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診療内容と実績

長崎大学病院における腹腔鏡手術について

 昨今、「腹腔鏡手術」に関する報道が目を引きます。実際、患者さんは言うまでもなく、関連病院や医療関係者からの問い合わせが増えたように感じています。確かに、腹腔鏡手術は「高度な技術」と「豊富な経験」、そして「チームとしての力量」が問われる高度な医療行為であることは間違いありません。実際、日本泌尿器科学会および日本泌尿器内視鏡学会では「腹腔鏡技術認定制度」を作り、その技術向上と普及に取り組んでいます。一般に専門医や認定医が書類審査のみで認定されることが多いのに対し、 「腹腔鏡技術認定制度」は実際の手術を録画したビデオを、十分な技量と実績を持つ医師が見て、安全に腹腔鏡手術を行えるのかどうかを審査するものです。その合格率は50%程度であり、肩書きや受験回数などは関係なく、技術のみが審査されます。もちろん、学会に入会しているだけでは、「腹腔鏡技術認定医」とは認められません。

 長崎大学病院泌尿器科では、長年「腹腔鏡手術の技術向上と標準化」に取り組んでいます。手術後の回復や痛みは、従来の開放手術よりも明らかに腹腔鏡手術が優れており、このことは世界的にも認められています。そのため、腎臟や副腎の摘出手術は言うまでもなく、腎臟の部分切除や膀胱全摘除術、さらには、小児の手術や尿失禁の手術でも積極的に腹腔鏡手術を行っています。そして、そのような高度な医療技術を若手医師が勉強し、上級医もさらなる技術の向上をはかるために、週に1回、「ビデオ・カンファランス」を行っています。そこでは、前の週に行われた腹腔鏡手術のビデオを医局員全員で一緒に見ながら、その見習うべき手技や問題点を議論します。このことで、医局員全員が同じ認識のもと、チームとして高いレベルの手術を行うことができます。
事実、「泌尿器腹腔鏡技術認定制度」の合格者が毎年着実に増え、長崎大学病院泌尿器科には2021年現在、8名の 「泌尿器腹腔鏡技術認定医」が常勤しています。

 腹腔鏡手術に必ず技術認定医が参加するのは言うまでもなく、困難な手術が予想される場合には、手術に参加する全員が技術認定医という体制を取ることもあります。また、「大学病院では若手の医師が執刀するのでは?」と不安の声を伺います。私達は、若手医師の教育も重要視しており、積極的に手術に参加させますが、自立した執刀医になるまで段階的な指導体制を取っています。また、「手術の難易度」や「全身状態」などを考慮して術者を決めるとともに、必ず複数の「泌尿器腹腔鏡技術認定医」がサポートし、安全を確保できる体制を取っています。 長崎大学病院泌尿器科では、今後もより安全で、より高度な腹腔鏡手術を行うために医局員全員が修練を重ねていく所存です。