私が法医学を選んだ一番の理由は、単純に興味があるからです。
元々祖父が医者だったこともあり、小さい頃から人々の役に立つ立派な医師になりたいという気持ちはありましたが、独りで黙々と行う作業を好む性格上、臨床よりも研究に向いてるだろうと漠然と思っていました。
法医学との出会いは高校生の時で、死因を追求していく行動・過程に興味を持ちました。それ以降実際に監察医や法医学者の方々の書かれた書物をみていく内に、実際の状況と一般向けのフィクションの物語との違いを知り、人手が全然足りないこと、死因究明にも限界があることなどを知るにつれて、興味が増していき、実際にこの分野に身を置いてみたいと思うに至りました。
現在は琉球大学医学部を卒業後、地元である宮崎県の大学病院で二年間の臨床研修を経て、今年の四月に法医学教室に大学院生として入ったばかりです。初期研修中は研修医として死に立ち会ったこともありますが、末期状態で家族に看取られ亡くなった方もいれば急患や急変で診断も付かぬまま亡くなった方もいます。特に後者の場合、遺族の方々は驚き、戸惑い、悲しみ、疑問など様々な感情が交錯した状態です。病院側も満足な説明ができず申し訳なく悔しい思いをしたこともあります。そんな時、せめて充分な説明ができれば遺族の方々も事実を受け入れて故人の死を悼むことができるのでは、と特に死因究明の必要性を感じました。
多くの学生は患者を救いたいという意志を持って医学部に入り、講義や臨床実習、初期研修のなかで自分の進むべき専門分野を決めていきます。その中で基礎を選ぶ学生は稀で、中でも法医学ずいぶん特殊な分野ということもあり、周りから反対されたり不審な目でみられたりもしばしばですが、社会に必要な分野であり、そもそも一番興味のある分野なので、法医学の世界に身を置くことに何ら抵抗はありませんでした。これから法医学の立場で自分が社会に貢献できたら幸いです。
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