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副腎腫瘍:腹腔鏡下副腎摘除術(LAD)

腹腔鏡下副腎摘除術(LAD)とは

副腎は腎臓の上に存在する小さな臓器です。
右副腎は横隔膜、肝臓、右腎、下大静脈、腸管などに取り囲まれるように存在しています。左副腎は横隔膜、脾臓、膵臓、左腎、腹部大動脈、腸管などに取り囲まれるように存在しています。このように副腎は様々な臓器に取り囲まれて体の中心に存在しており、開腹手術で摘出していた時代には大きな切開で小さな副腎を摘出しなければなりませんでした。
このような中1992年に新潟大学で世界初の副腎腫瘍に対する腹腔鏡下手術が行われました。その後副腎腫瘍に対する手術は腹腔鏡手術が標準治療となり、手術の劇的な低侵襲化がもたらされました。
副腎腫瘍に対する腹腔鏡下手術では腹部に4~5個のポートと呼ばれる小さな穴をあけ、そこから手術用の鉗子などの器械を挿入して手術が行われます。
副腎腫瘍にはホルモンを分泌する機能性副腎腫瘍と、ホルモンを分泌しない非機能性副腎腫瘍があり、機能性副腎腫瘍を摘出する際には手術の前に準備が必要な場合があります。

① 原発性アルドステロン症 術前にアルドステロンの働きを抑える薬を内服しておく必要があります。術後にこの薬は中止します。

② クッシング症候群 片方の副腎からコルチゾールが過剰に分泌されている場合、脳下垂体からのACTHの分泌が低下します。このためもう片方の副腎からはコルチゾールが分泌されなくなります。クッシング症候群の術後にはコルチゾールの分泌が一気に低下するため補充する必要があります。

③ 褐色細胞腫 褐色細胞腫では副腎から過剰なカテコラミンが分泌されているため全身の血管が収縮し、体内の水分が非常に少ない状態になっています。この状態で腫瘍を摘出すると、術後に一気に血管が拡張しますが、体内の水分が少ないため血圧が低下してしまいます。このことを予防するために褐色細胞腫の術前にはカテコラミンの働きを抑える薬を内服する必要があります。

長崎大学の実績

長崎大学では1995年より腹腔鏡下副腎摘除術が開始され、233例の腹腔鏡下副腎摘除術が行われています。
患者さんの平均年齢は55.9歳、女性が56.5%で男性よりやや多く、左側が57.1%で女性よりやや多い結果でした。
腫瘍は小さいものから18cmと大きなものまでさまざまでしたが平均3.3cmのサイズでした。
疾患別にみると、原発性アルドステロン症35%、クッシング症候群22%、褐色細胞腫24%、悪性腫瘍8%、その他11%でした。
手術時間は平均226分、出血量は平均100mlでした。