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ホーム九州法医学ワークショップ平成27年11月21日ー 11月22日>千葉大学:矢島大介先生


SESSION 5:地域ごとに異なる法医学の魅力
地域ごとに異なる法医学の魅力 ~千葉と旭川~

  千葉大学 矢島 大介 先生

 私は千葉大学と旭川医大の2 つの大学の法医学教室に勤務し、地域によっ て様々な特徴があったのでそれらについて紹介したい。千葉大学法医学教室 は千葉県内の唯一の法医学機関で、首都圏に属することから約600 万人の人 口を対象とする。旭川医科大学法医学講座は北海道内の3 つの法医学機関の うち最北に位置し約165 万人の人口を対象としている。千葉大学法医学教室 の職員数は28 名で大学院生を含め医師が10 名、年間解剖数は約350 例、 旭川医大法医学講座の職員数は13 名で医師は3 名、年間解剖数は約200 例 である。千葉県の異状死体は年間約7000 体でその約4%で法医解剖が行われ るのに対して、北海道も約7000 体ですが、千葉県の倍であるその約8%が解 剖されている。この違いは単に警察の意識や慣例によるもので、千葉では事 件性のあるものや疑わしいものをかなり選抜して解剖を依頼してくるのに対 して、旭川では自殺を含め事件性は薄いと思われるものも広く解剖を行うと いうことが要因と推測される。そのため解剖事例の特徴は、千葉は首都圏に 位置し犯罪が比較的多く、裁判員裁判になるような凶悪犯罪事例や覚醒剤中 毒事例が多く、それに対して旭川は都市部が少ないため、凶悪事件事例は少 なく薬毒物中毒や入水など自殺と推定される事例が比較的多いことである。 地理的には千葉は河川と海に囲まれていることから水中死体が比較的多く、 旭川は寒冷地であることから凍死が比較的多い。この特徴を生かして千葉で は溺死の診断に関する研究を、旭川では凍死の診断に関する研究に携わるこ とができた。千葉大学法医学教室は体系的に法医学者を養成するために法医 6 部門(法医病理学、臨床法医学、法医中毒学、法医遺伝学、法医画像診断学、 歯科法医学)を立て、各分野の専門性を確保するとともに共同して研究・業務 を行う体制づくりを目指す法医学研究教育センターである。旭川医大法医学 講座は日本で最北の法医学機関で規模は大きくはないが、専用CT 装置や最 新の薬物分析機器、DNA 解析装置を有し、法医学の3 本柱である解剖・中 毒・個人識別の各分野をバランスよく有する最先端の法医学機関である。千葉 大では執刀医が多いことから意思疎通が図られにくく、各執刀医の法医診断 の質を一定にするために解剖直後と鑑定書作成後の2 回全例で死因判断に関 するカンファレンスを行う。旭川医大では医師が介助も行うため、解剖を行 いながら死因診断について意見交換を行い漏れの無い検体採取や所見採取が 可能である。また、千葉大学では学外での死体検案は行わないが、旭川では 市内の死体検案を依頼されることがあり、外表から死因を判断することの困 難さを実感するとともに、ご遺族の自宅で死因について直接ご家族に説明す る機会を得た。
 このように地域により解剖事例や解剖体制が異なり、異なる地域に行けば 今まで遭遇したことの無い事例に出会い、教科書からではない新たな知識や 手技を習得することができ、さらには新たな研究に取り組むきっかけともな った。最も印象的であったのは、死後経過時間の推定で、死体現象は気温に 大きく影響を受けるため、平均気温がまったく異なる千葉と旭川では経験的 な判断基準が大きく異なったということである。
 
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