学生・研修医の皆さんへ

日赤長崎原爆病院
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日赤長崎原爆病院

【はじめに】
 日本赤十字社長崎原爆病院はJR浦上駅の裏手に隣接しており、長崎大学病院から歩いて20分程度の距離にある病床数360の総合病院です。組織として大き過ぎないため小回りが効き、各診療科間の垣根も低く、非常に仕事のしやすい環境です。その中で内科全体では約200床、消化器内科は常時40-50床を使用して診療しています。
 当科の特色は肝胆膵疾患、消化管疾患、癌化学療法と幅広く、かつバランス良く対応できることです。それぞれの分野に臨床経験豊富な医師がおり、診療に、指導に活躍しています。まずはこの先生方に専門分野について紹介していただきます。

【各分野の紹介】
 まずは肝胆膵疾患についての紹介を、外来・入院ともに非常に多くの仕事を丁寧にこなし、その責任を果たしている副部長の馬渡文弘先生にお願いします。
 馬渡「肝疾患領域は当科で最も患者数が多く年間約250名が入院します。C型慢性肝炎は積極的にインターフェロン導入を行っており、2009年度は25名を数えました。B型慢性肝炎、肝硬変の患者さんには2001年以来約80名に核酸アナログを使用し、発がん予防、肝予備能の改善に寄与しています。また原発性胆汁性肝硬変や自己免疫性肝炎などの診断に苦慮する症例の御紹介も多く、積極的に肝生検を行い診断、治療を行っています。昨年インターフェロン前検査も含め肝生検数は32例でした。次に肝細胞癌は、外来で早期に診断することを目標にしています。腹部造影CT、プリモビストMRI、腹部超音波を行い検出します。またソナゾイド超音波も外来で施行し治療法選択の手助けとしています。2009年度は、肝ラジオ波焼灼術14例, 経皮的エタノール注入術33例でした。また昨年より肝がん領域で使用可能となったソラフェニブに関しても積極的に使用し現在までに7例の使用経験を得ています。
 次に胆膵領域ですが、総胆管結石に対する内視鏡的乳頭括約筋切開術や、悪性胆道狭窄症などに対するドレナージ術、手術治療前の生検診断など内視鏡的胆道処置は昨年80例でした。とくに閉塞性胆管炎合併例においては緊急ドレナージ術を迅速に行い、重症化を防いでいます。」
 
 次に消化管疾患を紹介していただきます。当科ではここ数年間、肝疾患を専門とするスタッフに来ていただくことが殆どでしたので、消化管疾患の診断治療については一般的なところまでは可能でも、一歩踏み込んだ専門的なことができていないと感じておりました。長崎大学に消化器内科が誕生した時以来、中尾一彦教授に「消化管に強い人材を是非原爆病院にお願いします」と嘆願を続け、本年4月に来ていただいたのが町田治久先生です。着任以来レベルの高い内視鏡診断、治療をしていただき非常に助かっております。
 町田「消化管診療についてお話します。平成21年度当院における消化管内視鏡検査実績は、上部3259例(健診1572例含む)・下部784例です。平日午前は毎日上部の検査を行い、火・水・木曜日の午後に下部・ERCP・治療内視鏡を行っています。勿論緊急内視鏡検査については、随時行っています。他の関連施設に比較し内視鏡検査・治療件数が特に多いわけではありませんが、ここ1年ほどで原爆病院の内視鏡室には、上部・下部のハイビジョン拡大内視鏡、マルチベンディング、3D画像合成可能なラジアル型EUS専用器等、数多くの最新機種が導入されました。NBI拡大観察やEUS等を積極的に行い、より正確な診断を目指した診療を行っています。また当院はがん拠点病院に指定されていますが、治療内視鏡としてESD導入が遅れています。近々ESDにも力を入れ、内視鏡診断・治療をよりハイレベルなところへ持って行きたいと思います。
 炎症性腸疾患については、近年潰瘍性大腸炎にタクロリムス・Infliximabが保険適応となり、Crohn病についても、近々アダリムマブが保険適応となる予定であることから、Top down therapyを含め診療の幅が拡がります。症例数はまだ少ないですが、難治性炎症性腸疾患の緩解導入・維持に日々努力しています。」

 当院は地域がん診療連携拠点病院の指定を受けておりますので、化学療法は非常に重要な分野です。最近の消化器癌に対する化学療法は日進月歩で、知識すべてをキャッチアップしていくのは非常に困難です。また生命予後が改善されたため化学療法施行中の症例が加速度的に増え、主治医は多忙になる一方です。この大変な仕事を国立がんセンター(現在の国立がん研究センター)中央病院で専門的なトレーニングを積んできた竹下茂之先生に頑張っていただいております。
 竹下「原爆病院は長崎県のがん診療連携拠点病院の1つになっています。当然消化器がんの患者さんも多く、消化器がんに対する化学療法を積極的に行っています。2008年4月~2009年3月の1年間で化学療法関係(有害事象、緩和ケア目的の入院も含む)での延べ入院数は183人で、そのうちわけは食道癌41人、胃癌51人、大腸癌(結腸・直腸)49人、胆道癌16人、膵臓癌22人、原発不明癌4人でした。現在の消化器がん化学療法は外来治療が中心ですので当院でも患者さまが安全に安心して治療が受けられるよう外来化学療法室で治療を行っています。2009年度の当科における外来化学療法室での治療件数は455件でした。また、当院は肺癌や乳癌、造血器腫瘍の患者さんも大変多いので、将来腫瘍内科の専門医を目指す場合にも十分な症例を経験することが可能です。」

