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留学だより
 
泉川 公一  2009年4月〜9月 米国国立衛生研究所 (アメリカ メリーランド州)

「2回目のNIH留学」
感染症グループ 泉川公一

 2009年4月から半年間、河野教授のお許しを得て、再び、NIHに留学させて頂きました。前回の留学(2000〜2003年)では、真菌に限らず感染症領域で偉大な臨床家でもあるDr. John Bennettのもとでカンジダの薬剤耐性研究を行いました。今回は、その双璧をなすDr. Kwon-Chungのもとでアスペルギルスの研究を行ってきました。このお二人は、1970年代より長きにわたり、現在の真菌症の基礎、臨床研究の礎を築きあげられた偉大な学者です。70歳を超えた今でも、矍鑠とまた溌剌として、臨床、研究指導を行っておられます。
 奇しくも前回留学時と同じ場所に、机と実験室を与えられました。とにかく、時間が限られていることから、できるだけのことを吸収しようと、朝は7時から実験をはじめ、帰りは、ラボのメンバーが全員いなくなることを確認して帰宅しておりました。アスペルギルスの病原性の一つであるメラニン産生能のネットワークを解明することがメインテーマでありましたが、壮大なプロジェクトでもあり研究を完遂することより、アスペルギルスを扱う上でのmethodologyやmanipulationの習得に努めました。同時に、新たなプロジェクトとして、Aspergillus terreusを材料にした薬剤耐性に関するプロジェクトも立ち上げましたが、これは、長崎でも続けていきたいプロジェクトであります。残念ながら、形に残る業績は出せませんでしたが、ラボにフィードバックできる材料と知識は身につけることができたと思っております。

(ラボのマイステーションとアスペル師匠・Janyce Suguiと)

 私生活では、半年という期間であったため、妻子を連れて行くことは断念しました。当初は、久しぶりの一人暮らしを楽しみにしておりましたが、気楽だったのは最初の2週間程度で、その後は、掃除も、食事も、洗濯も面倒でした。一日に朝と夜、2回風呂に入る私は、そのたびに下着を替えるのですが、洗濯が面倒なため、1週間に1度で済ませるために下着を14枚揃えました(家内から叱られましたが)。また、普段は騒がしい子供達も、いなくなると寂しいもので、週末の風呂タイムは、skypeで実況中継しながら、子供達と話しながら入るというかなり怪しい行動もしておりました。不注意でコンピュータのキーボードに水をこぼしてしまい、skypeができなくなったときは、不覚にも泣きそうでした。
 2回だけ、心から楽しめることがありました。一つは、タイガーウッズのプレイをナマで観たことです。2010年現在、タイガーは“だらしのない男”に成り下がっていますが、当時は、その圧倒的なオーラと集中力、ここ一発の強さなど、まさに超人でした。ゴルフコースにて最大至近距離で1メートルまで近づけましたので、鼻腔を思い切り拡げ、彼の発散する空気や、分子!?を可能な限り吸収してみました。結果、ゴルフのスコアが驚異的に伸びたと言いたいところですが、相変わらず100前後をウロウロしています。一方、仕事で、集中力、ここ一発の強さが発揮できれば嬉しいですが、“だらしない分子”だけ吸入したとしたら、お先真っ暗です。
もう一つの楽しい思い出は、帰国直前に夏休みをもらい、2泊3日でフロリダ最南端のキーウエストに旅行に行ったことです。フィラデルフィアに留学中の中村茂樹先生と現地でおちあうロマンチック!?な旅でした(キーウエストは全米でも有名なゲイタウンでした)。この旅で私は、マイアミからバイカーに人気のあるキーウエストまで約350kmをバイクで南下するという冒険をしました。日本では原付しか乗れない私が1300ccのハーレーダビッドソンに乗って、しかも1人旅です。家族全員とラボのメンバーに反対され、決心が揺らぎましたが覚悟を決めて決行しました。いきなりスコールが降って全身びしょぬれになったり、路面が滑って転びそうになったり、無事にキーウエストに到着したときの達成感は想像以上のものがありました。小さなアジア人が大きなバイクに跨っている姿は、相当滑稽だったに違いありませんが、大声でサザンオールスターズの歌を歌いながらの1人旅は生涯、忘れられない思い出になりました。

(ゲイタウンでのツーショット 中村茂樹先生と)

 帰国してから、あっという間に半年が過ぎました。今回の留学は、いまや、遠い昔のような気がします。第二内科のモットーでもある勉強も、遊びも一生懸命に。それを実践した留学生活でありました。今回のような新たなチャンスを与えてくださいました河野教授、ならびに快く送り出してくださった諸先輩や後輩の先生方に熱く御礼申し上げます。
 また、NIHで偉大な二人の学者に師事できたことを、本当に幸せに思います。この貴重な体験をもとに、感染症グループの業績を伸ばすことを肝に銘じ、正道一心、頑張りたいと思います。

国立大学法人 長崎大学