近年、法医学分野へのCT画像装置の導入がすすみ、実務や研究に活用される機会が増えて参りました。しかしながら、法医学の視点での画像に関する知識・情報の共有・議論の場が、まだ少ないのが実情です。そこで、画像に興味のある法医学分野の先生方、また、法医学に興味・理解のある臨床の先生方に集まっていただいて、画像に関する知識・情報交換の場として、法医画像勉強会を実施しております。
法医学は、法医解剖のイメージが強く浸透しており、死体だけを対象とした分野であると誤解される事があります。しかし、実際には、それのみではなく、生体も法医学の対象です。創傷鑑定などは、死体と同様、生体の損傷も扱います。ただし、法医学の視点というのは、治療ではなく、成傷機序や成傷器の推定となります。この点が臨床医学との大きな違いになります。そして、これら法医学的所見は、加害や過失の事実を立証するため、刑事裁判においては非常に重要であり、かつ、社会にとって有意義なものになります。その為、法医学はかつて裁判医学と呼ばれていました。また、画像と法医学のつながりは、近年始まったわけではありません。レントゲン博士がX線写真撮影に成功した翌年には医療過誤事件の裁判でX線写真が証拠として扱われました。日本でも、古くから、法医剖検室には、レントゲン撮影装置が設置されており、骨折、異物、骨端線等の確認を行っていました。このように、法医学と放射線医学との関係は古く、さらに今後は、他の臨床科とも連携していくことが重要と考えられます。
本勉強会では、法医学が生体をも扱うのと同様に、死後画像だけではなく、生前(生体)画像においても法医学的視点での読影を学ぶ必要があるという理解の上、「法医画像」というカテゴリーで、CT、MRI、超音波と様々な画像を扱います。
法医学に興味と理解をお持ちの先生方に集まって頂き有意義な勉強会になることを望んでいます。法医学者だけでなく、放射線科をはじめ、多くの臨床の先生方にご参加頂き「法医画像」を共有し議論したいと考えております。
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