診療内容(診療グループ):下部消化管外科
大腸・肛門外科紹介内容

腫瘍外科 大腸・肛門外科グループ
主任:野中 隆 副主任:和田 英雄、濵田 聖暁

当科の大腸・肛門外科では大腸癌(結腸癌・直腸癌)を中心に、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、)や腹部救急疾患(穿孔性腹膜炎、憩室炎、腸閉塞など)に対する手術療法を幅広く行っています。
当科の特色

当科では1994年に腹腔鏡下大腸切除を開始し、2008年より標準治療として導入されました。現在は大腸癌手術の9割以上は腹腔鏡下手術が行われており、日本内視鏡外科学会の技術認定取得医を中心に質の高い治療を提供しています。腹腔鏡手術による治療を得意としています。

腹腔鏡手術
大腸癌に対する治療戦略
我が国において大腸癌は最も罹患数の多い癌です。大腸癌の根治的治療は化学療法(抗癌剤)ではなく外科切除であり、その手術侵襲を軽減する腹腔鏡手術の需要が高まっています。
① 整容性・低侵襲性を追求
当科で行う大腸癌の手術はほとんどの症例で腹腔鏡を用いて行います。腹腔鏡手術には通常開腹手術と比較して1.傷が小さく、2.痛みが少なく、3.術後の回復が早く、4.術後の癒着が少ないというメリットがあります。それだけでなく複数の臨床試験の良好な結果から、腹腔鏡手術の長期予後(再発率など)も問題ないことも明らかとなっています。更にわれわれは通常の腹腔鏡だけでなく単孔式腹腔鏡手術(傷がほとんど目立たない腹腔鏡手術)にも取り組んでいます(図1)。腫瘍の局在や進行度に応じて適切な術式を提案いたします。

開腹手術・従来型腹腔鏡・単孔式腹腔鏡手術

② 機能温存を重視した直腸癌における術式の選択
肛門近傍に直腸癌できると肛門も含めて癌を切除しなければならない術式、 いわゆる“永久人工肛門”の手術を選択せざるを得ないケースがあります。しかし、近年は癌と肛門までの距離が少しでもあれば、永久人工肛門を回避でき、“肛門機能の温存”が可能になるケースがあります。具体的には術前化学療法や化学放射線療法を行い腫瘍の縮小を図ったうえで肛門温存手術を行います(図2:赤線が腫瘍の範囲)。

術前化学療法前→術前化学療法後

術前治療には術後局所再発率を低くする作用もあり根治性にも優れた方法と言えます。また直腸癌手術に腹腔鏡手術を用いることで、非常に狭い深部骨盤内でも高解像度のハイビジョンモニターで視認することができます。排尿機能や性機能にかかわる神経線維を、切除する直腸から正確に分離していき、肛門機能温存・自律神経温存の直腸癌手術を正確に遂行することができます(図3:自律神経温存側方郭清術後)。

自律神経温存側方郭清術後


③ 狭窄が強い大腸癌に対する大腸ステントによる人工肛門の回避
腫瘍による高度な閉塞症状で見つかった大腸癌は従来緊急手術が必要となり、多くの症例で人工肛門造設術が行われていました。糞便が排泄できなくなることで、たまった糞便により腸管壁に炎症と浮腫が生じ、大腸穿孔が生じやすくなるためです。しかし最近は、消化器内科の協力のもと、可能な限り自己拡張機能を有する腸管金属ステントを留置して緊急手術を回避することができるようになりました。腸管内の減圧を図った後に、後日待機的に腹腔鏡手術で治療を行います。
炎症性腸疾患に対する治療
① 潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎に対する術式は主に①結腸全摘、直腸粘膜切除、回腸嚢肛門吻合(IAA)、②結腸全摘、直腸切除、回腸嚢肛門管吻合(IACA)、③結腸全摘、回腸直腸吻合(IRA)があります。IAAでは病変部がすべて切除されますが、IACAでは少し、IRAではかなり、直腸に病変部が残り、残った病変の大きさに応じて術後もステロイド座薬などの治療が必要になります。当科では、患者さんの状態や癌病変の併存の可能性などを考慮したうえで術式を選択しております。いずれの手術も腹腔鏡手術を第一選択としております。消化器内科医と連携し適切な治療を提供いたします。

② クローン病
クローン病による小腸・結腸狭窄に対しても、可能な限り腹腔鏡下手術を行っています。複数回手術を行う可能性があるクローン病には手術による癒着の影響が少ない術式であると考えています。生物学的製剤(抗TNFα抗体)の登場により外科手術を要する症例も減っていますが、消化器内科医と連携し適切な治療を提供いたします。
その他良性疾患に対する治療
① 鼠径ヘルニア
腹腔鏡下手術を基本としております。傷が3か所(5mmが2か所、10mmが1か所)で済むため術後3日以内の退院が可能です。

② 穿孔性腹膜炎(大腸穿孔)
様々な原因で大腸に穴が開き、敗血症性ショック・重症感染症を併発し救命できないことがある疾患です。救命を目的とした人工肛門の造設が必要となるケースが多いです。術後管理は集中治療部・感染症チームと協力して取り組んでいます。

③ 腸閉塞
血流障害を伴う腸閉塞は開腹手術にて行いますが、癒着性の腸閉塞の場合は十分な減圧処置(イレウス管)ののち、腹腔鏡手術で行うことができます。

④ 直腸脱
肛門括約筋が緩んで、直腸全層が肛門から脱出する病気です。従来から行われていた経肛門的手術だけではなく低侵襲で再発が少ない腹腔鏡下直腸固定術(Wells変法)にも取り組んでいます。
おわりに
月曜日・水曜日・金曜日に当科の大腸・肛門外科チームの医師が新患を受け付けています。
外来予約枠がいっぱいでも、外来日でなくても新患や緊急患者については随時受け付けますので電話でご一報いただければ幸いです。( 地域医療センター: 095-819-7930 か 腫瘍外科医局:095-819-7304

また外来患者の増加に伴い、術後フォローアップや術後補助化学療法、緩和医療について近隣病院・かかりつけ医などと地域連携を図っております。ご多忙中申し訳ありませんが、ご理解、ご協力をお願い申し上げます。