法医解剖においては、死因究明のために各種組織病理検査、薬物検査などを行っています。しかし、現在医学の進歩とともに新たな疾患の診断が必要になってきています。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)技術の確立により、胚性幹細胞(ES細胞)と同等の能力を有する多能性幹細胞を体細胞から作製することが可能となりました。応用例として既に、疾患患者から樹立したiPS細胞を用いた研究が行われ、iPS細胞を樹立することで病態解明、新規治療法開発、創薬研究へ資する成果が得られています。
本研究では、突然死症例より組織(皮膚・臓器・血液・体液等)を採取し、iPS細胞を作成します。オリジナルの検体(「生前の状態」)とiPS化した細胞(「生前を再現した状態」)を比較・利用することで、「死後に生前を再現する」ことができ、これにより、従来の研究対象(患者から採取する細胞、モデル細胞株、動物モデル)では得ることが困難であった新規の知見が得られ、多くの疾患患者にとっての福音となることが期待されます。
利用する検体:
解剖時に採取した皮膚・臓器・血液・体液等および抽出したDNA・RNA、作成した培養細胞。
および、培養細胞より樹立したiPS細胞、さらに分化した各種細胞。
解析項目:
代謝関連;ウエスタンブロット法、細胞外フラックスアナライザー、分光光度計等を用い、ミトコンドリア機能等の代謝疾患関連機能解析等
生化学関連;一斉生化学測定機器を用いた一般生化学検査等
薬物関連;GC-MS等を用いた薬物定性・定量検査等
電気生理関連;イオンチャネル解析等
遺伝子関連;突然死関連遺伝子(代謝疾患・不整脈等)解析(既に論文・学会等で突然死に関連があると認められた遺伝子のみの解析です。全ゲノム解析は行いません。) |