動脈硬化・虚血性心疾患グループ
 従来、前村教授は、特に基礎医学の観点から、血管内皮機能に関わる種々の因子(Endothelin 1、endothelial PAS domain protein 1など)の研究に携わってきました。
 現在、臨床的に血管内皮機能の評価法として、比較的簡敏で侵襲の少ないFMD(Flow-mediated dilation: 前腕血管内皮依存性血管拡張反応)やEndo-PAT(Peripheral arterial tonometry)を用い、炎症性、酸化ストレスマーカーとの関連や心血管系イベント発症などとの関連について検討しています。
 急性冠症候群は冠動脈内の不安定な動脈硬化巣(プラーク)の破綻に起因する病態です。その機序には、炎症や酸化ストレスが関連することも示唆されています。そこで血管内超音波(IVUS: Intravascular ultrasound)や光干渉断層法(OCT: Optical Coherence Tomography)を用いて冠動脈病変の形態を調べ、急性冠症候群の発症予測できるバイオマーカーを検討し、すでに国際学会等にて発表しています。
 さらに、臨床的に有用な新規の酸化ストレスマーカーを開発すべく、幹細胞生物学研究分野(旧 原研生化)教室と共同で、グルタチオニル化蛋白を指標とした検討を行っています。
 また、2016年7月より、当院における 経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI: Transcatheter Aortic Valve Implantation)がはじまりました。

Endo-PATによる血管内機能測定

不整脈グループ
 従来から、心房細動の臨床研究を行っていました。糖尿病患者では難治性の心房細動が多いことから、糖尿病の有無で心房細動の頻度や発症様式、薬剤の効果など違いをペースメーカーなどの植え込みデバイスを使用して詳細に検討してきました。インスリン抵抗性がある患者で、心房受攻性の違いがあるか、心臓電気生理学的指標をもとに検討してきました。
 また、ペースメーカーによる右室ペーシングで心機能が悪化し、その治療として両室ペーシング(Cardiac Resynchronized Therapy: CRT)へのupgradeが必要になる症例がありますが、その悪化を惹起する要因なども検討中です。
 QT延長症候群、Brugada症候群、早期再分極症候群といった致死的不整脈に関しては、内臓機能生理学分野の蒔田直昌教授と御協力のもと遺伝子解析を行っています。
 2016年7月からは、心房細動に対する冷凍カテーテルアブレーション(クライオバルーンアブレーション)がはじまりました。



心エコーグループ
 肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術(BPA)の前後の詳細な右室機能評価、低心機能症例に対するDyssynchronyの評価やCRT(心臓再同期療法)植え込み後の最適化の評価を行っています。僧帽弁形成術、大動脈弁形成術(David手術)、経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)前の機能・形態の評価を綿密に行い、心臓血管外科と合同で検討します。手術にも立ち会い、3D 経食道心エコー図を用いた評価を行っています。

超音波センターにおける心エコー検査と、2Dおよび3D心エコー画像

肺循環グループ
 従来、肺高血圧の重症度を非侵襲的に検出する方法などを臨床的に検討してきました。そのため、他施設に比べ肺高血圧症患者が多く、肺高血圧症に対する各種薬剤の治験も行っています。現在は新薬を用いて運動耐容能や肺循環諸量の変化の検討などの臨床研究を主に行っています。また本邦における肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドラインの作製に当科の先輩が携わっていた経緯もあり、引き続き、深部静脈血栓症に関する臨床的検討も行っています。


高血圧・時間生物学グループ
 我々の行動や生理機能には概日リズムが存在し、生物に内在する体内時計により調節されています。最近、体内時計の分子機序が明らかになったことにより、時計遺伝子を変異したマウスが相次いで作成され、これらのマウスでは体重増加の異常や、血圧の異常、血管内皮機能の異常などを来すことが相次いで報告されています。また、生活習慣病の発症には過食、運動不足など、主に食事の量や運動の量が問題にされて来ましたが、夜間シフトワーカーでの心血管病の増加など、食事、運動、睡眠などの生活リズムも、その発症に関与していることが明らかになりつつあります。このように心血管疾患の発症における体内時計の意義が基礎および臨床面から注目されつつあります。我々は従来の研究により、体内時計を構成する時計遺伝子の1つ、そして心臓や血管などにも体内時計が存在することを発見しました。




