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腎細胞癌(腎がん)
腎細胞癌(腎がん)とは
人間には肋骨の下の高さでお腹の中やや背中側に腎臓が左右1個ずつ存在します。
ソラマメのような形をした、成人の握りこぶしよりもやや大きい臓器である腎臓には、血液によって運ばれてきた体内の老廃物をこして、不要なものを尿として排泄する働きがあります。その他、血圧をコントロールするホルモンや血液をふやすホルモンを作ったり、ビタミンの働きを活発にする機能があります。
腎臓には尿細管という細い管があり、ここでは糸球体という細い血管でつくられた尿のもとから水分やさまざまな物質を吸収したり老廃物を排泄したりして尿をつくります。この尿細管の中に発生したがんを、一般に腎細胞がん(以下、腎がん)と呼びます。これに対して腎臓でつくられた尿が流れる通路(腎盂)をおおっている粘膜からできるがんもあります。同じ腎臓からできるがんですが、腎盂がんといわれ、ここで説明している腎がんとはがんの性質も治療法もまったく異なります。
腎がんは50-70歳が好発年齢であり、10万人当たりの発生率は男性で7人、女性で3人くらいです。近年、腎がん患者の増加率は上昇しています。(男性約16000人/年、女性約8000人/年)。
腎がんの症状
腫瘍が小さい場合、無症状であることがほとんどです。そのため近年では、健診での超音波検査やCTにより、偶然発見されるケースが増加しています。腎がんの検出に有用な、腫瘍マーカーは存在しないため、血液検査で発見することは困難です。
腫瘍が大きくなると、血尿、腹部のしこり、痛みが出現してきます。また全身症状として、体重減少、発熱、貧血をきたすことがあります。
腎がんの4人に1人は肺やリンパ節や骨などに転移が発見されるといわれており、これらも進行すれば呼吸困難や痛みなどの症状が出現することがあります。
腎がんが、一度転移すると、根治することは極めて困難であるため、早期発見のためにも健診を受けることが大切です。
腎がんの診療案内・地域連携外来
- 火・木曜日午前:新患外来(酒井・宮田)
- 金曜日午前:地域連携外来(大庭)
腎がんの診断
超音波検査は簡便な検査で、健診でも施行できる検査です。超音波検査などで腎がんが疑われる場合は、必ず泌尿器科専門医の診察をうけましょう。
腎には腎がん以外にも腫瘍性病変が発生することもあるため(良性腫瘍、腎盂腫瘍)、より正確に診断するために造影剤を併用したCT検査が有用です。
また、病変の進展や転移を確認するために胸部CT 、MRI、骨シンチグラムを施行することもあります。
がんの進行度によって、治療方針が変わるため、一般にステージ診断を行います(図1)。
特殊なケースでは皮膚から腫瘍に針を穿刺して組織を採取し、顕微鏡下に診断を行う場合があります。これを組織生検と言います。
腎がんの治療
A:ロボット支援下腎部分切除術
がんが小さく(一般には4cm未満)、腎臓の正常な部位を温存することが可能な場合や、がんを腎臓ごと摘出した場合に腎不全による透析を要するケースでは、腎臓からがんの部分のみを切除する本術式が適応となります。
腎摘除術より技術的には難易度が高いですが、患者さんへの利益は大きいことが知られています。
B:腹腔鏡下腎摘除術(図2)
腎部分切除術(上記A)が適応とならない場合、腎臓をがんとともに一括して摘出する本術式が一般的な治療となっております。
C: 根治的腎摘除術(開腹)
がんが大きすぎて(10cm以上)腹腔鏡下手術が困難な場合や、過去に大規模な腹部手術の既往がある場合、またがんが静脈に進展し下大静脈に至る場合は、上記A・Bが困難であるため開腹手術を要することがあります。
D:がんが転移している場合
がんの状態にかかわらず、可能な限り上記A~Cの方法を優先するのが一般的です。
転移病巣が1箇所で、かつ外科的に摘除が可能であれば、転移病巣の合併切除も有効な場合があります。その他、がんの転移に対する治療は下記のとおりです。
- 分子標的治療:
がんの増殖や血管の増殖に関わる因子を抑えることで、抗腫瘍効果を発揮するものです。内服薬での治療が中心で、多くの方は通院で治療を行っています。 - がん免疫療法:
がんが免疫機構から逃れる機序に対し、それを阻害することで、リンパ球等ががんを攻撃するような治療となります。患者さんによって、がんの悪性度や進行度が異なるため、これらの治療効果は一定していませんし、適している治療方法も異なる場合があります。また、治療経過によって、次々に治療薬を変更していくこともあるため、詳細な治療方針につきましては、個別に検討する必要があります。
腎がんの治療(施術名称)
- 腎摘除術(原則腹腔鏡下。大きい場合、下大静脈進展などでは開腹手術)
- 腎部分切除術(ロボット支援下、腹腔鏡下)
長崎大学泌尿器科の特色
腎がんの診療においては、診断から治療まで幅広い知識と経験を必要とします。当院の特色は、どのような腎がんであっても対応できる施設であるということです。腎がん診療において重要な関係がある腎機能の管理については血液浄化療法部と連携しており、進行がんに対する拡大手術、腹腔鏡やロボット支援下手術といった低侵襲で腎機能温存を目指した手術、そして分子標的治療や免疫チェックポイント治療まで、幅広い治療経験が豊富にあります。
常に最先端の医療を取り入れつつ、各患者さんに適した治療を提供し、全ての患者さんが安心して治療に臨めるよう心がけています。
関連リンク
- がんのきほん by メディカルノート(腎臓がんのステージ・病気の進み方・悪化の仕方)
https://www.gan-info.com/309.6.html - 京都大学医学研究科 泌尿器科学教室(体腔鏡手術について)
http://www.urology.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/disease/taikoukyou/taikoukyou.html