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| 教 官 |
石松祐二、坂本憲穂、角川智之、原信太郎 |
| 大学院生 |
中島章太、原田達彦 |
1.特発性間質性肺炎
原因不明のびまん性間質性肺炎・肺線維症を示す病名である。労作時息切れに始まる呼吸困難および乾性咳嗽を主症状とする。急性型、亜急性型、慢性型に分類され、慢性型は時に急性増悪を呈することがある。最近、外科的肺生検組織に基づいた診断(DAD,OP, NSIP, UIP, DIP/RB-ILD, LIP)が主流となっており、また臨床像を良く反映しており、治療法の一つである副腎皮質ホルモン剤に対する反応性に違いがみられる。亜急性型は副腎皮質ホルモン剤に対する反応が良く予後は良好だが、急性および慢性型は通常、反応性は悪く予後不良である。胸部X線上の陰影や症状で区別がつかない場合が多く、従ってできる限り外科的肺生検をし、治療法の選択をすることが肝要である。
2.膠原病肺
種々の膠原病(強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、慢性関節リウマチ、混合性結合織病など)に間質性肺炎を高率に合併する。基本的な病理組織所見は上記の特発性と同様であり、治療法も特発性に準じるが、予後は特発性に比べて良いと最近言われている。膠原病専門医との連携が重要であり、膠原病専門医の肺病変に対する認識と知識が求められるとともに症例の集積が今後の課題である。また、慢性関節リュウマチには間質性肺炎以外に、細気管支領域の病変を起こすことにも注意が必要である。
3.サルコイドーシス
肺、リンパ節、眼、皮膚、心臓などの多臓器に非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫病変を形成する原因不明の全身性疾患である。ほぼ半数が健康診断での胸部X線上の異常影により無症状で発見される。自覚症状からの発見例では霧視などの眼症状が多い。診断には気管支鏡検査による肺胞洗浄や肺生検が重要である。死因は心病変が多く突然死をきたすことがあるので、心病変の検査は不可欠である。約8割の症例で自然寛解がみられるが、5〜10%は進行性難治性の経過をとる。治療として副腎皮質ホルモン剤の絶対的適応は心、腎、神経病変と高Ca血症である。
4.過敏性肺炎
好熱性放線菌、真菌、細菌、動物性蛋白や化学物質などの有機、無機の抗原を反復吸入するうちに感作が成立し、その後の吸入により発症する外因性アレルギー性肺炎の総称である。微熱、咳嗽、喀痰などの症状で起こり、これらが次第に増悪し呼吸困難をきたす。急性、亜急性、慢性型に分けられる。日本では夏型過敏性肺炎が75%を占める。高温多湿な夏季に関東から西日本にみられ、冬季は消滅する。発症環境としては家屋、とくに風通しや日当たりが悪く、湿気の多い、かびの生えやすい場所(風呂場、洗面所、台所)で働く主婦に多い。その他に農夫肺(東北、北海道に多い)、換気装置肺炎(空調肺、加湿器肺)、鳥飼病などがある。治療は抗原からの隔離(即ち入院が原則)、環境からの抗原の除去が基本である。
5.好酸球性肺炎
末梢血好酸球増多の有無に関わらず、組織学的に肺局所への好酸球浸潤のみられる疾患群の総称である。原因不明が多く、咳嗽、喀痰、呼吸困難、発熱で発症する。最近、急性型の頻度が増加しているが、その特徴として、アトピー素因をもち、20歳前後の若年で、喫煙開始直後より突然の発熱、呼吸困難で発症する。胸部X線上は両側びまん性の多発浸潤影およびスリガラス陰影とカーリーのA、Bライン、胸水貯留を特徴とし、著明な低酸素血症を呈する。病初期には末梢血の好酸球は上昇せず、第5病日から7病日頃一過性に好酸球が上昇する。副腎皮質ホルモン剤が著効を示し、予後は良好である。慢性型は、診断が困難な場合もあるが、通常は末梢血中の好酸球増多が約85%にみられ、気管支肺胞洗浄液中の好酸球も上昇していることから診断が可能である。副腎皮質ホルモン剤が有効だが、6カ月以内の再発が多い。
6.びまん性汎細気管支炎と副鼻腔気管支症候群
