診療内容(診療グループ):大腸・肛門外科
大腸・肛門外科の診療と研究内容
 腫瘍外科で外科手術を行っている大腸・肛門外科の疾患の主なものは、大腸癌と炎症性腸疾患(クローン病と潰瘍性大腸炎)です。
対象疾患
大腸癌について
 世界でもトップクラスの長寿国である日本では、現在2人に1人が「がん」に罹る時代となりました。特に長崎県は全国で6番目にがんが多い県で、その中でも大腸癌は男女ともに最も罹る人が多いがんです(in situを含む)。
 大腸癌の発生には、赤身肉・肥満・運動不足・飲酒などが関わっていると考えられており、適度な運動や食物繊維などは大腸癌になる危険を下げるといわれていますが、完全に予防できる方法はありません。しかしながら、初期の状態で治療できれば99%治すことができるがんです。そのためには「がん検診」によって症状が出る前にがんを早期診断することが大切です。
大腸癌に対する治療
自然な肛門を残す手術
 長崎大学腫瘍外科では、1986年に日本でいち早く「二重器械吻合法(DST)」を取り入れ、日本における器械吻合の普及に貢献しました。現在も、直腸癌に対して出来る限り自然な肛門を残す手術に取り組んでいます。
腹腔鏡というカメラを用いた手術
 身体に優しい手術法として、1993年に日本でいち早く「腹腔鏡補助下大腸切除術」を取り入れました。特殊な再発形式や、長期成績が不明であったことなど、いくつかの問題点から1997年より「小開腹手術(次項参照)」に移行しましたが、最近では問題点も解決されたと考えられ、標準術式の1つとして採用しています。
小さな創で行う身体に優しい手術
 「腹腔鏡下手術」は当初、特殊な再発形式や、根治性を含めた長期手術成績が不明であったこと、高経費、長い手術時間、病巣を触れないなど、多くの問題点が指摘される一方、病巣を取り出すためには結局お腹に創を付ける必要がありました。そこで、この小さい創を最初から利用する「小開腹手術」を開発し、1997年より標準術式として導入しました。具体的には7cm程度の創で従来法と同等の手術を行い、サイトカインなどの研究から身体に優しい手術であることを証明しました。現在も「腹腔鏡補助下大腸切除術」とともに標準術式の1つとして実施しています。
皮膚を切らずに行う直腸の手術
 直腸の早期癌や、大きな腺腫(前がん病変)、カルチノイドなどに対して、皮膚を切開することなく肛門から特殊なカメラを挿入して病巣を切除する「経肛門的内視鏡下手術:Gasless video endoscopic transanal rectal tumor excision (Gasless VTEM)」を行っています。短い入院期間で治療が完了する有用な手術方法であり、100例を超える経験から良好な遠隔成績を得ています。
大腸癌に対する集学的治療
 手術だけでは治すことのできない大腸癌に対して、抗癌剤や分子標的治療、放射線治療を組み合わせた「集学的治療」を行っています。抗癌剤治療は、多くの場合「外来化学療法室」を利用し、できるだけ通常の日常生活を送りながら治療を続けられるようにしています。
食道がんの場所
進行度の評価
研究内容
 同じ場所に出来た、同じ名前のがんであっても、その後の経過は人それぞれ異なっています。一人一人の患者さんに、どういう治療をどのように行えば最も良い結果が得られるのかという、「テーラーメイド治療」を念頭においた研究を行っています。

 ① がん遺伝子・がん抑制遺伝子に関する研究

 ② 染色体の数や構造異常に関する研究

 ③ 腫瘍マーカーに関する研究

 ④ 血管新生に関わる因子の発現に関する研究

 ⑤ 抗癌剤の感受性や、薬物代謝に関する研究

 ⑥ 抗癌剤の投与方法・副作用対策に関する研究

 ⑦ 肝転移・肺転移に対する適切な治療法に関する研究

 ⑧ 遺伝性の大腸癌に関する研究

 ⑨ 手術後の合併症を予防する方法に関する研究

 ⑩ 適切な手術後の監視プログラムに関する研究

 がんを征圧するためには、一人でも多くのプロフェショナルが必要です。力と感性に満ち溢れた、数多くのフレッシュマンが来てくれることを期待しています。