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ホーム九州法医学ワークショップ平成23年10月8日ー 10月9日 >秋田大学:美作宗太郎 先生(教授)


子どもを虐待から救うために法医学者には何ができるのか?

  秋田大学
美作 宗太郎

 平成22年度に全国の児童相談所で対応した児童虐待相談対応件数は、過去最高の55,152件(速報値:宮城県、福島県、仙台市を除く)に及んだ。マスコミの報道をみても、周囲の人々が虐待を疑い児童相談所が介入していながら、保護される機会を失ったために法医解剖台に上る子どもが後を絶たない。実のところ、児童相談所が虐待判断あるいは一時保護する際に、虐待の証拠を掴むのに苦労しているといい、証拠の乏しさから保護者等からクレームが来ることもあるという。損傷を見つけて病院で診察を受け「臀部に打撲傷、全治3日間」等と記載された診断書があっても、虐待の証拠とするのは難しいのである。
筆者は平成16年から児童相談所から損傷検査(生体検査)を依頼され、主に一時保護された子どもの損傷の診察を担当してきた。児童虐待にみられる頻度が高い損傷として打撲傷があり、特に新旧混在する打撲傷は継続的な身体的虐待を証明する上で重要である。しかし、従来から新旧混在する打撲傷の診断は、検査者の経験に依存していて客観性に乏しく、受傷後経過時間を推定することは難しかった。そこで、筆者らは分光測色計で色の変化を数値化して、受傷後経過時間の推定に結び付ける研究を行っている。また、打撲傷を形成する皮下出血を超音波診断装置で観察して経時的な変化をみる研究や、陳旧打撲傷を紫外線撮影で可視化する研究を試みている。
 いかなる検査機器を導入しても、損傷が虐待によるものか否かを機械で判別できるわけではなく、法医学者は児童相談所に虐待判断の材料を提供するに過ぎない。しかし、児童相談所にとっては法医学者による損傷検査への期待は大きく、法医学者が解剖で培った損傷の評価や成傷器を推定する能力を生体検査に応用することにより、児童相談所と連携することが求められている。虐待された子どもを救出する手掛かりの科学的証拠を探るために、今後も臨床法医学的研究を継続したいと考えている。


 
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