2005年5月31日、長崎大学病院は脳死肺移植の指定施設として認定されました。これまでの指定施設は、東北、京都、大阪、岡山の4大学のみでしたが、九州でも肺移植ができることになりました。もともと当科は前身の長崎大学医学部第1外科教室、故辻泰邦教授が1966年(昭和41年)に日本で2例目、世界で6例目の肺移植を行なった施設であり、その後も一貫して肺移植の研究に取り組んで参りました。

【生体肺移植の風景】
【バックテーブルでのドナー肺還流】
【術後ICUでの気管支鏡検査】
 2008年4月15日、肺胞蛋白症の43歳女性に対して、ご主人様と弟様をドナーとした、当院初の生体肺移植を実施いたしました。肺胞にタンパク質が蓄積して呼吸不全を起こす、肺胞蛋白症という疾患に対しての肺移植は国内初でありました。術前の患者様は、大量の酸素投与にも関わらずほぼ寝たきり状態でありましたが、移植後は酸素なしで元気に歩いて退院されました。
 肺移植には呼吸器外科をはじめ、心臓外科、消化器外科、麻酔・集中治療科、呼吸器内科、循環器内科、精神科、理学療法士、薬剤師、看護師など数多くのスタッフにより成り立っています。今回の成功は長崎大学附属病院の固いチームワークの成果といっても過言ではありません。
【退院直前の患者様とスタッフ】
【術前の胸部単純写真】
【術後の胸部単純写真】
※ いずれも患者様の許可を得て掲載しています。
 脳死状態になられた方の臓器提供に基づく肺移植のことです。ドナーの片肺、または両肺を、レシピエント(患者)の片方または両方の肺と入れ替える方法です。 
 現在の日本では欧米諸国と比較して、脳死者からの臓器提供数は非常に限られたものになっています。生体肺移植では、健康な二人のドナー(臓器提供者)がそれぞれの肺の一部(右もしくは左の下葉)を提供し、これらをレシピエント(患者)の両肺として移植するものです。
1997年(平成9年)に「臓器移植に関する法律」が施行され、2007年12月までに,本邦では、脳死肺移植39例、生体肺移植66例が施行されています。
 本邦の生体肺移植の5年生存率は77%、脳死肺移植の5年生存率は57%となっており、いずれも国際登録の生存率(49%)を上回っています。

 肺移植の適応基準は、肺・心肺移植関連学会協議会によって定められた、「肺・心肺移植レシピエントの適応基準」(1997年修正)を遵守することになっています。

  1. 治療に反応しない慢性進行性肺疾患で、肺移植以外に患者の生命を救う有効な治療手段が他にない。
  2. 移植医療を行わなければ、残存余命が限定されると臨床医学的に判断される。
  3. 移植を受ける患者の年齢は、両肺移植の場合55歳未満、片肺移植の場合には60歳未満である。
  4. 患者本人が精神的に安定しており、移植医療の必要性を認識し、これに対して積極的態度を示すとともに、家族及び患者をとりまく環境に十分な協力体制が期待できる。
  5. 移植を受けた本人が、移植手術後の定期的検査と、それに基づく免疫抑制療法の必要性を理解でき、心理学的・身体的に十分耐えられる。
@ 原発性肺高血圧症
A 特発性肺線維症
B 肺気腫
C 気管支拡張症
D 肺サルコイドーシス
E 肺リンパ脈管筋腫症
F アイゼンメンジャー症候群
G 間質性肺炎
H 閉塞性細気管支炎
I 肺好酸球性肉芽腫症
J びまん性汎細気管支炎
K 慢性血栓梗塞性肺高血圧症
L 多発性肺動静脈瘻
M α1アンチトリプシン欠損型肺気腫
N 嚢胞性肺線維症
O その他、肺・心肺関連学会協議会で承認する進行性肺疾患
  1) 肺外に活動性の感染巣が存在する。
  2) 他の重要臓器に進行した不可逆的障害が存在する。
   悪性疾患 骨髄疾患 冠動脈疾患 高度胸郭変形症 筋・神経疾患 肝疾患(T-Bil > 2.5mg/dl) 腎疾患(Cr > 1.5 mg/dl, Ccr < 50 ml/min)
  3) 極めて悪化した栄養状態。
  4) 最近まで喫煙していた症例。
  5) 極端な肥満。
  6) リハビリテーションが行えない、またはその能力が期待できない症例。
  7) 精神社会生活上に重要な障害の存在。
  8) アルコールを含む薬物依存症の存在。
  9) 本人及び家族の理解と協力が得られない。
 10) 有効な治療法のない各種出血性疾患及び凝固能異常。
 11) 胸膜に広汎な癒着や瘢痕の存在。
 12) HIV(human immunodeficiency virus)抗体陽性。
日本移植学会のホームページから、認定8施設共通の「肺移植のためのガイドブック」がダウンロードできますので、ご参照ください。

詳しくは、長崎大学病院臨床肺移植実務責任者までお気軽に御連絡ください。

長崎大学病院臨床肺移植実務責任者 山崎 直哉 
E-mail:haiishoku@ml.nagasaki-u.ac.jp

長崎大学病院呼吸器外科(第1外科) 〒852-8501 長崎市坂本1丁目7番1号
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