患者さんへ

泌尿器の病気について:前立腺がん
前立腺がんは、欧米人に多く、アジア人には少ないと考えられていましたが、日本でもその患者数は著しく増加しており、生活習慣の欧米化がその原因の一つとして考えられています。
前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA測定による検診の普及に伴い、早期の段階で前立腺がんと診断される患者さんが増えているのも特徴の一つであると言えますが、そのような現在においても、骨転移による痛み、麻痺症状で前立腺がんと診断され、診断されたときにはすでに進行している患者さんも一定の割合で存在します。
ここでは、当院で行っている前立腺がん治療について紹介します。
限局性前立腺がんに対する治療

癌が前立腺に限局し、転移がない場合は、根治が期待でき、大部分の患者さんで根治療法が行われます。 根治療法としては、大きく手術、放射線療法の2つに分けられます。

  1. 手術(前立腺全摘術)
    前立腺およびその背側にある精のうを一塊に摘出します。開腹による手術が一般的でしたが、当院では腹腔鏡下前立腺全摘術を導入しています。 著明な前立腺肥大があるなど、一部の腹腔鏡手術が難しい例を除き、ほとんどすべての患者さんで腹腔鏡手術を行っています。 開腹手術に比べ、術後の痛みが少なく回復が早い、出血が少ないなどの利点があります。 手術は全身麻酔で行い、2週間程度の入院で行っています。 手術の合併症としては、尿失禁、性機能障害などがあります。

    腹腔鏡下前立腺全摘術について

  2. 放射線療法
    体の外から放射線を当てる外照射と、前立腺の中に放射線の入ったカプセルを埋め込む組織内照射(密封小線源療法)があります。
    外照射
    前立腺に高線量を照射し、周囲の正常な臓器への放射線の影響を最小限にすることが可能な強度変調放射線療法(IMRT)を2008年8月より開始し、現在まで100名以上の患者さんがこの治療を受けられています。 外来通院で治療が可能ですが、治療に2か月ほどの期間を要します。
    密封小線源療法(ブラキセラピー)
    前立腺に針を刺し、放射線の入ったチタン製のカプセルを埋め込むことにより、内部より前立腺に必要な放射線を当てる方法です。 当院では2005年10月よりこの治療を導入し、現在までに約300名の患者さんがこの治療をうけられています。体への負担が少なく、短期間(4-6日の入院)で治療ができるという利点があります。

  3. いずれの治療も、手術にほぼ匹敵する治療効果が期待できますが、臨床病期、がんの悪性度、前立腺の大きさなどにより、患者さんによってはお勧めできない場合、あるいは一定期間の内分泌療法(後述)の併用がのぞましい場合がありますので、担当医 と十分に相談して治療を選択されることをお勧めします。

    強度変調放射線療法(IMRT)について
    密封小線源療法(ブラキセラピー)について

  4. 内分泌療法
    ご高齢の患者さん、あるいは合併症がある患者さんの場合は、通常進行がんで第一選択となる内分泌療法を選択する場合があります。 男性ホルモンの分泌を抑える、あるいはブロックするような薬による治療です。 外来通院で治療ができます。

  5. 無治療経過観察
    前立腺癌は通常進行が遅いがんであるため、きわめて早期の段階であれば、治療をしなくても患者さんの生活、寿命に影響を与えない可能性があります。 その場合、まずは治療をせず、定期的なPSAの測定や、1年~数年おきに組織検査を行いながら様子をみることがあります。
進行前立腺がんに対する治療
診断された時点ですでに転移があるなど、進行がんの場合には、内分泌療法が第一選択となります。 前立腺がんはほとんどの場合男性ホルモン依存性であるため、男性ホルモンの分泌を抑制する、あるいは男性ホルモンをブロックするような薬の治療が有効です。 
この治療は全身療法ですので、転移巣にたいしても効果があります。 内服薬と、1か月~3か月に1回の皮下注射を併用して行う治療が一般的です。 内分泌療法は非常に効果的ですが、治療をしていくうちに、効果が弱くなり、再燃することがあります。 その場合には、薬の内容を変更したり、抗がん剤の併用を行います。また、痛みなどの症状に対する緩和治療も並行して行います。
このように、前立腺がん、特に限局がんの治療は多岐にわたりますが、患者さんのご希望、病状、ライフスタイルなどを考慮し、もっとも効果的で、かつQOL(生活の質)を重視した治療を行うことを心がけています。