海外留学報告

海外留学報告:留学体験記
平成20年卒業  福島 真典

 2016年4月より、アメリカ合衆国ミネソタ州ロチェスターにあるMayo Clinicに基礎研究の留学をさせていただいていますH20年卒の福島真典です。留学より1年経過し、現状のご報告をさせていただきます。


 Mayo Clinicへの留学希望者を募集しているというお話をいただいたのは、私が佐世保市立総合病院で多忙な臨床生活を送っていた2015年の夏のことでした。一生のうちに一度は海外留学をしてみたいという考えはありましたが、留学するには、まず大学で研究をし実績をつくる必要があると思っておりました。当時まだ大学院にも入学しておらず、研究経験の全くない私には留学の話が来ることはないと思っており、想定外で非常に驚いたことを覚えています。しかし経験不問とのことで、このような機会はもうないかもしれないと思い、思い切って留学を希望させていただきました。経験・知識不足でラボの方々には面倒をかけて心苦しいことも多く、やはり本来なら研究のノウハウや実験手技を身に着けての留学がよいとは思いますが、アメリカで一から学ぶことで得るものも多いであろうとポジティブに考えるようにしています。実際こちらに留学されている先生方とお話をすると、さまざまな競争に勝ち抜き、留学の道を苦労して得られた方ばかりで、私とのバッググラウンドの差を思い知らされると同時に、自分の恵まれた環境に感謝せずにはいられません。


 Mayo Clinicは常に全米で最も優れた病院の一つとして評価され、世界中から患者さんが訪れる有名な歴史ある病院です。現在私の所属しているDivision of Gastroenterology and HepatologyのDr Goresのラボは過去には磯本一先生、赤澤祐子先生、宮明寿光先生が留学されていました。このラボは現在胆管細胞癌、PSC、NASHに対する基礎研究を行っており、私はNASHグループのひとつに所属しています。このグループはボスのDr Harmeet Malhi、テクニシャンのAmy、私の3人と少人数であり、フットワークが軽く、相談がしやすい大変居心地のいいところです。私が取り組んでいるテーマは、脂肪毒性により肝細胞から分泌されるexosomeがマクロファージに作用し炎症を起こすという前任者の論文を受け、そのexosomeの合成メカニズムを解析することです。現在も日々こつこつと実験を行い、結果を蓄積しているところです。


 ロチェスターは人口10万人ほどの町で、その4割ほどがMayo Clinicの職員というMayo Clinicが中心となっている町です。そのおかげか、とても治安が良く、家族とともに安心して暮らせます。日本各地からMayoへ留学している方が多く、新年会やバーベキューをして楽しんだり、困ったことがあると助け合ったりできる有難いコミュニティもあります。車で1時間ほど走ればミネソタ州最大の都市ミネアポリス・セントポールがあり、空港からアメリカ全土へのアクセスは良好で、羽田空港への直行便もあり、非常に便利です。難点を言うならば、冬は気温がマイナス20度を下回ることもあり、11月~4月くらいまで寒いことぐらいでしょうか。今年も4月末に雪が降りました。その分夏は気候が良くて日も長く、避暑地として訪れる人もいると聞きます。


 留学に来てよかったと思うことは多々ありますが、ひとつは世界観がガラリと変わったことです。アメリカの広大な大地を目の当たりにし世界の広さを感じるとともに、世界各地からきた様々な人と出会い、より世界を身近に感じるようにもなりました。また、臨床の経験しかなかった時には、病態の解明や新しい診断・治療法の発見などは自分とは次元の違うところで行われている仕事であると思っておりましたが、日々新たな知見を発見・発表している現場に遭遇し、医学の発展はこのような仕事の積み重ねの結果なのだと実感しました。アイデア次第で自分にも何か意義のある仕事ができるかもしれないと思わせてくれるような環境がMayoにはあります。


 最後になりましたが、人手不足で大変ななか、快く留学に送り出していただきありがとうございました。中尾一彦教授をはじめ、医局の皆様には感謝申し上げます。残りの留学期間、悔いの残らないよう勉強し、充実したものにできるよう頑張りたいと思います。

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