患者さんへ

泌尿器の病気について:腎細胞がん
腎細胞がんとは:人間には腎臓という、血液を濾過して尿を生成する臓器が左右1個ずつ存在します。位置は、肋骨の下の高さでお腹の中やや背中側にあります。ここに発生するガンを一般に腎細胞ガン(以下、腎がん)と呼びます。腎がんは50-70歳が好発年齢であり、男性の方が発生率は高いとされています(約2倍)。また、腎がんは発生しやすい家系があることが、遺伝子の解析で知られています。近年、腎がん患者の増加率は上昇しております。

腎がんの症状:腫瘍が小さい場合(7cm以下)、無症状であることがほとんどです。そのため近年では、健診での超音波検査やCTにより、偶然発見されるケースが増加しています。腫瘍が大きくなると、血尿、腹部のしこり、痛みが出現してきます。また全身症状として、体重減少、発熱、貧血をきたすことがあります。腫瘍が静脈内へ進展していくと、下大静脈が閉塞し、その影響として体表の血管が目立ったり、血栓ができたりする場合があります。
腎ガンの4人に1人は肺やリンパ節や骨などに転移が発見されるといわれており、これらも進行すれば呼吸困難や痛みなどの症状が出現することがあります。

腎がんの診断:超音波検査は簡便な検査で、健診でも施行できる検査です。腎ガンを疑う場合はCTを行います。腎には腎ガン以外にも腫瘍性病変が発生することもあるため(良性腫瘍、腎盂腫瘍)、より正確に診断するために造影剤を併用したCT検査が有用です。また、静脈内の腫瘍進展を確認するためにMRIを施行することもあります。肺転移や骨転移の検索のために胸部CTや骨シンチグラムを施行することもあります。

腎がんの治療:病変の外科的除去が第1選択です。
A. 腹腔鏡下腎摘除術:腎臓をがんとともに一括して摘出する術式で、現在当科において最も一般的な治療となっております(下記の場合を除く)。
B. 根治的腎摘除術(開腹):がんが大きすぎて(10cm以上)腹腔鏡下手術が困難な場合や、過去に大規模な腹部手術の既往がある場合、またガンが静脈に進展し下大静脈に至る場合は、開腹手術を要することがあります。この場合、より安全に手術を施行するために、術前に腎動脈を閉塞させ、がんおよび腎臓に血液が流れなくする方法(腎動脈塞栓術)を併用することもあります。
C. 腎部分切除術:がんが小さく(一般には4cm未満)、腎臓の正常な部位を温存することが可能な場合や、がんを腎臓ごと摘出した場合に腎不全による透析を要するケースでは、腎臓からがんの部分のみを切除する術式が適応となります。腎摘除術より技術的には難易度が高いですが、患者さんへの利益は大きいことが知られています。ガンが外側に突出した場合など、条件が揃えば、当科では腹腔鏡下腎部分切除術を行っております。
D. ガンが転移している場合:がんの状態にかかわらず、可能な限り上記A~Cの方法を優先するのが一般的です。転移病巣が1箇所で、かつ外科的に摘除が可能であれば、転移病巣の合併切除も有効な場合があります。その他、がんの転移に対する治療は下記のとおりです。

転移性腎がんの治療:腎がんに対しては、抗がん剤がほとんど効かないことが知られています。また放射線治療も効果が出にくいとされています。がんの転移が肺のみで、進行が穏やかな場合はサイトカイン療法(インターフェロン・インターロイキン2など)を行う場合があります。現在、最も一般的な治療として、分子標的治療が行われます。この治療は、がんの増殖や血管の増殖に関わる因子を抑えることで、抗腫瘍効果を発揮するものです。内服薬を使用すること多いですが、注射薬を使用することもあり、多くの方は通院で治療を行っています。分子標的治療を行うようになってからは、転移を認める腎がん患者の治療成績は明らかに改善しております。しかしその反面、治療の副作用にも注意が必要で、当科においては副作用を最小限にしつつ治療効果を最大限に引き出すよう、様々な取り組みを行っております。