聴覚・平衡センター

1.目 的
 長崎大学耳鼻咽喉科は現在までに難聴診療で国内トップレベルの実績を上げていますが、これをさらにより専門的で有機的なチーム医療として推進するために、2008年に聴覚・平衡センターを立ち上げました。本センターはほぼすべての難聴に対応できる総合的な診療体制を整えることにより、患者さんへのより良質な医療サービスを提供し、同時に次世代に向けて意欲的に難聴診療のスペシャリストを育成することをめざすものです。
2.組織構成
現在の組織構成は次の通りです。
センター長 髙橋 晴雄 (長崎みなとメディカルセンター)
副センター長 神田 幸彦 (神田E・N・T医院、長崎大学臨床教授)
事務局長 北岡 杏子 (耳鼻咽喉科)
スタッフ 原 稔 (耳鼻咽喉科)
木原 千春 (耳鼻咽喉科)
佐藤 智生 (耳鼻咽喉科)
小路永 聡美 (耳鼻咽喉科)
森 彩加 (耳鼻咽喉科)
山野辺 滋晴 (共立耳鼻咽喉科)
連携診療科 第一内科 (川上 純 教授)
産婦人科 (増崎 英明 教授)
脳神経外科 (松尾 孝之 教授)
放射線科 (上谷 雅孝 教授)
小児科 (森内 浩幸 教授)
眼科 (北岡 隆 教授)
精神科神経科 (小澤 寛樹 教授)
Otology Center (耳科学センター)
主任:高橋 晴雄
 ほぼすべての難聴を伴う耳疾患の治療戦略を後述のような各部門との連携により綿密に構築し、最良の治療を行います。とくに鼓室形成術では、個々の症例の中耳生理機能を十分に考慮した独自の術式を採っているため、手術後の長期的に安定した聴力獲得が特徴です。さらに一部補聴器の機能を兼ね備えた特殊な人工内耳(Electroacoustic stimulation: EAS、信州大学耳鼻咽喉科との共同研究)や埋め込み式補聴器(Vibrant sounbridge: VSB)などの先進的医療の臨床応用も行い、保険収載の運びとなりました。
 一方、若手医師の手術手技の習得および向上のために毎年2回、2日間にわたり側頭骨手術解剖実習を行っています。その他、手術中の顕微鏡モニター画像の転送設備が整っており、手術の状況を主任はじめスタッフ全員が共有できるようになっていて、教育やリスクマネジメントのうえで非常に有用です。
Hearing Aid and Cochlear Implant Center (HACIC)
(補聴器・人工内耳センター)
主任:神田 幸彦
 主に小児の先天性難聴に対して早期に補聴器適応、器種決定、フィッティング、また人工内耳の適応決定も行っています。また症例により小児科と協力して遺伝性難聴のカウンセリングも行っています。さらに前述のEASやVSBなどの先進的聴覚機器の臨床応用も進めています。
 補聴器を装用した後や人工内耳の手術前後には聴覚リハビリテーションを行っています。特に小児では両親・養育者が望んだ場合、聴覚や音声言語の発達を促進させる療育方法を積極的に進めています。その他成人に関しても加齢などあらゆる原因の難聴の診療もしています。
Neurotology Center (神経耳科学センター)
主任:吉田 晴郎
 脳機能画像(ポジトロン断層検査:PETなど)による脳の聴覚中枢、言語中枢の解析を行い、聴覚の正常生理、難聴者での病態生理の分析から、先天性難聴に対する人工内耳の適応基準の確立などを目指しています。
 またメニエール病、良性発作性頭位めまい症などすべての平衡機能障害とそれに伴う聴覚障害に対する診療を行います。めまい・平衡障害は神経内科的疾患や精神科的疾患に起因するものも多いので、これらについては関連領域の診療科の協力のもとに包括的・統合的に診療を行っています。
Oto-Neuroradiology Center (耳科画像センター)
主任:原 稔
 側頭骨の画像診断、とくに手術的にアクセスの難しい部位の病変を三次元的に把握して手術戦略を検討したり、ない次期敬礼などの蝸牛の微細構造を最新の方法で詳細に解析して難聴の原因を明らかにする研究も行っています。
Newborn Hearing Screening Center (新生児聴覚スクリーニングセンター)
主任:神田 幸彦
 長崎県では、全国に先駆けて平成15年度より新生児聴覚スクリーニングを行っており、近年ではその県内の普及率は95%前後を保っていて、これは全国でトップレベルです。それにより早期に診断された多くの難聴児とその両親の療育指導、補聴器適合、コンサルティング、さらには人工内耳の手術などをこれまで行ってきており、先天性難聴の早期診断・治療がきわめて組織的に行われています。将来的には早期発見、予防によるこれらの疾患の根絶を目標にしています。
 さらにこれまでの膨大なデータから、先天性難聴の疫学的解析、先天性サイトメガロウィルス感染症との関係(小児科と連携)、難聴遺伝子の診断(信州大学との共同研究)などの臨床的研究を行っています。
 また、医師だけでなく長崎県下のすべての聴診療従事者の診療レベルの向上のために、毎年「長崎小児難聴研究会」を開催して全国の著名な難聴診療専門家を招待して講演会を行い、さらに数年に一度市民講座も開催して一般市民に対しても啓蒙活動を行っています。
Basic Research Center (基礎研究部門)
主任:北岡 杏子
 現在の基礎的研究課題は下記のように多岐にわたっています。その他毎年海外からも著名な研究者を招聘して研究会を行っています。

 研究課題:
 ・各種内耳奇形での内耳立体構造と難聴の機序解明
 ・真珠腫の遺伝子レベルの病因と病態の解明
 ・内耳におけるステロイド受容体の発達と変換酵素の意義
 ・中耳感染(中耳炎)での中耳陰圧化の機序解明
 ・乳突蜂巣の発育と抑制の機序の細胞生物学的機序の解明
3.国際交流
海外との国際交流や国際学会の開催等にも力を入れています。

シーボルト記念人工聴覚器シンポジウム
(Siebold Memorial Symposium on Hearing Implants)
 髙橋晴雄センター長とドイツ・ミュンヘン大学耳鼻咽喉科Joachim Muller教授との親交から、2006年に人工内耳をはじめとする人工聴覚器の最新の知識・研究成果の交換を目的とした第1回シンポジウムが長崎で行われたのを皮切りに、これまで長崎とドイツで交互に9回行われ、学術交流を深めています。
2007年シンポジウム終了時の写真
2007年シンポジウム終了時の写真


第9回国際真珠腫・耳科手術学会
(The 9th International Symposium on Cholesteatoma and Ear Surgery)
 30年以上の歴史を持つこの学会を2012年6月3-7日に長崎で開催し、全世界から約600名の耳鼻咽喉科医や研究者が参加しました。中耳炎の中でも難治性で時に重篤な合併症をきたす真珠腫性中耳炎の病因、病態、診断、治療など、多岐にわたる研究成果が発表され、この分野の学術的発展に大きく貢献しました。
開会式での挨拶 開会式での挨拶