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ホーム九州法医学ワークショップ平成29年11月3日ー11月4日>弘前大学:高橋識志先生


SESSION 6 特別セミナー2 「法医病理学を学ぼう パート2」
法医で病理をなぜ/どう読むのか?

  弘前大学大学院医学研究科法医学講座
高橋 識志 先生

 法医学の人間が病理組織を読む,というと,どんなイメージを持たれるでしょうか.「腐敗した遺体が多いから,みてもしょうがない」,「損傷死だったら,顕微鏡見なくても死因はわかるんじゃない?」,「病死の組織は,病理医の先生にちゃんとみてもらったら?」などのネガティブなコメントがつきそうです.
 確かに法医学の領域で遭遇する遺体は,肉眼だけで,個々の所見の有無や重症度などが,ある程度判明することが多いのですが,中には微妙なケースもあります.この際に,病理組織所見を補助的に使うことで,見通しがかなり良くなります.これまでに,1)出血(生活反応)の証明,2)疾病の発症,あるいは外傷の受傷から死亡までの時間経過の推定,3)重症感染症の症例における,グラム染色標本を用いた起炎菌の推定などを経験してきました.
 特に時間経過の推定は,病理よりもむしろ法医に要求される読み方かもしれません.殺人/傷害致死や医療関連死といった「危ない」症例で問われることが多いため,重要です.病理学総論(特に循環障害・炎症)の知識を動員して行うことになりますが,教科書にそのままの所見が記載されていることはまずありません.司法サイドはなんとか犯人を絞り込めないかと,状況情報をいろいろ教えてくれますが,あくまでも組織所見のみを根拠にして,個人差を考慮しつつ,幅を持った推定を行わないと危険です.
 感染症死亡例は,保健所への届け出,司法関係者への注意喚起など,公衆衛生的な対応がときに必要とされますが,顕微鏡所見を活用することで,迅速な対処が可能になります.
 また肉眼上,死因の決め打ちができないような症例でも,顕微鏡所見から確定診断が可能なことがあります.外傷後の脂肪塞栓症候群や,肉眼上,凝血と区別が困難な動脈血栓症などがその例です(後者については,最終的に誤診を防ぐことができました). 
 試験勉強の後遺症で,顕微鏡検査に苦手意識を持っている学生さんも多いことと推察しますが,法医学の分野においては,病理学と同様,診断に必須の武器と考えられますので,食わず嫌いをしないで標本を読んでみてください.私は,プレパラートから新たな情報が得られる瞬間,曇り空に陽光がさすような,爽快な気分になります.「好き者」が一人でも増えることを願っています.
 
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