ごあいさつ

教授就任のご挨拶 教授:田中克己
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
展開医療科学講座 形成再建外科学
教授 田中 克己


 このたび平成27年11月1日付けで、形成再建外科学の教授を拝命いたしました田中克己でございます。長崎大学の形成外科の歴史は昭和35年1月に遡ります。当時、整形外科内に形成外科診療班が組織され、本邦での最初の本格的な形成外科診療が開始されました。昭和54年診療科として独立し、難波雄哉先生が初代形成外科教授に就任され、昭和62年講座となりました。第二代の藤井 徹教授、第三代の平野明喜教授の後を受け、四代目となります。この場をお借りしまして、皆様に謹んで就任のご挨拶を申し上げます。
 私は昭和34年1月、鹿児島市で生を受け、鹿児島県立鶴丸高等学校を経て、昭和53年長崎大学医学部に進学しました。大学時代はバスケットボール部に所属し、心身を鍛え、また、多くの先輩方から、人として、また、医師としての心構えを学んでまいりました。当初は小児外科を志していましたが、難波先生の講義を聴いた後から形成外科に興味を抱き、昭和59年3月の卒業後、ただちに形成外科の門を叩き、入局させていただきました。
 その後、山口県立中央病院(現在の山口県立総合医療センター)、佐世保市立総合病院、松江赤十字病院の各病院での形成外科の研修を行い、平成元年には、大分中村病院に形成外科の初代医長として開設の役を担わせてもらいました。平成4年に長崎大学に戻ってからは、組織移植における微小循環をテーマに基礎的研究と臨床における治療を行ってまいりました。同時に癌治療後の再建をテーマに臨床各科の先生方と数多くの患者さんの治療に携わることができましたことは、私自身の形成外科医としてのライフワークにつながっております。また、手外科とマイクロサージャリーは先天異常から外傷、拘縮にいたるまで、機能と整容を回復するための、まさに形成外科の目指すところであると考えており、今後も高い治療成績をめざしてまいります。
 このたび伝統ある長崎大学形成外科学教室を担当するにあたり、臨床においてはこれまで長崎大学で行ってまいりました唇顎口蓋裂をはじめとした体表面の先天異常に対する治療、頭蓋顎顔面外科手術、皮膚腫瘍、手外科、組織欠損に対する再建手術、さらには糖尿病や血管障害に起因する各種難治性潰瘍などに対する治療などにさらに積極的に取り組んでまいります。基礎的研究においては、現在行っているケロイドをはじめとした創傷治癒に関する研究や幹細胞移植を中心とした再生医療の臨床応用も推進してまいります。また、最近、注目されております抗加齢医学に関しても美容外科を含めて講義などに取り入れてまいりたいと考えております。現在、再生医学は形成外科分野においても様々な形で取り組まれていますが、多くの領域では手術を中心とした治療が行われています。いかに生体への侵襲を最小限にとどめ、美しく、高い機能を回復できるような結果に導くことができるのか、形成外科施設が増えた現在、さらに高い治療成績が求められています。今後はこの両輪をバランスよく行い、最新、最良の医療を提供できるように努めてまいります。時同じくして、日本専門医機構を中心とした新たな専門医制度が始まろうとしています。形成外科においてもプログラムとカリキュラムを作成し、より充実した研修システムの構築を考えています。
 私の役割の一つに、「繋ぐ」ことがあると考えております。これまで先輩方から受け継いできた形成外科の心と技を若い人たちに伝え、次の世代へ繋がなければなりません。また、研究においては、基礎・臨床における各先生方との、これまで以上により緊密な繋がりをもち、研究や診療を行いたいと考えております。これからも教室員一同、形成外科のさらなる進歩・発展に全力で取り組み、その結果を国内外に発信してまいる所存です。今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。