ごあいさつ

長崎大学消化器内科開講10年目を迎えて 教授:中尾一彦
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科消化器内科学分野 教授
(長崎大学医学部消化器内科学 教授)
長崎大学病院消化器内科 診療科長
中 尾 一 彦
 2018(平成30)年、長崎大学消化器内科は開設10年目となりました。今年4月、教室開設以来、当科の臨床、教育、研究を牽引してきた二人の先生が新たな門出を迎えました。お一人は、大仁田 賢 先生です。鳥取大学消化器腎臓内科教授になられた磯本 一 先生の後任の光学医療診療部准教授として、早期胃がん・大腸がんの診断、ESD治療など、当科の消化管内視鏡診療を牽引し、加えて、胆膵疾患の超音波内視鏡診断、EUSFNA、ERCP治療も責任者として頑張ってくれました。大仁田先生は九州~全国に多くの知人、友人が居り、彼の人脈で著名な先生方に長崎に技術指導に来ていただいたり、共同研究に加えていただいたりして、教育、研究面でも中心的役割を担ってくれました。彼が医局長をしていた2年間は、25名の入局者があり、まさに長崎大学消化器内科バブル期でした。彼らは、今、教室の中心選手として大学病院や関連医療施設で大いに頑張ってくれています。『これまでの経験を生かして今後は地域医療に貢献したい』という、大仁田先生のたっての希望で、今年4月より春回会井上病院内視鏡センター長として赴任し、現在、内視鏡診療にどっぷりと従事する日々を過ごしています。大仁田先生はこれまで当院移植消化器外科と共同で十二指腸内視鏡的粘膜下層剥離術後の穿孔防止に関するを研究を行っており、今後も客員研究員として研究を継続していただく予定です。
 もうお一人は、肝臓グループの責任者の田浦直太 病院准教授です。彼は、市川辰樹 先生(現、みなとメデイカルセンター内科主任部長)の後任のチーフとして、肝臓グループの診療、研究、教育を牽引してくれました。中でも、肝癌診療に於いては、外科、放射線科、内科からなる肝癌合同カンファの司会進行を務めるなど、肝癌診療の専門家として大いに貢献してくれました。その一方で、彼は、臨床研究(観察研究)のセンスがあり、肝硬変、肝癌やB型、C型肝炎診療に関する当院の臨床データー、並びに、関連施設との共同研究を取りまとめ、多くの学会発表を行い、論文を作成してくれました。田浦先生は、今年4月より長崎大学病院の中央診療部門である、総合患者支援部 病床管理センターのセンター長(准教授)という、病床管理、医療情報管理を行う重要な役職に就きました。長崎大学医療情報部准教授で同門の松本武弘 先生が、田浦先生のデーター管理、処理能力に、以前より目をつけていて、今後、病院には必要な人材ということで、病院長はじめ病院執行部に対して、田浦先生を強く推してくれて話がまとまりました。昨今、ビッグデーターに注目が集まっていますが、彼は、大学病院の膨大なビッグデーターを基に、ユニークな仕事をするのではと期待しているところです。新天地での大仁田先生、田浦先生のますますのご活躍を祈念いたします。
 さて、今年4月より内科新専門医制度がスタートしました。大学病院勤務の内科専修医1年目は、当初、入局診療科を半年、他内科診療科を1~2ヶ月ずつ半年ローテートするというものでした。しかし、内科修練医(専攻医1年目)たちから入局科での専門研修にもっと力を入れたい、時間を割きたいとの要望が上がり、また各診療科の方からも、初期研修のような専任ローテートよりも、必要症例(未経験症例)のみを必要に応じて適宜担当してもらうオンデマンドローテートの方が受け入れやすいという意見もあり、現時点では、入局診療科の診療を継続しつつ必要な他科症例の主治医にもなるという並行(オンデマンド)ローテートが大勢となっています。しかし、循環器疾患はオンデマンド研修が難しく専任ローテートでなければ主治医担当はできないなど、診療科間の違い、問題点も出てきており、専攻医2年目以降のローテートを含めて、今後、改善に向けた調整が必要と思われます。内科新専門医制度がようやくスタートしたことから、消化器病学会、肝臓学会、消化器内視鏡学会、臨床腫瘍学会などの消化器系サブスペシャリィティー学会の新専門研修制度も整備を急いでおり、近々、概要が固まるものと期待しています。専門医制度がしっかりしたものになることは望ましいことですが、提出資料(病歴、経験症例数)の評価、添削、指導を行う指導医の負担増も懸念されます。本業を圧迫しない程度のエフォートで済むことを願っているところです。