患者さんへ

耳鼻咽喉・頭頸部外科の病気
診療内容 [ 頭頸部外科学領域 ]
 頭頸部外科とは頭部・頸部を対象とした外科のことです。わかりやすく言いますと脳、眼球そのものから発生する疾患以外すべてを対象とし、手術を中心として治療に当たる外科領域となります。頭頸部外科の中心となる領域が頭頸部がん治療です。
 当科ではこれまでの治療成績より手術を中心としたがん治療を行っています。また頭頸部領域は咀嚼、嚥下、発声、構音など重要な機能を持っていますが、当科では可能な限りこれらの機能を温存する手術、さらに失われた機能を改善させる再建術を開発、導入しています。
 口腔外科との違いですが歯科口腔外科の治療範囲については平成8年6月28日の厚生省関係審議会「歯科口腔外科に関する検討会」で以下のように決定されています。

【歯科口腔外科の診療領域】
標榜診療科としての歯科口腔外科の診療領域の対象は、原則として口唇、頬粘膜、上下歯槽、硬口蓋、舌前3分の2、口腔底に、軟口蓋、顎骨(顎関節を含む)、唾液腺(耳下腺を除く)を加える部位とする。

【歯科口腔外科の診療領域における歯科と医科との協力関係】
 歯科口腔外科の診療の対象は口腔における歯科疾患が対象となるが、特に、悪性腫瘍の治療、口腔領域以外の組織を用いた口腔の部分への移植、その他治療上全身的管理を要する患者の治療に当たっては、治療に当たる歯科医師は適切に医師と連携をとる必要がある。

検討会の議事要旨の内容については日本医師会、日本歯科医師会等が会員に周知させていく。
詳しくはこちら→http://www1.mhlw.go.jp/shingi/0628-3.html


告知について
 当科では診断がついた時点でご本人、ご家族に告知することにしています。それは、ご自身のがんがどのようながんでどの程度の進行度であるのか、これから行わなければならない治療にはどのような種類がありどの程度の根治率と合併症があるのか、などをご理解していただくためです。最終的にはご本人、ご家族に治療法を決めていただくことになるのですが、できるだけ詳細な情報を共有するために、最終的には文書形式で告知を行っています。このことによりそれから始まる「がん治療」という共同作業が円滑に協力的に行われます。


頭頸部がんの種類
 頭頸部がんは主に以下のように発生部位別に分類されます。頭頸部領域は非常に複雑な構造、機能を持っていて、がんのできる部位がわずかにずれる、あるいは範囲が広がることによりがんに対する治療方法、治療効果、機能障害の程度が大きく違うため、正確に分類することが重要です。
1)聴器(耳)がん 2)鼻・副鼻腔がん 3)口腔がん  
4)上咽頭(鼻の突き当たり)がん 5)中咽頭がん 6)下咽頭がん
7)喉頭がん 8)唾液腺がん 9)甲状腺がん 10)頸部がん


当科における頭頸部がん治療
 頭頸部がん治療は根治治療(完全にがんを治す)方法として手術、放射線、化学療法(抗がん剤)が用いられます。他に免疫療法、遺伝子療法などがありますが、これらは単独での根治は期待できないのが現状です。当科におけるがん治療の方法と特徴について述べます。
a) 手術療法
 がん治療の基本的治療法です。体の一部にできた悪い部分を切除し、がんの部分を体外に完全に排除することを目的とします。頭頸部では特に言葉を発する発声機能、言葉を作る構音機能、食物を小さくする咀嚼機能、食物を飲み込む嚥下機能などの重要な機能があり、切除が大きくなればそれに比例して機能低下をきたします。当科では形成外科、再建班と共同で失われた機能を回復するために即時再建を積極的に行っていて、症例数は年々増加しています。2000年以降は年間30~40例に達しています。さらに治癒率を下げない喉頭温存手術も積極的に行っています。再建手術の場合、術後合併症、再建組織の生着が問題となりますが、当科では集中治療室で数日間の沈静期間を設けることにより合併症が軽減しています。

b) 放射線療法
 放射線は簡単に言えば原子爆弾の成分と同じです。つまりある一定の線量では悪性細胞を破壊し正常細胞を残すことができますが、限界を超えると正常細胞まで破壊してしまいます。ですから適応となるのは早期で小さながん、放射線感受性の高いがんに限定されます。また最近抗がん剤との併用により高い抗腫瘍効果を示すことがわかってきましたので、副作用に注意しながら多数の症例で用いられるようになってきました。当科では基本的に早期喉頭がんに対して機能温存を目的として放射線治療を行っています。さらに術後再発予防での放射線療法、進行がんで切除不能例に対して放射線と抗がん剤の併用療法を行っています。

c) 化学療法
 抗がん剤を内服、点滴、もしくは動脈内に投与することによりがん組織を死滅させる方法です。抗がん剤単独で治療することもありますが、先に述べたように放射線と併用することにより高い治療効果が期待されます。しかし併用すればそれだけ副作用も増強するため、年齢、合併症の有無などを十分に考慮して行っています。最近では再発予防として内服の抗がん剤を補助療法として用いています。


