ごあいさつ

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就任のごあいさつ
長崎大学医学部長
(事業推進委員会事業責任者) 永安 武
長崎大学医学部長 永安 武

 放射線災害は事後の環境汚染が長期に及ぶ特殊な災害です。特に直接被ばくや残留放射線被ばくによる人体への影響は未知数な部分が多く、住民の健康管理における大きな不安材料となり、被災地の復興を遅らせることになります。
 長崎、広島における被ばく医療が原爆投下から半世紀以上経った今も継続している中で起こった福島の原子力災害は、放射線の健康リスクについて国民を再び不安に陥れました。その背景には放射線災害に対する医療専門家の偏在や人材不足が挙げられます。
 本プログラムは、文部科学省の平成28年度課題解決型高度医療人材養成事業の一環として選定された長崎大学、広島大学、福島県立医科大学による共同事業であり、過去と現在で放射線災害を経験した被爆地にある3つの大学が培ってきた放射線健康リスクに関する教育と研究リソースを相互に共有し、放射線健康リスク科学に精通したプロフェッショナルを育成していくことを目的としています。
 医療のグローバリズムが進む中、この教育プログラムを通して養成された人材が本邦のみならず国際的に放射線健康リスク科学の専門家として活躍していくことで、この分野に於ける日本の先進性を示すことになると確信しています。
学生へのメッセージ

グローバルに活躍できる放射線健康リスク科学のプロフェッショナルを目指しませんか

 「放射線健康リスク科学」とは近年生まれた新たな概念です。そこには、放射線の基礎、生物影響の基礎メカニズムはもとより、放射線災害の実相を理解した上で、我々の健康に及ぼす「リスク」の程度を正確に把握し、それを正しく伝えることが含まれます。このような多様な知識とスキルが体系化された学問領域が「放射線健康リスク科学」と言っていいでしょう。このプログラムでは、過去に放射線災害を経験した長崎大学、広島大学、福島県立医科大学の放射線に関わるスペシャリティを有する豊富な講師陣が、リアリティの高い放射線健康リスク科学を提供します。
 プログラムは段階的に構成されています。まず学部教育では、放射線の基礎+災害医療+放射線リスクコミュニケーションをパッケージとして学び、理解を進めるための実習が行われることもあります。さらに、夏休み期間中などには集中的なコースを開催します。次の段階は、大学院教育です。長崎大学と福島県立医科大学による大学院共同専攻「災害・被ばく医療科学共同専攻」、広島大学大学院リーデングプログラム「放射線災害復興を推進するフェニックスリーダー育成プログラム」では国際的な高度専門教育を修めます。学位取得後に研究者として自立していく上で、広島大学、長崎大学、福島県立医科大学による放射線災害・医科学共同研究拠点はより良い研究環境を与えることになるでしょう。仕上げに、この3大学がいずれも指定されている「放射線災害医療・総合支援センター」と「高度被ばく医療支援センター」としての活動を経験することにより、実践力を養成します。
 放射線を理解し、健康リスクを正確に評価し、正しく伝えることの人材が極めて少ないことを、我々は東京電力福島第一原子力発電所事故後に目の当たりにしました。それは日本だけのことではなく、数々の要因による放射線災害のリスクが高まりつつある現在、グローバルレベルでの人材供給が必要です。
 世界でも稀なこのプログラムを通じて、放射線健康リスク科学の先駆者としてオンリーワンを目指しませんか!


長崎大学原爆後障害医療研究所 放射線生物・防護学研究分野 教授
(事業推進委員会サブリーダー) 松田 尚樹