はじめに |
新たな法医学のキャリアパスへの期待
― 死因究明2法の成立を受けて |
わが国の死因究明制度、特に死因究明を目的とする解剖制度は、司法解剖と監察医解剖に大きく分けられます。しかし、監察医制度は、政令で定められた東京都23区、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市の5地区に限られています。言い換えれば、日本の死因究明制度は、犯罪性がない場合は、対応できない制度となっています。日本法医学会は、犯罪性がない死体であっても、死因が不明な場合は、解剖して死因を究明する制度の重要性と必要性を、長年、訴えてきました。この間、犯罪死見逃し事例の発覚、司法解剖の急激な増加、東日本大震災による大量災害死の発生等、社会情勢が変化してきたことを受けて、死因究明制度の法制化の動きが活発化し、今年6月22 日、念願であった死因究明2法が成立し、来年から施行されることになりました。
死因究明2法とは、具体的な死因究明の方法を定めた「警察等が取り扱う死体の死因又は身元調査等に関する法律(実施法)」と死因究明の環境整備を定めた「死因究明等の推進に関する法律(推進法)」です。実施法により、犯罪性がない死体であっても、また遺族の同意がなくても死因究明の必要がある場合には、解剖が出来ることになりました。しかし、実際に専門知識を有する法医学の医師が検案、解剖するには、現状のままでは、負担が増えるだけ、解剖が増えるだけに終わってしまいます。そこで推進法で、死因究明を推進するための必要な施策を定めることになっています。必要な施策の中には、当然、死因究明を実施する施設や人材、予算等の整備が含まれます。
私たちは、近い将来、法医学の専門性を発揮できる新たな機関やポストが確保できるものと大いに期待しています。
ワークショップの機会に、法医学に興味を持つ医学生の皆さんに、将来のキャリアパスへ繋がる新たな死因究明制度を紹介します。 |
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