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ホーム九州法医学ワークショップ平成23年3月5日ー3月6日 >久留米大学:神田芳郎 先生(教授)


ハプトグロビン遺伝子欠失~ 研究から学んだこと~

久留米大学  神田芳郎 MOVIE
久留米大学
神田 芳郎

 今回医学部の学生諸君に法医学研究について話をする機会を頂き、どんな内容にすべきか悩んだ末、携わってきた幾つかの研究のうち血清蛋白であるハプトグロビン(Hp)の研究を紹介することにした。
 法医学領域では遺伝マーカーを用い親子鑑定をおこなってきたが、検査項目の一つであるHpでのみ親子関係が成立しない親子鑑定例が散見されていた。こうした家系の遺伝解析の結果、Hp遺伝子が全長欠失した対立遺伝子(Hpdel)を見出し、矛盾した親子関係の謎を解くことが出来た。研究はここでひとまず完結したものと考えていた矢先、他分野の研究者からアプローチを受け、Hpdelが重篤な輸血副作用の原因の1つであることを示した。さらに遺伝子欠失の切断点を同定したことにより、煩雑なサザンブロット法で解析せざるを得なかったHpdelのPCR法による診断法を開発することができた。さらに、副作用回避を目的とした輸血前診断の臨床応用を目指して、リアルタイムPCRやLAMP法といったより簡便で迅速な新たな診断法の開発へと研究が広がった。
 Hpdelは小さな発見ではあるが法医学の実務から生まれた仕事であると自負している。また研究を遂行する中で、諦めずに続けること、共同研究者の有難味、情報を外部へ発信することの重要性など、多くのことを学ぶことが出来たことが今回題材として選んだ理由である。一方でこの仕事は少なくとも私の経験上順調に発展したまれな例で、概して研究とは地道な作業と挫折の連続であるが、その挫折と戦い、苦悩の末には必ずや成果は生まれるものであると信じ現在も日々もがきながら取り組んでいるつもりである。
 最終目標である法医実務に役立つ研究を常に意識し目指すことは重要で、法医学に携わる先生方は多忙の中、日夜研究に励んでおられいつも良い刺激を頂いている。法医学の研究の間口は広く、あらゆる研究が対象となる。学生諸君には是非とも法医学を志して頂き、法医学の垣根を越えて世界に成果を発信して頂きたい。

 
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