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診療のご案内(肝臓)肝移植の概要
 
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肝臓グループ
肝移植の概要 肝移植を希望される方へ
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肝移植を考慮される方へ
 

 肝移植には脳死肝移植と生体肝移植の二通りの治療法があり、その手続きが異なります。

I. 脳死肝移植
 

次のことを検査/審査する必要があります。
 1. 脳死肝移植認定施設での診察
 2. 患者様の医学的な肝移植適応の有無とその緊急度の判定
 3. 日本臓器移植ネットワークへの登録


II. 生体肝移植
 

 次のことを検査/審査する必要があります。
 1. 患者様の医学的な肝移植適応の有無の判定
 2. 患者様とドナーの適合性
 3. ドナーの肝臓と全身の状態


肝移植とは
 
I. 歴 史
 

 肝移植とは、病気で傷んでしまった肝臓を正常な肝臓と入れ替えてしまう、いわば究極の治療法といえます。第一例目は1963年に米国の当時コロラド大学のスターツル教授によって行われました。当初は拒絶反応や技術的問題などによりその成績は不良でしたが、1970年代後半に入って拒絶反応を有効に抑える免疫抑制剤が開発され、技術的改良と相まってその治療成績は飛躍的に向上しました。
 肝移植は臓器提供者(ドナー)の違いにより、脳死肝移植と生体肝移植に分けられます。現在世界では毎年10,000件以上の肝移植が行われていますが、そのほとんどは脳死肝移植です。一方、脳死問題が長らく解決しなかったわが国では、1989年になって初めて島根医科大学で生体肝移植が施行され、以来、2010年12月までに全国55施設で合計約6,000件が行われています。


II. 肝移植の種類
  1) 脳死肝移植

 様々な原因により脳の機能が不可逆的に損傷され、いかなる治療によっても回復が望めない状態を脳死といいます。脳死になった方の生前の意志、および家族の意志に基づいて提供された肝臓を移植に用いるのが脳死肝移植です。世界的には肝移植のほとんどがこの脳死肝移植ですが、日本では脳死を人の死として認め、その臓器を移植用に譲り受ける考えが定着せず、1997年6月になって国会でようやく臓器移植法が成立し、同年10月から施行されました。しかし、脳死の提供者がなかなか現れない状況が続いており、年間10例前後しか行われていませんでしたが、2010年7月、移植法が改定され家族の意思で提供可能となり、症例数は増加傾向にあります。2010年度は年間提供数が30件を超えました。長崎大学も平成15年より、現在全国に21施設ある脳死肝移植施設のひとつに認定され、当科でも2011年4月に第一例目を施行致しております。

2)生体肝移植

 文字通り、生きている健康な人の肝臓の一部を身体から取り出して重い肝臓病の患者様に移植する方法です。脳死移植と違い、手術の前に十分準備ができる上に、状態のよい肝臓を一つの病院で予定を立てて移植できる等の利点がありますが、その一方で健康な身体にメスを入れなければならないという問題があります。
 ドナー(臓器提供者)からは肝臓全体の1/5から3/5を取り出します。残った肝臓は自然に再生して、約1ヶ月で血液検査の値は正常に回復し、約3ヶ月で元の大きさに戻るのが特徴です。
 ドナーになるには、御本人の自発的な自由意志で肝の提供を希望されることが前提条件です。わが国では、脳死移植がなかなか認知されなかったことと、癌に対して肝臓の一部を切除する、いわゆる肝切除術の技術が進んでいたために、この生体肝移植が先行する形で行われてきました。今日では、わが国は世界で最も多くの生体肝移植を手がけており、その手術成績は世界でトップクラスです。当初は、もっぱら親から幼い子供さんへの移植が行われていましたが、移植技術の進歩と経験の蓄積により、1993年からは成人同士の移植も可能になりました。

わが国の生体肝移植の成績(1989年11月-2005年12月、生存率)
18歳未満(1549例):一年:86.2%、五年:83.2%、十年:79.1%
18歳以上(2234例):一年:78.6%、五年:70.5%、十年:66.6%


III. 肝移植の対象となる状態
 

 肝移植は元来、他に治療法のない末期の肝臓病に対する救命手段として開発されましたが、成功率が高くなるにつれ、その対象となる病気は増えてきました。現在、以下の病気に対して行われています。

小児:胆道閉鎖症、肝硬変、アラジール症候群、代謝性肝疾患、劇症肝炎など
成人:肝硬変(B型、C型)、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎
    肝細胞癌、代謝性肝疾患、劇症肝炎など。
    アルコール性肝硬変では、6ヶ月の断酒期間が必要です。


IV. 肝臓の提供者になれる条件
 

 肝臓の提供を希望される方がおられる場合、その前提条件として親族であり、自らの自由意思で善意の肝提供を希望している必要があります。(親族とは六親等内の血族または三親等内の姻族のことを指します)

また、医学的な条件として、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 全身状態良好で、原則として年令が65才以下
  2. 肝炎ウィルスマーカー陰性で肝機能正常
  3. 活動性の感染症がない
  4. 悪性腫瘍の既往がない、またはあっても治癒したと判断される
  5. 部分肝が解剖学的に提供可能で、提供予定の部分の大きさが充分である
  6. 高度の脂肪肝がない
  7. 生体肝移植術と肝提供手術につき、その合併症、危険性と限界につき十分承知している

