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腎不全と腎臓移植

腎不全とは

腎臓は

  1. 体液(体内で必要となる水分)のバランスを保つ。
  2. 尿として老廃物を排泄する。
  3. 血圧の調整・造血・骨の代謝に関連するホルモンを産生する。

など体にとって様々な機能を担う非常に重要な臓器です。
腎機能障害とは各種疾患により腎臓の機能が悪くなること、腎不全とは腎機能障害が進行し、十分な腎臓の機能が維持できなくなる状態のことを言います。
腎機能障害が進行し、腎不全となると、体内の生理的なバランスが悪くなるため、いろいろな症状が出現します。
さらに進行し、腎臓の機能がゼロに近い状態になると生命の危機となることもあります。

腎機能障害はいろいろな原因で生じます。以下のような疾患があります

  1. 慢性糸球体腎炎(自己免疫疾患やある種の感染症などが原因で糸球体が機能しなくなる)
  2. 糖尿病や高血圧などの生活習慣病の悪化
  3. 遺伝性の病気(多発性嚢胞腎など)
  4. 先天性の疾患(低形成腎、膀胱尿管逆流症、先天性ネフロン瘻など)
  5. その他(尿路感染症、薬剤性、腫瘍性など)

比較的高齢の方では生活習慣病の一種である糖尿病や高血圧の悪化が原因で腎不全となる方が多くなっております。
特に最近では糖尿病が原因となる腎機能障害(糖尿病性腎症)による腎不全のために透析療法が必要となる患者さんの数が増加傾向となっています

腎不全の症状

腎不全が進行すると、正常な尿の排泄ができない、あるいはホルモン産生の低下などにより以下のような症状や病態を生じます。

  1. 尿毒症症状(老廃物の蓄積による吐気・めまい・食欲低下・全身倦怠感などの出現)
  2. 水分の貯留(尿量低下によるむくみ・血圧上昇・心不全・肺水腫による呼吸困難)
  3. 電解質異常・酸塩基の異常(高カリウム血症による致死性不整脈など)
  4. ホルモンの産生低下や異常による貧血・骨の形成異常・血圧の異常

その他にも関連するいろいろな症状や病態を呈してきます。

腎不全が進行し、治療せず放置すると生命の維持も困難となります。
そういった状況では透析療法あるいは腎臓移植といった腎臓の代わりをする治療(腎代替療法)が必要となります。

腎不全の診断

腎機能障害あるいは腎不全の診断は主に血液検査、尿検査、画像検査などにより行われます。その診断は、症状がある場合と無症状で発見される場合があります。

診断の流れ

  1. 症状がある場合
    症状が出現➡かかりつけ医を受診➡血液検査・尿検査などでスクリーニング検査➡腎機能障害の診断➡専門医へ紹介
  2. 無症状の場合
    検診で腎機能障害の可能性を指摘➡必要に応じて専門医へ紹介
    他の病気を調べていたら腎機能障害を指摘➡必要に応じて専門医へ紹介

診断の際に行われる検査やその内容

  1. 問診
    腎機能障害に関連する症状が他にないかあるいは、腎機能障害の誘因の有無などを調べます。必要に応じて、誘因や原因疾患の治療を優先することがあります。
  2. 血液検査
    血清クレアチニン・血清尿素窒素の上昇の度合いにより、重症度や治療の緊急度を評価します。
  3. 尿検査
    血尿や蛋白尿の有無を調べます。血尿の有無あるいは蛋白尿の程度は腎機能障害の原因や程度を把握するのに有用です。
    *血清クレアチニンから推定されるeGFRと蛋白尿の程度から腎機能障害の程度を分類して(慢性腎臓病におけるCKDステージ分類)、治療方針が検討されます。(図1)
  4. 画像検査
    超音波検査(エコー検査)やCT検査により、腎機能障害の程度や原因を調べます。
    腎臓が萎縮してないか、尿の停滞や通過障害がないかなどの評価を行います。腫瘍や結石などのよる通過障害が原因となることがあります。その場合は泌尿器科へ紹介となり治療が行われることがあります。
  5. 腎生検(腎組織採取)
    最終的に確定診断を行うあるいは治療方針を決定する時に行われることがあります。ただし、体に負担がある検査ですので、検査を行うかどうかの適応については専門医の判断が必要です。

