長崎大学医学部附属動物実験施設 1982〜1983

ごあいさつ


科学の一分野である医学は、客観性のある実証を基にした教育、研究を通して進歩発展し、その成果を人類社会に還元してきました。 医学の対象が人である以上、そのモデルとしての実験動物が極めて重要な役割を持つことは衆目の一致するところであります。 動物実験もまた科学である以上、その実験材料や環境には他の実験に勝るとも劣らない精度管理が必要であります。 この為充分に統御された実験動物の供給及びその飼育・実験施設を動物実験に携わる教育研究者に提供する事は、単に研究者のためばかりでなく、広く社会的な意義をも併せ持っていると考えられます。 特に最近の急速な医科学の進展に伴い、精度の高い動物実験の必要性は以前にも増して高まってきました。 このような時に、10年来の念願であった動物実験施設が本学に完成したことは誠に慶ばしいかぎりであります。

当医学部では、これまで動物実験は個々の研究室、一部共同実験室内で行われて来ましたが、その環境や設備は充分とは云い難い状況でした。 約10年前から新しい動物実験施設の設置が要望され、懇談会、設置計画委員会等の検討を経て、昭和55年度設置が認められ、昭和56年3月に着工、昭和57年3月に完成し、10月開所のはこびとなりました。
  本施設は、医学部(含附属病院)、歯学部(含附属病院)、熱帯医学研究所の共同運営、共同利用施設でありますが、広く学内にも開放することになっています。 また当初の目的である "精度の高い動物実験" を行うべく設計されているのに加え、近年の社会情勢の推移に伴ない、運営の経済性、バイオハザード対策等の配慮もされています。 例えば雨水利用を含む中水循環装置空調設備の分散方式、感染実験室内の動物用各種安全キャビネットの採用等が挙げられます。 さらに本学の研究上の特色から、数多くの手術室があり、中・小動物行動測定観察室、特殊環境実験室等の特殊目的の為の実験室も設置されております。 しかし、本施設を生かすか否かは今後これを各分野の研究者がどれだけ活用し、成果を挙げるか否にかかっています。 多くの方々が充分に利用され医学の進歩に貢献する事を心から待望する次第であります。 現時点では機器類や設備はまだ充分整備されておりませんが今後とも施設の充実を図るため関係各位の御協力を切にお願いいたします。

本施設の完成に際し、多大の御理解と御協力を賜った文部省当局、大学当局、学内の関係者及び直接建設に関与された各位に衷心より御礼申し上げるとともに、 今後とも御援助、御協力を切望いたす次第です。

昭和57年10月

長崎大学医学部長 土山秀夫

附属動物実験施設長 宮本 勉