 なお、患者様の年齢が2才以下の場合は、血液型が不一致(輸血できない組み合わせ)でも移植の成功率に差がないため、積極的に考慮します。また成人で血液型が不一致でも、様々な工夫により肝移植成績が向上しており、現在、当科でも血液型不適合肝移植を行っております。また、B型肝炎にかかったことのある方でも、現在、治癒していれば肝臓提供は可能です。ただし、事前に詳しい検査が必要となります。

 欧米ではドナー(臓器提供者)の死亡率が約1%と報告されています。わが国ではドナーが臓器提供手術後に肝不全をきたし死亡した事例が1例あります。この原因はドナーが非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH)であった事があげられています。このため、ドナーの肝臓に脂肪肝の存在が疑われた場合には厳しく術前評価を行うことが求められます。


V. 長崎大学における肝移植
  1)これまでの歩み

 1991年より第2外科で肝移植チームを結成し、動物実験や海外の移植施設への留学など、慎重に準備を重ね、1997年8月に第1例目の生体肝移植を行いました。以後、現在までに137名(再移植5例、142回)の患者様に生体肝移植を行っております。当科での成績は、1年生存率86.3%、3年生存率 77.3%、5年生存率 73.1%です。ドナー(提供者)の方々は皆、1-2カ月で手術前の状態に復帰しておられます。

2)肝移植スタッフ

江口 晋准教授(えぐち すすむ)

 

臨床肝移植の準備としてブタの移植実験をしていた頃からのメンバーで、1994年より3年間ロサンゼルスのCeders-Sinai Medical Centerに留学し、主に人工肝臓の研究に従事。2003年より2年間、世界的にも有名なオランダのグローニンゲン大学で脳死肝移植を中心とする多くの症例を執刀。2005年4月より帰学しています。 European Diploma in Transplant Surgery (ヨーロッパ肝移植外科、ドナー摘出手術認定医)を取得している。

高槻 光寿 講師(たかつき みつひさ)
  1997年より京都大学移植外科(田中紘一教授)に従事し、生体肝移植術と特に肝動脈の顕微鏡下手術を研修・執刀。2000年より長崎大学に帰学し、生体肝移植レシピエント手術および顕微鏡下肝動脈吻合全例を執刀。2001年からは世界的にも有名な台湾・高雄長庚紀念病院(陳肇隆教授)のもと生体肝移植ドナー・レシピエント手術に術者として参加したほか、脳死ドナー・レシピエント手術も経験し2003年4月より帰学しています。
曽山 明彦 助教(そやま あきひこ)
 

2004年より肝移植チームに参加。2007年より2年間、世界的にも有名なオランダのグローニンゲン大学で肝臓の手術を学び、脳死肝移植を中心とする多くの症例を執刀し、2009年9月より帰学しています。European Diploma in Transplant Surgery (ヨーロッパ肝移植外科、ドナー摘出手術認定医)を取得している。

兼松 隆之 医師(かねまつ たかし)
 

本邦の肝臓外科を代表するリーダーの一人で、移植・消化器外科前教授。
肝臓手術の経験が豊富です。

日高 匡章 医師(ひだか まさあき)
 

2003年より、肝移植チームに参加し、2008年からフランス・パリのボジョン病院で、世界的に有名なベルゲッティ教授の下で脳死肝移植を学び、2009年4月に帰国しました。

奥平 定之 非常勤講師(おくだいら さだゆき)
  2000年からの肝移植症例全てを担当し、また長崎大学肝移植全例の病理を中心とした病因・拒絶反応に関する解析を行っています。
その他、国内外の肝移植施設での診療経験者が5名おります。

VI. 肝移植後の生活
 

 順調に経過した場合、患者様は手術後1から3ヶ月(平均1.2カ月)で、またドナーは10日から4週間(平均2週間)で退院となります。移植後の患者様は原則として拒絶反応を予防するために、一生免疫抑制剤を服用し続ける必要があります。また、定期的な外来通院と検査が必要です。その不都合を除けば、大部分の人は1年程で健康な人とほぼ同等の生活を送ることが出来るようになります。小児の場合、移植前に発育が遅れている場合がほとんどですが、移植後の経過が順調であればその後の発育の速度は同年齢の小児と同様とされています。


VII. 肝移植にかかる費用
   2004年1月より、原則的に全ての肝臓病について、生体肝移植が保険で受けられるようになりました(ただし、肝癌を合併する場合には制限があります)。
その際、ドナー(臓器提供者)の医療費は全て患者様の医療費に合算されます。保険が使える場合、限度額認定証を利用すれば、月に一定額(収入に応じて設定されています)を越えた医療費分は支払う必要がなく、原則として患者様の移植費用の上限は毎月一定額となります。
 保険適応とならない場合、移植費用は私費となります。手術後の経過が順調にいった場合で肝提供者の医療費を含めて約850万円と見込まれます。ただし、合併症が発生した場合は更に高額になる可能性があります。

以上、肝移植の概要をご説明いたしました。肝移植に関してご不明な点がありましたら、ご遠慮なく表紙の電話番号の江口 晋、高槻光寿までご相談下さい。
 なお、電子メールでのお問い合わせの場合は、高槻光寿までお願いします。

takapon@net.nagasaki-u.ac.jp       (文責:高槻光寿)
 
国立大学法人 長崎大学  
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 長崎大学病院
移植・消化器外科学 (第二外科)
tel. 095-819-7316 / fax. 095-819-7319 E-mailnigeka2@yahoo.co.jp
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