国内留学報告

国内留学報告:国立がん研究センター東病院
林 康平

 2019年4月1日より、2年間の予定で千葉県柏市柏の葉にある、国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科でレジデントとして研修させて頂いています。この度は国内留学の便りを書かせて頂く機会を頂きましたので、まだ研修の途中ですが途中経過をご報告します。


 国立がん研究センター東病院は中央病院と並ぶ、日本のがん治療の拠点病院の一つです。当院は各科とも大学の医局の人事がほぼ全くなく、スタッフの半分以上は当院もしくは中央病院でレジデントを経ています。そのため、スタッフが突然やめたり、レジデントも年度によっていたりいなかったりといった感じで、入れ替わりも、かなりあります。
 2019年度より、中央病院・東病院で2年間の正規レジデント研修コースもできました。研修を考えておられる先生がおられれば、正規レジデント(試験あり。正規不合格でも、短期レジデントであれば科長の許可があれば、研修可能)の方が、給与・社会保険等、やや待遇がいいので、そちらを検討してもいいかもしれません。給与面は昔と比べ、だいぶ改善されているようで、時間外業務がほぼつかないですが、バイトをしなくても貯金はできませんが生活は十分できます。
 生活環境面は非常によく、柏の葉は本当に住みやすい街大賞で全国第4位で、子育て世代が多い街です。商業施設や、緑も豊富で、東京(秋葉原)まで普通電車でも40分ほど着き、アクセスも非常にいいです。世帯でこちらにきている先生も多いです。ディズニーランドも車でいけます。


 肝胆膵内科は池田公史 科長を中心として、臨床・研究を日々行っています。朝は毎日7時30分から回診が始まり、病棟業務、検査、カンファレンス(臨床試験・研究)等があります。内科は切除不能の抗がん剤関連の症例だけ?というイメージかもしれませんが、術前・術後の化学療法も内科で行いますし、ほぼ全ての症例において内科と外科で合同で治療方針について決定していくため、肝胆膵癌の治療ストラテジーに関して体系的に学ぶことができます。また、当科の研修の特徴としてはTACE以外は検査・治療(EUS/ERCP関連手技・経皮処置)も全て自分たちで行います(池田科長も時間があればRFA・PTCD等を自ら行っています)。腫瘍生検、 EUS 、FNA 、metal stent(消化管stentも含む)症例は浴びるほど症例があり、firstはレジデントで検査・治療を行います。deviceも砕石関係以外は、ほぼ全種類あるのでFNA針・metal stentの使い分け等も直に使用することで、症例毎の使用感やトラブルシューティングも含め学ぶことができます。
 抗がん剤の導入・AE関連の入院だけでなく、術前や術後の症例、stentトラブル、腫瘍浸潤に関連する合併症など、症例も様々で、とても勉強になります。また、JCOG試験・企業治験の症例も非常に多く、meetingから参加させて頂くことで、今後の治療開発の方向などを含め、いち早く情報を知ることができます。分担医師として69件の試験を経験できました。
 ローテーションの希望があれば、最大で研修期間の半分は他科へローテンションもできます。私の場合は、がん薬物療法専門医の受験のため、必須症例(乳腺・血液・呼吸器・消化器)が必要なこともあり、昨年度は乳腺腫瘍内科・血液内科で2か月ずつ、研修も行いました。癌腫が違えば、治療方法は当たり前ですが、合併症も違ってきますし、消化器癌で稀なoncology emergency の経験やirAE関連の合併症も経験することができました。
 また、病理3カ月、放射線科2か月(肝胆膵症例のみの診断)のローテーションは当科では必須になっており、肝胆膵癌の実臨床だけでなく、病理学的視点、画像的視点からの臨床面・研究アイディア面でも、非常に勉強になりました。
 研究に関してはテーマを与えられるわけではなく、研究カンファレンスで、研究案が通れば、各々、興味があることをやっています。レジデントの多くは後ろ向きの観察研究をしていますが、シニアレジデントの先生などはJCOG副次解析の事務局や、RCTを立案する猛者もおり、切磋琢磨、お互いに教えあったりしています。私の場合は内視鏡(EUS-BD、MHBO)、病理(POCS biopsy)、癌(Intermediate HCC)で後ろ向き観察研究を進めています。めちゃくちゃ怖い指導医の進捗確認のプレッシャーのお陰?で、内視鏡に関してはDDW2020で初めてposter発表まではたどりつけましたが、昨今のコロナ騒ぎでwebになり、GWは病院当番になってしまいました。病理は最初に仕上げたのですが、追加data収集等になり、途中で止めたままになっています。池田科長の直接のご指導の元、HCC関連の研究を今は一番進めています。なんとか論文化まで、たどりつけるように日々、もがいていている毎日です。このように、化学療法だけではなく、手技面、研究面でもOncologyを学ぶにはがんセンターは最高の環境だと思います。


 研修のスタートは、抗がん剤の標準治療以外の薬物療法に関してはわからない、消化管閉塞合併症例・肝門部症例などの胆膵腫瘍関連の複雑な内視鏡治療の経験がほぼない、臨床研究もほぼやったことがない状態で、どこから手を付けたらいいいかわかないくらい、学ぶことが多い状態でした。こちらにきてからは週末の休みもほとんどなく、気づいたらあっという間の1年間でした。臨床や研究も慣れてきたのはつい最近です。この一年間を振り返るにあたり、研修医の時から長崎大学消化器内科関連の多くの先生方に、今までは基本的なところから手取り足取り、温かくご指導をして頂いていた環境であったと感じ、改めて感謝申し上げます。
 当院でのレジデント研修終了後に、少しでも何かを還元できることができるように、長崎大学消化器内科の皆様に与えられた残りの時間を大事にしながら残りの研修を続けていきたいと思います。

院内の敷地にて、HP用集合写真。