長崎大学医学部附属動物実験施設


           感染動物実験における安全対策 (案)

                      国立大学動物実験施設協議会 1987年5月

 医学生物学研究における実験動物への病原体の感染実験を対象とする。これと同様の危 険性が考えられるものとして病原性の高い病原体に自然感染している可能性が考えられる実験動物、特に野生動物を取り扱う場合も対象とする。

 安全度は1−4に分ける。これは人に対する危険性から分類されたものであって、試験管内実験におけるクラス1−4にほぼ相当する。実験動物間での伝播に特に注意を要する 環境での実験、すなわち、病原体による同居感染の可能性があるため、他の正常動物との隔離を特に必要とする場合には1ランク上げるものとする。(分類表中アスタリスク[*] で示す)。


標準操作手順及び設備基準

[安全度1]

 標準操作手順

  1. 感染実験区域内への飲食物の持込みまたは喫煙を禁止する。
  2. 動物飼育室内に手洗い装置を設け、作業後は手指の洗浄消毒を行う。
  3. 床敷交換などの作業時のエアロゾル発生を極力防ぐ。
  4. 使用済みケ−ジ等汚染器材は消毒または滅菌したのち洗浄する。
  5. 汚染床敷や動物由来排゚封ィは消毒または滅菌したのち廃棄する。
  6. 動物死体は焼却する。
  7. 動物飼育室内では専用の作業衣、長靴などを着用する。
  8. 動物実験関係者以外の立ち入りを制限する。

 安全設備

  1. 動物の飼育は脱出防止装置の付いたケ−ジ内でおこなう。

 動物飼育室の構造

  1. 感染実験区は他の区域と区別し、昆虫及びげっし類の侵入を防止する。
  2. 床、壁には耐水性でかつ消毒薬耐性の素材を用いる。
  3. その他は非感染動物飼育室の構造に準じる。

[安全度2]

 標準操作手順

  安全度1の手順に以下を加える。

  1. マスク、帽子及びゴムまたはプラスチック製手袋を着用する。
  2. 使用済みのケ−ジなど汚染器材や動物死体は高圧蒸気滅菌を行ったのち洗浄または焼却する。

 安全設備

  単純飼育時

  1. マウス、ラットの飼育にはケ−ジにフィルタキャップをかぶせる。

  飼育管理作業時及び接種・解剖作業時

  1. 高濃度のエアロゾルを発生する作業は、クラス、形生物学用安全キャビネットおよび感染動物用安全キャビネット、または感染動物用アイソレ−タ(A形、B形)内でおこなう。

   その他

  1. 感染実験区域内に高圧蒸気滅菌装置を設置する。

 動物飼育室の構造

  1. 安全度1に準じる。

[安全度3]

 標準操作手順

  安全度2の操作手順に以下を加える。

  1. 動物飼育は原則として実験担当者が行う。

 安全設備

  単純飼育時

  1. 動物の飼育は感染動物用安全キャビネットまたは感染動物用アイソレ−タ(A形)内でおこなう。

  飼育管理作業時及び接種・解剖作業時

  1. クラス、形生物学用キャビネットおよび感染動物用安全キャビネット、または感染動物用アイソレ−タ(A形)内でおこなう。

   その他

  1. 安全度2に準じる。

 動物飼育室の構造

  1. 動物室の窓は非開閉式にする。
  2. 動物飼育室内は陰圧に保ち、準備室、飼育前室から動物飼育室内へ空気が流入する一定方向気流方式の空調を行う。
  3. 停電時対策を考慮する。
  4. 動物飼育室からの排気は高性能フィルタで濾過したのち放出する。
  5. 感染実験区域の入口にはエアロックまたは二重ドアを設置する。
  6. 配管貫通部を塞ぎ、動物飼育室内のホルマリンガスによる燻蒸消毒が可能な密閉 構造とする。

[安全度4]

 標準操作手順

  安全度3の操作手順に以下を加える。

  1. 隔離区域から出る際にはシャワ−を浴びる。

 安全設備

  単純飼育時、飼育管理作業時、及び接種・解剖作業時

  1. 動物飼育実験はすべて完全密閉のグロ−ブボックス型安全キャビネット内で行う。この安全キャビネットには両面高圧蒸気滅菌装置、消毒薬槽(ダンクタンク)及び二重扉の器材搬出入口を設ける。
  2. 使用済みケ−ジ、器材、実験試料、動物死体はすべてグロ−ブボックス型安全キャビネットに取り付けた両面高圧蒸気滅菌装置で滅菌したのち取り出す。動物 死体はさらに焼却する。
  3. 病原体試料は完全密閉の小型容器にいれ、消毒薬槽を通して表面を消毒したのち取り出す。
  4. 動物や試料の搬入は器材搬出入口を通して行う。この際、二重扉間の空気は過酢酸等で滅菌する。
  5. 実験室とサポ−ト域の間に実験器材の搬出入用として両面高圧蒸気滅菌装置及び 両面ガス(エチレンオキサイドまたはホルマリン)滅菌装置を設ける。

 動物飼育室の構造

  1. 独立した建物として、隔離域とそれを取り囲むサポ−ト域を設ける。
  2. 壁、床、天井はすべて耐水性かつ気密性のものとし、これらを貫通する部分(給排気管、電気配線、ガス、水道管等)も気密構造とする。
  3. 作業者の出入口には、エアロックとシャワ−をもうける。
  4. 実験室内の気圧には隔離の程度に応じて差を設け、高度の隔離域から低度の隔離域へ、また低度の隔離域からサポ−ト域へ空気が流出しないようにする。
  5. 実験室への給気は、1層のHEPAフィルタを通す。実験室からの排気は2層のHEPA フィルタを通して外部に出す。この排気滅菌装置は予備を含めて2組設け、ウらにその場において滅菌可能な構造とする。
  6. 実験室からの研究排水は 120℃ 加熱滅菌し、冷却したのち、一般下水へ放出する。

動物実験における病原体の安全度分類

  注)本分類は参考資料としてまとめたものであり、その運用に当たっては各施設の判断に任せるものとする。