各部位のがんの特徴と治療

聴器がん
 外耳、中耳から発生するがんです。多くは耳をいじる習慣により難治性の皮膚炎を生じ、徐々に炎症部分ががん化することにより起こります。治療は側頭骨部分切除もしくは亜全摘などの手術と、放射線治療が行われますが、放射線治療では治癒率はそれ程高くありません。当科では積極的に側頭骨部分切除を行い、良好な治療結果を得ています。

鼻・副鼻腔がん
 鼻の中(鼻腔)や副鼻腔から発生するがんです。鼻腔がんは頑固な鼻出血、一側の鼻閉が特徴で悪性細胞の組織型も多彩です。副鼻腔がんは骨組織の中で発育するため顔面のしびれ感、腫脹が出たときには進行したがんであることが多いのが特徴です。放射線感受性は高いのですが、進行がんが多いため手術が必要なことが多いです。当科では顔面形態の再建を併用した拡大切除を行っています。また、頭蓋底進展例には脳神経外科と共同で頭蓋底手術も積極的に行っています。

口腔がん
 歯肉、頬粘膜、舌、口腔底、硬口蓋から発生するがんです。口腔内は口内炎、色素異常など他の非常に多彩な粘膜病変があるため、早期にがんをこれらと判別することが重要です。小さながんは放射線で治癒することも多いのですが、口腔がんの発育は比較的早く周囲に進展しやすいため、手術が必要になることが実際には多いです。当科では早期がんには縮小手術で舌部分切除を、進行例には拡大切除と即時再建で治癒率の向上と術後の機能改善を図っています。

上咽頭がん
 鼻のつきあたりの粘膜から発生するがんです。鼻づまり、鼻血、頸部リンパ節腫大で見つかることが多く、進行例が多いのが特徴です。脳や脳神経が近い場所なので手術不可能なことが多く、主に放射線治療が行われます。当科では放射線科と共同で放射線―抗がん剤併用療法で治療しています。

中咽頭がん
 軟口蓋、扁桃腺、舌の付け根、のどのつきあたり(後壁)などに発生するがんです。場所ごとに治療に対する反応が違い、軟口蓋、扁桃腺は放射線の感受性が高いのに対して、舌の付け根、後壁は感受性が低く手術が中心となります。咽頭は嚥下、構音機能に重要な役割を持っていますので、多くはがん切除と再建手術を併用します。

下咽頭がん
 喉頭の後ろの食道の入口にできるがんです。初期の頃は自覚症状が出にくく、頸部リンパ節転移を契機として見つかることも多いがんです。逆に嚥下障害や痛みなどの自覚症状が出たときにはすでに進行していることが多いのも特徴といえるでしょう。頭頸部領域では最も難治性のがんの一つです。治療としては食道再建を伴った咽頭・喉頭・頸部食道摘出術が一般的ですが、音声機能を喪失してしまうため、最近では限局したがんの場合は喉頭を残して音声機能を温存する手術も数多く行っています。

喉頭がん
 頭頸部で最も多いがんの一つで、喫煙との関係が示唆されています。声帯を中心に、それより上(声門上部がん)、それより下(声門下がん)の3種類に分類されます。声門がんは嗄声(声がれ)を生じやすく早期に見つかることが多く、治療は放射線を行うことが多いのですが、放射線後再発、あるいは進行した場合には喉頭を摘出しなければなりません。当科ではがんの範囲が限局している場合は、積極的に喉頭機能を残す喉頭部分切除を行っています。声門上部がん、声門下がんは進行例が多く、この場合は手術治療が中心となります。

唾液腺がん
 主な唾液腺には、耳の下にある耳下腺と、あごの下にある顎下腺、舌の下にある舌下腺があり、この他に口の中の粘膜には多くの小唾液腺がありますが、唾液腺がんはこれらから発生するがんの総称です。がんの組織型は多彩で、悪性度もそれぞれ違います。腫瘤や痛みで自覚されることが多いのですが、特に耳下腺では内部を顔面神経が走行するため、がんの浸潤で顔面神経麻痺が生じて見つかることもあります。治療は放射線、抗がん剤は無効なことが多く、手術治療が中心となります。術前に顔面神経麻痺がなくとも切除で神経を犠牲にしなければならないこともあり、当科では神経移植を含めた動的再建、形態を保持する静的再建など、美容にも十分配慮した治療を行っています。

甲状腺がん
 甲状腺は喉頭のすぐ下の気管に喋が羽を広げた形で存在し、甲状腺ホルモンを分泌しています。良性腫瘍が圧倒的に多いのですが、悪性腫瘍も決して少なくありません。悪性腫瘍では成長速度の緩やかな乳頭がんが多数を占めますが、稀に悪性度の非常に高い未分化がんも存在します。治療としては手術が中心となります。すでに気管や喉頭に進展していることも多いのですが、当科では可能な限り喉頭機能を残した手術を行っています。特に気管進展例では気管再建を2期的に行うことで良好な結果を得ています。

頸部がん
 頸部原発のがん(鰓弓由来のがんなど)や原発部位が不明のがんの頸部リンパ節転移などがあります。手術治療が中心で、術後に放射線治療を行うこともあります。