 体内時計を考慮した薬物投与法は時間治療学と呼ばれ、癌治療では同じ抗癌剤投与でも投薬時刻により効果と副作用の発現が大きく異なることが知られています。そこで降圧薬の投与時刻の血圧日内変動への影響、臓器保護効果への影響について検討しています。
 さらに多施設共同研究として、さまざまな基礎疾患をもつ患者で、最も適切な降圧薬の組み合わせを検討しています。
 DEJIMA:「2型糖尿病患者におけるARBを基礎薬とするARB/Ca拮抗剤併用療法の比較検討」
 NICE-C(COMBINATION)「降圧療法におけるARBの増量と通常用量のARBと利尿剤の併用との臓器保護効果の比較検討試験」
再生医療グループ
  体制幹細胞を用いた再生医療は大きな注目を浴び、その中でも脂肪組織由来幹細胞は簡便かつ豊富に採取できることより最も臨床応用が期待されています。 すでに当院形成外科では既に脂肪由来幹細胞を用いて、放射線皮膚潰瘍の治療を行っていますが、当教室でも心筋梗塞や慢性閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性の虚血病変への臨床応用をめざして、マウスの脂肪を用いた基礎的な研究を行っています。

脂肪由来幹細胞を用いた実験
疫学グループ
  日米両政府が出資する放射線影響研究所では、終戦後から今日に至るまでの長期間にわたって、原爆被爆者の健康調査が行われています。当教室は放射線影響研究所と協力して、原爆被曝線量と被爆者の心臓血管疾患の罹患率、冠動脈危険因子との関係、脂肪肝を含めたメタボリックシンドローム構成因子との関係、また遺伝性不整脈疾患(QT延長症候群・QT短縮症候群・Brugada症候群)との関係など、幅広い疫学研究を行っています。

心臓リハビリテーショングループ
 医師、看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士などの多くの職種がチームとして連携をとりながら、心筋梗塞・心不全などで体が動きにくい状態からサポートを行い、社会復帰・再発防止を目指しています。
 落ち着いた慢性心不全の患者には1週間入院していただき運動療法指導、患者教育(家族も含めた栄養指導・生活指導・服薬指導・禁煙指導など)を行うプログラムも実施しています。

集団リハビリ 心リハカンファランス(毎週木曜朝)
運動心肺負荷試験(CPX)   集団リハビリ
運動心肺負荷試験(CPX)   集団リハビリ
重症心不全・補助人工心臓グループ
 従来の内科的・外科的治療では救命・延命が困難な重症心不全に対して、心臓移植が根本的な治療です。しかし、我が国における移植実施数は、欧米諸国等と比較して圧倒的に少なく、移植までの待機日数も長期に及びます。
 心臓移植手術を受けるためには、現時点で行い得る十分な治療をした上で、経過・各種検査結果から、移植が不可欠であると、施設内検討委員会および日本循環器学会心臓移植適応検討会の2段階の審査で適応を判定され、心臓移植の待機状態にならなければなりません。
 実際、登録日から移植日までの平均待機期間は1079.4日 = 約2年11ヶ月 (2017年3月31日までに心臓移植を受けた人)と長く、その間は機械的な循環サポートが必要です。その方法は、補助人工心臓(LVAD; Left ventricular assist device)です。LVADの種類は、体外設置型(体外式)のニプロVAD (旧TOYOBO-VAD)と、植込型のHeartMateⅡ(Thoratec社)、EVAHEART (サンメディカル社)、Jarvik2000 (センチュリーメディカル社)などがあります。
 当院は、2012年度植込型補助人工心臓実施施設へ認定されています。九州での心臓移植実施施設である九州大学病院と連携をとり、2018年6月現在、当科で8名の方が心臓移植待機中です。
 医師(当科、心臓血管外科、麻酔科)、看護師、臨床工学技士、理学療法士(心臓リハビリグループ)、リエゾンチームなど、複数の専門・職域のメンバーで協力して、集学的に重症心不全の治療を行い、合併症なく心臓移植待機ができるように努めています。

2013年3月末 病院玄関前でのお花見
*患者さんの許可を得て掲載しています。