三馬 聡 |
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2010年8月より、米国オハイオ州コロンバスにあるオハイオ州立大学Comprehensive Cancer Centerへ後輩の柴田先生のあとを引き継ぐ形で留学させていていただいている三馬です。私は大学卒業後、長崎大学第一内科へ入局、5年目より消化器内科を専門として臨床に従事していましたが、7年目より大学院生として大学に戻り、大学院卒業時には無事博士号も取得できました。ただ再び臨床に戻る前に、もう少し実験、研究をやりたい気持ちがあり、今回留学させていただくこととなりました。大学在学中は多くの面で諸先生方に御迷惑ばかりおかけしていましたが、この度は快く留学へと送り出していただき本当にありがとうございます。実験、研究をもう少しやりたい気持ちとともに、今回留学したいと考えさせられたもう一つの大きな契機は、2年前のサンフランシスコで行われたAASLDに参加したことでした。今まで写真やテレビでしか見たことがない海外の人々、風景が目の前にあり、何も分からないことだらけであることが、非常に不安であるとともに逆に非常に刺激的に感じました。世界が広がる、とはこのことだと、よくいえば冒険心です。留学前大学在学中に後輩に、「留学って不安じゃないですか?」と聞かれ、「まぁ不安だけど、ドラクエで言えば船を手に入れるような気持ちだよ」などとうそぶいていましたが、これは半分は本当です。 |
東日本大震災レポート(米国オハイオ州から)
私は今回、東北大震災を留学中のオハイオ州の地で知った。こちらでも甚大な被害について繰り返し報道され、震災数日は震災の報道一色であった。今なお、原発の問題については専門家を交えて現況に対する分析がニュースで報道されている。我々の日常生活は、関東地方などからの郵送が制限されているなどのごく限られたものであり大きな変化はなかったが、私が働くオハイオ州立大学、及びオハイオ州では、様々な催し、募金活動が行われている。今回の大震災における周囲の反応、及び自身が感じることについてご報告いたします。
大震災直後より、アメリカ合衆国、及びオハイオ州、オハイオ州立大学にて、多くのガレージセール、コンサートなどの催し、募金活動が行われており、オハイオ州立大学、及びオハイオ州立大学日本人会を通じ、多くのメール、案内が届いた。下記以外でも多くの活動が現在も行われている。
オハイオ州立大学での募金活動
3/24/11: Candlelight Vigil (ともしびの集い), Thomas Worthington High School
3/14-18/11: Sup4/25: Cranes for Kids: Giving Hope to the Children of Japan (折鶴プロジェクト)
アメリカでも震災直後より、テレビでは連日震災関連のニュースが流されていた。壊滅的な被害を受けた被災地の映像が繰り返し流されるとともに、特別番組も組まれその被害の大きさについて大々的に報道されていた。また震災直後、すぐにオバマ大統領や政府高官と思われる人々より、日本支援の姿勢が打ち出されていた。その一方、甚大な津波による被害と比較し日本の建造物の倒壊の少なさにも触れ、耐震性の高さについて驚きをもって報道されていたようである。耐震技術に優れた日本の建物でなければより被害は拡大していたであろう、と言った論調であった。被害の状況が詳細になるとともに、次第に原発問題がクローズアップされていった。日本政府の対応に関しては残念ながらあまり好意的に報道されてないような感じである。日本政府が原発周囲12マイルの避難勧告範囲を設定したのに対し、アメリカ政府は50マイルに設定していることも報道されていた。原子炉の状況は図説も交え詳細に報道され、地震より約一ヶ月以上経過した今日でも、専門家とともに現況分析、チェルノブイリ原発事故との比較などが行われている。アメリカのある州では、ごく微量の放射能が検出されヨウ素の買い占めが起きていることが報道されていた。これについて医師がもともと極微量は検出されており、今回検出されたものも極微量でヨウ素の必要性は全くない、と正していたが、放射能についてはアメリカ人も非常に敏感になっていることが伺われる。ちなみにテレビで見る限り、被災市民への取材はほとんど日本人に対しては行われておらず、日本に在住するアメリカ人に対する取材がほとんどであった。
職場の同僚は、日本の建物の耐震性の高さに感心していた。そしてなにより、暴動、略奪が起こらない、日本人の混乱しない、我慢強い、秩序だった行動に非常に驚いており、アメリカではあり得ないよ、と話していた。私が通っている英会話の先生も、クラスのディスカッションの中で、”Sympathy for Japan, and Admiration(日本への同情と尊敬の念)”と書かれたニューヨークタイム誌のコピーを配り、そのことにについて賞賛されていた。多くの国々の人々と行動を共にしてみると、改めて日本人と外国人の国民性の違いに気づかされるが、その中で日本人の自己主張をしない消極的な国民性といったものは決して評価されないよう感じる。沈没しつつある客船の船長は、女性と子供以外は船に残るように求める時、米国人には「あなたは英雄になれる」、英国人には「残れば紳士です」、イタリア人には「女性にもてます」、そして日本人に対しては「みんな残ります」と言う、といった有名なジョークがあるほどである。ただこの国民性は、他人を尊重し、我慢強いといった日本人の国民性とまた表裏一体のものでもある。その国民性によって保たれた震災における一般市民の秩序が非常に評価、賞賛されることに日本人として私は非常に誇らしさを感じたが、その一方で少し不思議な感じもした。
今でも震災の話は同僚との間で時に話し、これから日本はどうなるのだろうかと言う話になる。また原発の問題が将来の復興に対する大きな障害であることは周知の事実であり、関心も高い。その中で今後の震災からの復興を願う気持ちというものは、日本人も外国人に何ら相違ないのは間違いないようである。最後に、震災直後にいただいた英会話教室の先生からのメッセージ、および職場の同僚からのメッセージを添付いたします。
At this time, I would like to extend my sympathy and condolences to you on the current tragedy in Japan. You are safe here, but I hope that all of your family is safe. The pictures on TV are unbelievable, something out of a Hollywood movie. The suffering and destruction are more than anyone can bear, yet I see the Japanese people have courage and are working closely together to help each other. Know that the world will help and that the Japanese people are resilient and will come through this tragedy stronger than ever.
I knew the recent Japan earthquake and tsunami right after it happened. I am very sorry about this and hope that Japanese who suffered from the disaster can recover as soon as possible. Congregations in my Chinese Christian church in Columbus are praying for the victims and initiated a donation designated to help Japan. I am also aware of the leakage of nuclear radioactive material as a result of the earthquake. I wish this issue can be solved soon and the damage can be contained.
Sincerely yours, |
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