海外留学報告

海外留学報告:Mayo 2ヶ月の留学生活を終えて
赤澤 祐子

 今年9~10月にかけて、「海外派遣による自立した若手生命医療科学研究者育成支援プロジェクト」という企画でMayo Clinic のGastroenterology and Hepatology research 部門で基礎研究をしてきました。ここは2009年まで留学していたところでした。 行ってみると、2年前に去ったロチェスターは変わっておらず、友人や同僚たちも暖かく迎えてくれました。財布を忘れてスタバに行くと、ただでコーヒーをくれるようなおおらかな町です。(知らない人とすれ違っても微笑み合うくせがついてしまうので、日本に帰ると、変な人と思われます。)久しぶりにラボに行くと、2年前にドアのところに忘れていた自分のスカーフがそのままかけてあったのにはちょっと驚きでした。ボスのDr. Goregory Gores(写真左)は、消化器のDepartment Chairでもあり、AASLD(アメリカ肝臓病学会)のオーガナイザーを務めたこともある、名の知れたscientistでもあります。ラボの主なテーマは肝細胞癌/胆管細胞癌における分子標的役の作用機序や脂肪肝の基礎実験です。ボスはアメリカ出身ですが、イタリア、ドイツ、スイス、インド, 日本など各国からのフェローやスタッフがいて、ほとんどが私のようなmedical doctorです。ちなみにスイスでは、消化器内科医の数が厳密にコントロールされていて、誰でもなれるわけではないらしいです。私たちは希望すれば勝手になれるので幸せですね。
 研究分野では、2年の間に新しいコンセプトが沢山生まれていて、勉強になりました。今回の自分研究は、脂肪酸が肝細胞にアポトーシスを起こす機序について検討してきました。基本的には、培養肝細胞に脂肪酸をふりかけ、その死んでいく様を観察しつつ、その時にどのような蛋白に変化が起きるのかを見る一見地味な作業です。それが将来NASHの病態解明と治療に生かせることを夢見つつ・・・。ラッキーなことに必要な細胞株、薬品などがすべてそろっていたため、順調に実験が進み、最終日にボスに論文の原稿を渡すことができました。休みの日には昔の友人たちとも飲みにいったり、家によんでもらったり、ひっこしを手伝ったりと多忙ながら楽しい時間がすごせました。
 2ヶ月の留学でしたが、私にとって1年の価値がある経験だったと思います。学会前の人手が足りない時に長期の留守を許していただいた中尾教授をはじめ、医局の皆様に大変感謝申し上げます。

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