 また、当院は臨床研修病院・長崎大学医学部の臨床実習施設でもあります。研修医や学生の指導はもちろん全員で行いますが、今年4年目でジェネレーションギャップの少ない山道忍先生に特に頑張っていただいています。山道先生は一般の消化器内科医に必要とされる手技の殆どを、非常に短期間に、しかも高いレベルで習得していますので、初期研修医や学生にとっては非常に参考になる話を聞ける存在でもあります。
 山道「当院では現在1年目3名、2年目7名の先生方が研修されており、そのうち常時5-6名が内科研修をされています。当院での内科研修システムは消化器・呼吸器・血液・内分泌・膠原病・神経と各領域を受け持っており、そのなかで、当消化器では指導医とともに内視鏡や腹部エコーを用いたRFA・PEITなど各種手技を行ってもらっています。
 月曜日に消化器カンファ、水曜日には内視鏡カンファを行っています。消化器カンファでは各スタッフ・研修医の症例ごとに熱く討議を行い、病気の理解を深めてもらいます。内視鏡カンファでは前週に行った全ての上部内視鏡症例の画像を振り返りながら、内視鏡診断の基礎を養ってもらっています。また、当院では血液疾患が多いため、それに関連した悪性リンパ腫などの消化器病変を数多く見ることができます。
 大学病院から近いこともあり、5年生・6年生の学生実習も受け入れています。5年生はポリクリの一環として短期で、また6年生ではクリクラの一環として1クール内科実習もしくは消化器内科の一環として1週間実習を行っています。臨床実習に際しては、大学病院と同様に担当患者を割り当てるとともに、大学病院では見ることのできない一般の内視鏡検診などを見学してもらっています。
 当院は消化器内科や内科のみならず、病院全体で研修医・学生のお世話をしてくれるアットホームな病院と思っております。今後研修を考えておられる方々はぜひ一度見学に来てください。」

 各先生方ありがとうございました。現在消化器内科スタッフはこの4名に加え、まだまだ部長職が板につかない鶴田の5名ですが、過去の人員不足で困っていた時代から第一内科出身の森田茂樹先生に診療を手伝っていただいておりますので、5.5名とカウントすると理解しやすい体制です。森田先生の本業は内分泌内科医ですが、消化器病臨床にも非常に造詣が深く、当科の論文執筆、学会発表の最終チェックでは中心的役割を果たしていただいております。カンファレンス後の消化器内科抄読会も森田先生の発案で、この4月に始めたところです。
 
【おわりに】
 当科に貴重な症例を紹介してくださる先生方には、この文章を読んでいただいて当科医師の人物像の一端を知っていただくことができたかと思います。現在この体制で頑張っております。紹介日が不明、あるいは患者さんの受診可能な日と外来担当医の曜日が合わない等の問題がある時には鶴田宛にご紹介いただけましたら可能な限り善処いたしますので、今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。 
 また、読者の多くは原爆病院での勤務・研修に興味がある消化器内科医師、研修医、あるいは学生と思いますが、当科の概要、利点と問題点を読み取っていただけたと思います。簡単にまとめると、長崎原爆病院消化器内科はロケーションも良く、市中病院としては多岐にわたる症例を経験でき、学会発表・論文執筆・あるいは専門医資格の取得も可能で、雑務は少なく、同僚医師の人柄も申し分なく・・・・・とここまで書いて、改めて非常に働きやすい環境で仕事をさせていただいているということが実感されます。このような病院ですので、是非一緒に働いてみませんか。そして更に良い医療を提供できるように個人も組織も成長していくことができればと考えています。

(2010年9月1日・消化器内科部長:鶴田正太郎)



【 日本赤十字社長崎原爆病院の各種学会(教育研修)認定状況 】
  ・日本内科学会認定医制度教育病院
  ・日本肝臓学会認定施設
  ・日本消化器内視鏡学会認定専門医指導施設
  ・日本消化器病学会専門医認定施設
  ・日本がん治療認定医機構認定研修施設
  ・日本臨床腫瘍学会認定研修施設

  ・日本老年医学会認定施設
  ・内分泌代謝科認定教育施設
  ・日本甲状腺学会認定専門医施設
  ・日本糖尿病学会認定教育施設
  ・日本神経学会専門医教育関連施設
  ・日本リウマチ学会教育施設
  ・日本呼吸器学会認定施設(内科系)
  ・日本呼吸器内視鏡学会専門医認定施設
  ・日本感染症学会認定研修施設
  ・日本循環器学会認定循環器専門医研修施設
  ・日本血液学会認定血液研修施設

  ・日本外科学会外科専門医制度修練施設(JSS)
  ・日本消化器外科学会専門医修練施設
  ・日本大腸肛門病学会認定施設
  ・日本胸部外科学会認定医指定施設
  ・日本呼吸器外科専門医認定機構基幹施設
  ・日本呼吸器外科学会指導医制度認定施設
  ・日本乳癌学会関連施設
  ・日本整形外科学会専門医研修施設
  ・日本皮膚科学会認定専門医研修施設(JDA)
  ・腎臓移植推進協力病院
  ・泌尿器科専門医教育施設 基幹教育施設
  ・日本産科婦人科学会専門医制度卒後研修指導施設
  ・日本眼科学会専門医制度研修施設
  ・日本耳鼻咽喉科学会専門医研修施設
  ・麻酔科認定病院(研修施設)
  ・放射線科専門医修練機関
  ・日本IVR学会専門医修練施設
  ・マンモグラフィ検診精度管理中央委員会マンモグラフィ検診施設
  ・日本病理学会研修登録施設

  ・日本プライマリ・ケア学会認定医研修施設
  ・日本病態栄養学会認定栄養管理・NST実施施設
  ・日本栄養療法推進協議会認定NST稼動施設