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山口大学大学院医学系研究科 法医・生体侵襲解析医学分野
白鳥 彩子 |
某県道上で発生した普通自動車の単独自損事故事例を提示した。事例の概要は以下の通りである。普通乗用車が時速約100kmで街路灯に衝突した後、前後二つに分断し、それぞれ離れた場所に停止した。乗車していた3名全員が車外に放出され、男女1名ずつは程なく死亡確認され、男性1名は重傷を認めたものの生存した。車両所有者は死亡した男性であった。生存男性は、運転していたのは死亡男性と主張していた。死亡者2名の死因究明とともに、各人の乗車位置の推定のため司法解剖が行われた。
本会では、問題編で事故様態や車両の損傷、死亡者2名の損傷を中心とした解剖所見を提示・供覧し、担当グループには死亡者の死因、そして各人の乗車位置の推定を討論してもらうこととした。発表では、各グループともに直接死因については概ね妥当な解答が導かれていた。しかし、死亡者の損傷が高度な上に非常に複雑であったため、乗車位置の推定は困難であったようである。解説編では、運転者であった場合に受傷しうる損傷であるかの判断結果や、車両損傷や事故状況を勘案した乗車位置に推定結果を説明するとともに、事故現場や損傷車両内に認められた皮膚片や着衣片の鑑定結果などを新たに提示し、最後 各人の乗車位置の正解を発表した。
本事例は学生らにとっては難解であったと思われるが、本症例クイズを通して、交通事故損傷の鑑定の重要性や面白味も感じてもらい、法医学への興味をさらに増してもらえたならば本望である。
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