国内留学報告

国内留学報告:国内留学体験記
岡村 卓真

 2019年4月より国立がん研究センター中央病院に留学させていただいております。私は消化管内視鏡科にてレジデント2年正規コースで研修をしております。このコースでは内視鏡科をメインとして2か月は義務の集中治療科をローテートし、その他は病理診断科や関連科へ数か月ローテートすることが出来ます。私は2年間で内視鏡科14か月、病理診断科8か月、集中治療科2か月のローテートを行う予定としております。
 1年目の2か月と2年目は内視鏡科での研修を行っております。基本的には内視鏡検査・治療漬けの毎日です。朝・夕は基本的にカンファレンスが開催されており、内視鏡科内カンファレンスと外科合同カンファレンスがあります。外国人留学生がいる際には一部カンファレンスは英語となります。(現在はコロナウイルス流行に伴い外国人留学生はいません。) 日本有数の先生方の考え方を聞ける良い機会となっております。また、内視鏡科だけではなく外科の先生方の考え方も聞けることで考え方の幅が広がったように感じます。
 残念ながら、コロナ渦の状況であり検査・治療が現在は少なくなっておりますが、その分臨床研究や企業合同機器開発など様々な経験をさせていただいております。コロナ渦で発表機会もほとんどなくなっておりますが、コロナウイルス流行前の昨年12月に関東IIc研究会では発表の機会を頂き、最優秀賞でipadを景品で頂きました。
 8か月ローテートさせて頂いた病理診断科では、病理の基礎知識から分子生物学まで深く勉強させていただきました。当病院の消化管病理を牽引する関根先生はWHOの消化管病理の規約委員を務められ、2019年に発売されました第5版では多岐にわたり規約の執筆をされております。そのような先生から多くのことを直接学べたことは大変貴重な体験となりました。関根先生の主な研究分野は「癌の前駆病変」で、最近ではTSAの前駆病変であるSuSAの発見等をされております。分子病理学を学ぶに従って癌の根本的な治療をするには癌の成り立ちを理解することが重要であると考えるようになりました。癌の歴史を学ぶうちに私自身も分子病理学に興味を抱き、「FAP患者にできたTSAの特徴」という研究課題を与えていただきました。実際にポリープから抽出した遺伝子を解析することで散在性のTSAとの差異を研究し、American journal of surgical pathologyに原著論文として掲載されました。
 このように日本有数の施設で内視鏡に関する癌関連のみを集中して勉強できる機会は本当に貴重だと感じました。この経験をさらに深めて、今後は長崎大学に還元していけたらと思っております。最後になりましたが、留学を許していただいた中尾教授をはじめ、医局の皆様に厚く御礼を申し上げます。