びまん性汎細気管支炎は、両側びまん性に存在する呼吸細気管支領域の慢性炎症である。慢性の咳嗽、多量の喀痰(数ccから数百cc)と労作時呼吸困難であり、非喫煙者が多く(慢性気管支炎との違い)、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を高率に合併している。1980年前半までは予後は極めて不良であったが、1985年以降、マクロライド系抗菌薬の長期療法が導入されて予後は一変した。現在では治癒可能の疾患となっている。副鼻腔気管支症候群もびまん性汎細気管支炎とほぼ同様に扱われる。
7.その他
比較的稀な疾患として、肺胞蛋白症、ウェーゲナー肉芽腫症、肺リンパ脈管筋腫症、肺好酸球性肉芽腫症なども気管支肺胞洗浄や開胸肺生検をすることで診断治療を行っている。 |
1.慢性気道感染症の病態解析−サイトカインと接着分子−
慢性気道感染症、特にびまん性汎細気管支炎の病態は、中枢側気道での細菌の持続感染と多量の好中球集積および呼吸細気管支領域でのリンパ球を中心とする単核球と脂肪を貪食したマクロファージ(泡沫細胞)の集積である。この病態形成についての詳細は、未だ解明されていない。これまでの研究で、以下のような機序を考えている。まず、細菌やウイルスあるいは未知の物質などによって肺胞マクロファージや血管内皮細胞が刺激され、インターロイキン1β(IL-1β)やインターロイキン8(IL-8)などのサイトカインが産生され、局所へ好中球が浸潤する。一方少し遅れて特異的な防御機構が働き、肺胞マクロファージとT リンパ球との interaction でさらにサイトカインが産生されて、好中球の浸潤がおこると思われる。浸潤した好中球は菌やサイトカインの刺激でさらにサイトカインを産生すると同時にエラスターゼや活性酸素などの組織障害性物質を産生して気管支上皮などの障害をおこし、細菌の付着を容易にする。また、エラスターゼや活性酸素は気管支上皮に働き、IL-8の産生を促す。付着した細菌は、さらに免疫担当細胞を刺激し、サイトカインが持続的に産生されると考えている。
びまん性汎細気管支炎は、かつて極めて予後不良の疾患であったが、1985年以降のマクロライド系抗菌薬の少量長期持続投与療法の確立によって、著しい予後の改善が見られるが、現在でもなお、マクロライド系抗菌薬の効果が少ない症例が約10%認められる。そこで我々は、細胞浸潤の際に発現する接着分子(LFA-1,VLA-4, Mac-1, etc.)や各種サイトカイン(IL-1β,IL-8,TNFα, RANTES, MIP-1α, etc.)の測定を中心に、びまん性汎細気管支炎の病態の本質に迫り、同疾患の完全なる克服を目標としている。
2.マクロライド系抗菌薬の抗炎症作用の解明
びまん性汎細気管支炎(DPB)の治療におけるマクロライド系抗菌薬の作用機序は、少量長期投与で効果を来たすことから、抗菌薬が持つ本来の抗菌作用ではなく、
1)細菌の産生する毒素や緑膿菌の持続感染に重要なバイオフィルム形成の抑制、
2)気道の粘液・水分泌の抑制、
3)気道内への好中球集積の抑制、
4)細気管支領域へのリンパ球集積の抑制及びリンパ球から産生されるサイトカインの抑制、
5)マクロファージ系の機能亢進、などの抗炎症作用が考えられているが、詳細については不明である。我々は、この作用機序を解明し、マクロライド系抗菌薬の無効なDPB患者の治療法を開発すると同時にマクロライド系抗菌薬の新しい使用法について検討したいと考えている。
3.びまん性肺疾患の気管支肺胞洗浄液の解析
気管支肺胞洗浄(BAL)法は、特発性間質性肺炎やサルコイドーシス等のびまん性肺疾患の病態生理の研究のみならず、その診断・治療の適応と評価・予後判定のために極めて、有用な検査法である。そこで我々は、同法を用いて、総細胞数算定・細胞分画・リンパ球サブセット算定・サイトカインを中心とした液性成分を分析し、診断・治療に役立てると共に各種疾患の病態解明の一助としている。
4.特発性間質性肺炎の病態解析−ストレス蛋白質の観点より−
外科的肺生検組織を用いて、コラーゲン特異的結合分子シャペロンであるheat shock protein (HSP)47の発現を検討しており、興味ある結果が得られつつある。この検討を基盤に、線維化抑制を目的とした、HSP47を標的とする治療法の開発に全力を挙げている。 |
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