国内留学報告

国内留学報告:国内留学体験記
髙橋 孝輔

 平成23年卒の髙橋孝輔と申します。2019年4月より富山大学に留学させて頂いております。現在も富山で日々楽しく過ごさせて頂いております。


 富山大学で留学しようと思った理由は、胆膵疾患で国際的に活躍されている安田一朗教授がいらっしゃったことです。キッカケは今から7年前に当時帝京大学の教授であった安田先生が長崎に講演しに来られていたことで、私の尊敬している大場一生先生に講演会・飲み会に連れていってもらったことから始まりました。留学できるかも分からないのに身の程をわきまえず、ビクビクしながら安田先生に「将来いつか留学できたらと思っているので、もし可能だったらその時はよろしくお願いします」と挨拶したことを覚えています。その後、中尾一彦教授、山尾拓史先生、大仁田賢先生など多くの先生方のお力添えもあって、国内留学が現実のものとなりました。この場を借りて深謝申し上げます。 最初は帝京大学で留学する予定でしたが、留学手続きもほとんど終わって住居も決まっていた矢先に、安田先生が急遽富山大学第三内科の教授に就任することが判明しました。突然の展開に最初は驚きましたが、安田先生から学びたい気持ちは変わらず、都会を諦め雪国へ家族と一緒に行くことにしました。


 安田教授が赴任される前の富山大学は胆膵疾患をほとんど扱っておらず、EUS・ERCPの年間件数はそれぞれ80件、120件程度でした(2017年度)。胆膵スタッフも教授と私含めて3人しかおりませんでした。しかし、2018年9月に膵臓外科で有名な藤井努教授とともに、富山大学に日本初の「膵臓・胆道センター」が開設され、症例数は急激に増加。全国からの紹介が相次ぎ、2019年度のEUS・ERCP件数はそれぞれ600件・500件程度まで達し、今後もさらに発展していくものと思われます。
話は変わりますが、富山は「雪の大谷フェスティバル」が有名な立山連峰・黒部ダム・世界一美しいスターバックスコーヒー店など観光地が多いです。ホタルイカ・白エビ・寒ブリなどの海産物や有名な日本酒もあり、是非一度は足を運んでみてはいかがでしょうか。


 今回の留学で良かったと思っていることは(現在も留学中の身ですが)、胆膵スタッフが少ないことで、かえって有意義な時間を過ごせていることです。私の留学での目的は大きく二つあります。一つ目は、超音波内視鏡検査(EUS)に関する手技(EUS-FNAやInterventional EUS)を学び、今後の診療に生かすこと。二つ目は、臨床研究や執筆などのスキルを学ぶこと、です。

 一つ目に関しては、処置日の月曜日・木曜日はEUS(FNA)の症例を安田先生と半分ずつ、ERCP(POCS・POPS含む)は自分が術者で教授が介助というパターンが多く、大変勉強になっています。その他、内視鏡的乳頭切除術や術後腸管のダブルバルーン内視鏡下ERCPに関しても、安田先生や小腸班の先生方にご指導頂いております。Interventional EUSに関しては、私にとってまだまだ敷居が高く、ミスして怒られないように必死に安田先生の介助をしております。また、国内のEUS・ERCPライブに助手として参加したり、2019年12月には中国の南京鼓楼病院に出張してきました。その際に、EUSの講義と実技講習をさせて頂く機会を得ることができ、緊張しましたが非常に良い経験でした。

 二つ目に関しても、スタッフが少ないため、雑誌への執筆依頼が舞い込みます。私にとっては有り難い限りです。現在、消化器内視鏡という雑誌を中心に2編寄稿でき、その他4編寄稿予定であります。論文を読むのは大変ですが知識をupdateでき、大変勉強になっています。臨床研究に関しては、EUS-FNAの穿刺におけるストローク回数に関する多施設共同ランダム化比較試験や、膵癌の網羅的がん遺伝子解析におけるEUS-FNAの検体採取の実態調査研究、などに取り組んでいます。消化器内科医になって一度も大学で働いたことのなかった私にとっては、初めてのことばかりで壁にぶつかることもたくさんありますが、安田先生のご指導や同期・後輩の支えもあって楽しく過ごすことができています。

 総じて自分の目的に沿った留学ができており、大変幸せに感じております。それと同時に、留学後の経験をいつか還元していきたいと感じています。

 最後になりましたが、このような貴重な機会を頂いた長崎大学消化器内科の全ての方々に心から感謝申し上げます。帰ってきた際には長崎に少しでも貢献できるように精進致します。