに治療すれば救命できると考えられている。
 過去に大発作をおこした患者は、喘息死での44%を占めているので、厳重に管理する必要がある。
 喘息発作を誘発する危険因子としては、アレルゲン、大気汚染物質、運動および過換気、呼吸器感染、気候変化、二酸化硫黄、食物、食品添加物、薬物、激しい感情表現、などが重要である。その他、鼻炎、副鼻腔炎、鼻ポリープ、胃食道逆流などがある。女性では、月経、妊娠も関与する例が見られる。
 最近の研究によれば、気管支喘息は単に肺における単発的な気管支れん縮を伴う疾患とは考えられていない。むしろ、喘息は、咳、喘鳴、胸部圧迫感および呼吸困難といった症状の発作を特徴とする慢性の炎症性気道疾患とされ、この発作は通常可逆的であるが、重症になると死に至ることもある。喘息のコントロールが不良であると、やがて非可逆的な気道閉塞に至ることもある。このように、喘息の病態における気道炎症の重要性が認識され、喘息が炎症性障害であるという考え方は、喘息の診断や予防および管理にとって重要な意味をもつことになってきた。

2.慢性肺気腫
 肺気腫の発症要因としては喫煙が最も重要である。喫煙により肺胞壁が破壊され、肺は過膨張となり、ガス交換障害がおこり、肺機能の低下や低酸素血症をきたすことになる。
 肺気腫は長期の喫煙歴のある中年ならびに高年の男性に多いが、女性の喫煙者にもみられる。労作性の呼吸困難が初発症状として最も多く、繰り返す咳、痰、喘鳴等をしばしば伴う。風邪などに引き続いて気道感染を併発し、慢性気道炎症の増悪があれば膿性痰が増加してくる。体動時呼吸困難が唯一の症状のこともあり、階段や坂道を登るときなどに息苦しさを自覚することも多い。症状は年単位で徐々に進行する。
 肺気腫患者は比較的安定した経過中に呼吸困難や咳、痰が急に増強するいわゆる急性増悪をきたすことがある。誘因は呼吸器感染が多い。このような場合は、低酸素血症が増悪し、高炭酸ガス血症の合併を伴って、急性呼吸不全の病態を呈する。肺気腫患者の日常管理において、この急性増悪の予防や早期の対処は極めて重要である。急性増悪の原因として最も多い呼吸器感染症は咳や膿性痰の増加が早期症状であり、起炎菌に感受性のある抗菌薬にて早期に治療する。
 肺気腫患者にとって最も重要な症状は呼吸困難であり、そのため日常活動にさまざまな支障をきたす。呼吸器リハビリテーションは患者の症状を和らげ、日常の活動性を十分発揮できるように総合的なケアを行うものである。活動能力を増すために呼吸訓練と運動療法を主として行う。腹式呼吸法、筋肉のリラクセーション、歩行運動を中心とした運動療法を行う。
 肺気腫が進行すると低酸素血症が著明となり慢性呼吸不全となる。これらの慢性呼吸不全の患者に対して長期酸素療法が予後を改善することが認められている。わが国でも1985年より在宅酸素療法(home oxygen therapy - HOT)が保健診療の適応を受け普及している。長期の酸素療法により低酸素血症を改善し、運動能力や呼吸困難感を改善することによって、生存率だけでなく生活の質的改善が得られる。
 近年、重症の肺気腫に対して「肺容量減少術」という外科的治療がなされるようになり、適応があれば試みても良い治療法である。
 肺気腫の発症・予防には禁煙が第一である。


研究テ−マ

1.気管支喘息の病態の解明および抗喘息薬の作用機序の検討
 ヒト摘出肺を用いてサイトカイン遊離とアレルギー性炎症の制御の研究を行っている。受動感作したヒト肺細胞をダニ抗原で刺激し化学伝達物質の遊離とサイトカインの産生に対し抗アレルギー剤、免疫抑制剤の抑制効果を検討している。

2.サイトカイン遺伝子発現調節因子の解明
 サイトカイン転写調節因子NF-κBに注目し、単球の特異抗原刺激により直接NF-κBの核内移行が誘導されるかどうかまた薬剤による調節機構を検討している。

3.マウス喘息モデルにおけるサイトカイン産生とリモデリングに及ぼす薬剤の抑制効果の検討
 マウスをダニ抗原で能動感作し喘息モデルを作成し抗原チャレンジした場合のTh1およびTh2サイトカイン産生パターンとリモデリングの形成を分子生物学的手法を用いて検討し、選択的ロイコトリエン受容体拮抗薬の抑制作用を検討している。


4.気道過敏性亢進の病態の解明
 気管支喘息患者は、健常者では何の反応も起こさない程度の弱い刺激(アレルゲン、喫煙、冷気など)が気道に加わることにより、気道の収縮を起こし、喘鳴、呼吸困難等の発作を起こす。これは喘息患者では気道が刺激に対して反応しやすい状態、即ち気道の反応性が亢進している状態(気道過敏性の亢進)を意味する。そこで、気道過敏性は気管支喘息患者を健常者と区別する最も大きな特徴のひとつである。最近の研究により、気管支喘息患者では非発作時においても気道の炎症が存在すること、この気道の炎症の程度と気道過敏性の程度がよく相関することが認められ、気道過敏性の原因として気道の炎症が考えられるようになった。我々は、喘息患者、アトピー疾患患者、健常人の気道過敏性を測定し、同時に末梢血および喀痰の検査を行い、気道炎症と気道過敏性の関係を調べている。また、分子生物学的手法を用いて、気道過敏性と炎症細胞、サイトカイン、化学伝達物質との相関を検討している。

5.アルコール誘発喘息の発症機序と遺伝子解析
  飲酒によっておこる喘息症状の悪化は日本人喘息患者の約半数に認められ、臨床上重要な増悪因子のひとつである。アルコール誘発喘息の発症機序は、ALDH2活性異常にもとづいて、飲酒後、血中アセトアルデヒド濃度が上昇し、肥満細胞あるいは好塩基球からヒスタミンなどの化学伝達物質が遊離されることにより引き起こされることが示唆されている。摘出ヒト気管支を用いてアセトアルデヒドによる気管支収縮とケミカルメディエーターの遊離および薬剤による抑制反応を研究している。

リンク先
  米国アレルギー、喘息、免疫学会
American Academy of Allergy, Asthma and Immunology
http://www.aaaai.org/

国立大学法人 長崎大学