以上のような問診あるいは各種検査により診断や治療が行われます
特にCKDステージ5の場合(eGFRが15未満)の場合は、末期腎不全と呼ばれ、透析療法や腎臓移植といった腎代替療法が必要となります(図1)

腎不全の治療(腎代替療法について)

前述したとおり腎不全が進行すると、透析療法あるいは腎臓移植といった腎臓の代わりをする治療(腎代替療法)が必要となります。
透析療法には血液透析と腹膜透析があります。
血液透析は体内から血液を取り出し、血液から不必要な老廃物と水分を除去し(血液を浄化して)体内に戻す治療です。通常は週3~4回の透析病院への通院治療が必要となります。
腹膜透析はお腹の中(腹腔と呼ばれています)にカテーテルという特殊な管を挿入して、その管を使用して透析液を出し入れすることにより、不必要な老廃物と水分を除去します。

透析療法では体液バランスの調整および老廃物の処理は可能ですが、それでも十分とは言えません。
また腎臓の産生するホルモン(造血や骨の代謝に関係するホルモンなど)は補充できません。
腎臓移植は正常に近い腎臓の機能が回復し、透析療法と比較して、QOL(生活の質)と生命予後の点でメリットが大きい治療と考えられています。
(図2)に透析療法と腎臓移植の違いについてまとめています。

長崎大学病院泌尿器科の特色

長崎大学における腎臓移植 長崎大学では腎代替療法の一つである腎臓移植を積極的に行っております。
1965年に1例目が行われ、2018年までに献腎移植83例、生体腎移植170例、合わせて253例行いました。(図3)

献腎移植と生体腎移植 移植を受ける方をレシピエント、臓器提供する方をドナーと呼びます。
健常者から腎臓の提供を受ける生体腎移植と、亡くなられた方からの臓器提供による献腎移植があります(図4)

長崎大学における取り組み(腎臓移植について) 長崎県内には腎臓移植施設が2箇所(長崎大学と長崎医療センター)あります。当院は長崎医療センターと協力して、移植医療を推進しています。
長崎県は献腎移植の割合が高く、行政機関などと協力して献腎提供の普及・啓発活動にも取り組んでいます(図5)

また以前は医学的に適応外とされていたABO血液型が合わないABO血液型不適合移植(図6)を積極的に行っております。当院における適合移植と不適合移植の治療成績は同等です。
そのほか、最近は透析が必要となる直前に生体腎移植を計画して行う先行的腎移植を受けられる患者さんも増えています。透析を経ないで移植を受けますので、長く透析を受けることによる合併症が少なく、治療成績も良好です。また透析を受けなくて済むメリットもあります。
生体腎移植では、ドナーの方が腎臓提供後に支障のない生活が送れるように、手術前に十分なチェックを行い、適応を判断します。当院では、ドナーの方の腎臓を採取する手術は、腹腔鏡手術を行い、体の負担を軽くして、術後の早期回復に努めています。

私たちは、腎臓移植を希望される方に、情報提供を行い、腎臓移植を計画しています。具体的な流れは(図7)をご参照ください。
また実際に話しを聞きたい場合には透析担当医や腎臓内科などの主治医に相談していただく、または長崎大学病院泌尿器科・腎移植外科にご連絡ください。

腎移植の診療案内・地域連携外来

腎移植専門外来

  • 望月保志:木曜 9:00-12:00, 14:00-16:00
         金曜 9:00-12:00
  • 中西裕美:金曜 9:00-12:00

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