学生・研修医の皆さんへ

長崎みなとメディカルセンター 市民病院
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崎みなとメディカルセンター 市民病院

  長崎市立市民病院は御存知の通り、市街地にある病床数約400の長崎市南部の医療を担う中核病院です。

  これまで消化器内科は第一内科と第二内科に別れて診療を行ってきました。それぞれに消化管疾患や肝疾患、胆膵疾患に対応してきましたが、消化器内科の誕生に伴い、がらりと様相が変わりました。現在は親密な協力態勢のもと、各分野に最新最良の医療を提供出来るように頑張っています。

  最初に現在頑張ってくれている消化器内科レジデントに診療の感想を聞いてみました。きっと、素晴らしい回答があるはずです。
それでは、いってみましょう。
その1:海に近い。眺めが良い憩いの広場がある。浜町に近い。花火を見る事が出来る・・・こらー、最初がこれですか。次!
その2:消化管、肝胆膵について多岐にわたる検査と治療が行われており、多彩な手技を学ぶ事が可能(消化器内科医として必要な検査や治療手技をほぼ全て経験出来る)・・・ふむふむ、スタッフが素晴らしいというわけですな。
その3:やさしく丁寧に指導していただける・・・もっと言ってください。
その4:CPCや術前術後カンファランスがあり、疾患検討も盛ん・・・これは大切ですね。
その5:総合医局があり、各科にコンサルトしやすい状況となっている・・・確かに。これは便利だ。
その6:輪番当直日は研修医が手伝ってくれて、眠れない夜も寂しくない・・・私は寂しくても眠れる夜が好きです。
その7:VIPの入院がある・・・VIPでない入院が圧倒的に多いのですが。
以上、参考になるようなならないような微妙な回答でした。

  さて、消化管疾患の花形はなんといっても内視鏡検査と治療です。月曜から金曜まで毎日検査が行われます。前半に上部消化管を中心に検査が行われ、並行して大腸がきれいになった順に下部消化管の検査が組み込まれていきます。   
  検査が落ち着くと、次は内視鏡治療、さらに胆膵系の検査と治療が続きます。若い先生達は朝から夕方までみっちりと経験を積む事が出来るというわけです。 
  平成20年度は上部2523件、下部1304件、胆膵系は超音波内視鏡や治療を併せ200件前後の症例を経験しました。

  当院での消化管検査目標は、患者さんへの負担が少なく、かつ詳細な検査であることです。この二つの両立は実は大変困難です。楽な検査を目標とすると短時間で終了しなくてはならない。ところが詳細な検査のためにはどうしても時間を要してしまう。この相反する二つを実現するために日々研鑽を重ねています。例えば、一般には下部消化管検査は患者さんへの負担が大きいと思われがちです。当院では「軸保持短縮法」による迅速かつ確実、さらに痛みの少ない深部挿入を心がけています。検査後に上部消化管検査よりも楽であったと話される患者さんも少なくありません。また長時間が予想される検査や治療においては、きっちりとセデーションを行います。そんなわけで当院で最もきつい消化管検査は、通常の上部内視鏡ということになるかもしれません。

  続いて病変の発見と治療について述べてみましょう。
  どんな疾患もより早い段階で発見される方が望ましいということに異論はないところと思います。癌やそれに準じる病変であれば尚更で、早期である程、そして微小である程、確実かつ低侵襲な治療が可能となります。
まずは発見について述べたいと思います。
  当院ではNBI(Narrow Band Imaging)システムや拡大観察を駆使して、生検を行わずに質的診断や治療の適応を決定することも少なくありません。もちろん道具があるだけで病気が見つかるわけではありません。オタク的ともいえる微小病変への情熱が伴ってこそ、はじめて病気は発見されます。お陰で食道の高度異型上皮や各種癌の発見はミリ単位となりました。今年は0-IIc型の早期大腸癌の極めて珍しい多発例や同じく0-IIc型の2mmの粘膜癌を見つけました(全て内視鏡切除で治癒)。
  次に発見した病変をどう治療するか。消化器内科なら当然内視鏡切除を選びたいところです。数ミリの食道異型上皮や癌ならキャップを用いた吸引法で十数分で終了します。大きめの病変なら当然ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を行います。今年度は最大13cmの早期胃癌を筆頭に上部から下部まで約70例の切除を行いました。
  さらに当院は炎症性腸疾患にも力を入れています。現在診療中の潰瘍性大腸炎やクローン病患者は100名にも登り、紹介患者もさらに増えてきています。レミケードや白血球除去療法などの治療も導入され、確実な効果を上げています。

  次に当科の肝疾患診療について御紹介します。特色はなんと言っても伝統的に肝細胞癌の症例が多いことで、診断面では放射線科医師の協力のもと、MDCT, EOB造影MRI, Sonazoid造影エコーなどの画像診断を駆使して早期発見と正確な質的診断を行い、診断困難例には積極的に細径針による狙撃生検を行い確定診断を目指しています。治療に冠しては多発、再発の多い肝細胞癌の特性と高齢化が相まって、侵襲の少ない経皮的ラジオ波凝固療法(RFA)と、血管造影によるTACEが治療の大半を占めています。
  『RFAをはじめとするエコーガイド下の経皮的穿刺手技の習得は消化器内科のレジデントにとって必須である』というコンセプトのもと、主治医となった研修医、レジデントと指導医がペアで実際の治療にあたり、その他のスタッフが周りでサポートするというシステムができあがっており、実際に病変の描出から穿刺経路の選択、麻酔、穿刺、焼灼までの一連の手技をマスターしてもらいます。もちろん、重篤な合併症も報告されているため、人工胸水、人工腹水法、ENBD,ENGBDを応用した胆道系の冷却下RFAなど種々の工夫を加え、安全に配慮した治療を心がけています。平成20年の経皮的ラジオ波凝固療法(RFA)の年間件数は127件で、県内でトップの症例数でした。

  と、長々と書いてきましたが、当院の売りを一言で表すなら「バランスの良さ」です。若い先生方が消化器の各分野で経験を積むにはもってこいの環境と思います。消化器に興味のある若い先生方は大歓迎でお待ちしております。