疫学的解析-分子疫学(衛生)
 
助教授:中込 とよ子
<プロジェクト>

1. ロタウイルス感染とのかかわりにおける腸重積症の疫学
  私の研究の中でロタウイルスの歴史にもっとも大きなインパクトを与えたのはロタウイルスがアデノウイルスと同様に腸重積の原因となっていることを報告した初期の論文である(Konno, T., Suzuki, H., Kutsuzawa, T., Imai, A., Katsushima, N., Sakamoto, M., Kitaoka, S.: Human rotavirus and intussusception. New England Journal of Medicine, 297, 945, 1977)。この研究は追試確認されることはなかったが,20年以上たって最初のロタウイルスワクチンであるRotashield が腸重積を起こすことが確認されたときに再度注目を集めた。腸重積を起こすワクチン株があるとすれば,腸重積を起こす野生株があってもおかしくないと思われる。次世代のロタウイルスワクチンの安全性に関する最大の懸念は腸重積を起こすかどうかである。この点から見て非常に重要なのは,腸重積症の発生頻度は人種,地域,時期などにより異なること考えられており,小児とくに乳児における腸重積症の発生頻度をワクチン開始前に正確に把握しておくことである。
   
 
  1. Nakagomi, T. Rotavirus infection and intussusception: a view from retrospect. Microbiology and Immunology 44, 619-628, 2000.
  2. Nakagomi, T. Intussusception and an oral rotavirus vaccine. New England Journal of Medicine, 344: 1866, 2001
  3. Nakagomi, T., Takahashi, Y., Arisawa, K., Nakagomi, O. A high incidence of intussusception in Japan as studied in a sentinel hospital over a 25-year period (1978 ? 2002). Epidemiology and Infection (in press).
   
2. ロタウイルス感染症の急性期における抗原血症の解明
  ロタウイルスワクチンの安全性に関する新たな懸念が出現した。それは典型的な局所感染症と思われていたロタウイルス感染症で,その急性期に抗原血症がみられるという報告である。ロタウイルス感染症では脳症や肝炎をはじめとする腸管外病変が起こることが知られており,その機序は不明である。ウイルス血症が起こるとすればロタウイルスの血行性伝播が可能性として出てくる。さらに,これが事実とすれば,ワクチン株でも抗原血症が起こるかどうかという疑問が出てくる。緊急にかつ慎重に取り組むべき重要課題である。
   
  1. Nakagomi T, Nakagomi O. Rotavirus antigenemia in children with encephalopathy accompanied by rotavirus gastroenteritis. (submitted for publication)
 
3. ロタウイルス感染症の疫学:罹患率と疾病負担の解析
  1. Nakagomi O, Koshimura Y, Nakagomi T: Rotavirus vaccine in Japan and Australia. Lancet 353: 1275, 1999.
  2. Nakajima H, Nakagomi T, Kamisawa T, et al.: Winter seasonality and rotavirus diarrhea in adults. Lancet 357: 1950, 2001
  3. Nakagomi T, Nakagomi O, Takahashi Y, Enoki M, Suzuki T, Kilgore PE. The incidence and burden of rotavirus gastroenteritis in Japan as estimated from a prospective sentinel hospital study. Journal of Infectious Diseases (in press).


医学部業績集:
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/med/intro/gyoseki.html